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第6章 怨恨渦巻く陰謀編
93 王女様を鑑定
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今日は空が厚い雲に覆われた曇天。早朝から王宮に向かうと、入り口には敬礼をした王宮警備隊の人が立っていた。
「ルシア様! レン様! 宰相様よりご案内するように申し使っております! こちらへお越しください」
キビキビとした警備隊の人に付いていくと、王宮の西側へと案内される。
「ルシア様、レン様をお連れしました!」
着いた部屋は宰相様の私室のようだ。中に通されると、女王様と王女様と宰相様の3人がソファーに座って待っていた。
「よくぞ来てくれたのじゃ。宰相から報告は聞いたのじゃが、妾も呪いについては詳しく知らぬ。ルシア様、王女を見てもらってもいいかえ?」
女王様は僕たちが部屋に入った途端、ソファーから立ち上がると、ルシアに頭を下げてお願いしている。
『もちろんだ。王女よ。今から調べてみるが、知りたくないことまで分かってしまうかもしれん。その覚悟はあるか?』
「はい。私は眠っているときのことは覚えていません。ですが魔力の流れに少しの違和感があるのです。その原因が分かるのであれば何を調べてもらっても大丈夫です。ルシア様、よろしくお願いします」
『ふむ。分かった。それでは調べてみよう。その前に、レンよ。お主にはどのように見えておる?』
僕は部屋に入ったときから、王女様の魔力の流れをずっと見ていた。
「ルシアが言ってる魔力の滞留というのは分かったよ。僅かだけど澱のようなものが溜まってみえる。それと昨日会ったときより魔力の流れがほんの少し遅くなってる感じがするね」
『うむ。その通りだ。おそらくは昨晩も呪いをかけられたのだろう。精神や体力の衰弱を狙ったものではない。継続的に呪いをかけて、魔力の流れを阻害する、つまり魔力を使えないようにさせることが狙いであろう』
「魔力を使えないようにする? そんなことができるの?」
『簡単にできることではない。しかも耐性が強い人魚相手なら尚更だ。だからこそ時間をかけて継続的にやっておるのだろう。王女がうなされ、眠っているのに起きて歩き出すのは、王女が無意識で出している拒否反応だろうな。心と身体が異常を訴えているのだ』
呪いってすごいんだな。しかし、王女を狙ってそんな呪術を使うやつって何者なんだ? 王宮でそれだけのことをやるなんてリスクも大きいはずだ。強い恨みでもあるのか?
「ルシア様、お願いなのじゃ。クリスタを見てやって欲しいのじゃ」
僕とルシアのやりとりを聞いてた女王様が悲痛な表情で訴えてくる。となりの王女様も宰相様も辛そうだ。
『それでは王女を調べてみよう』
ルシアはそう言うと、王女の方を向いて粒子のような魔力を放出する。ルシアの魔力が王女を包み込む。それからしばらくすると、王女を包んでいたルシアの魔力はルシアの中に戻っていった。
『ふむ。分かったぞ。王女の異変はやはり呪いが原因だ。呪いにより少しずつだが、魔力の流れが阻害されておる』
「ルシア様、魔力の流れを元に戻すことは、呪いを外すことは可能なのでしょうか?」
クリスタ王女が辛そうな表情でルシアに尋ねる。
『結論から言えば可能だ。解呪という魔法で呪いを外すことができる。しかし、解呪の魔法には膨大な魔力が必要だ。解呪を使えるものが複数集まって、ようやく呪いを外すことができるのだ』
「ルシア様。解呪の魔法を使える者に心当たりはありますかな?」
宰相様がお尋ねになる。
『解呪の魔法を使えるのは呪術師どもだ。呪いをかける魔法を受け継ぐと同時に、呪いを解く魔法も受け継ぐ。しかし呪術師どもを複数集めるのは現実的ではないな。相手がそういう交渉を持ちかけてきているという状況なら別だが、現状は王女に呪いをかけることだけが目的に見える』
「では……王女様の呪いを外すのは難しいということですか……」
『早合点するな、ベルスよ。我も解呪の魔法は使えるぞ。好んで使いたい魔法ではないがな』
「それでは、王女様を救っていただけるのでしょうか!」
『お主に約束しただろう? 王女を救ってやると。しかし、王女の解呪の話はいったん置いておく。まずは呪術師の話だ。我に分かったことは王女が呪いを受けている状態であるということだ。
しかし、王女を鑑定しただけでは呪術師を特定することはできん。呪術師本人を見ればそいつが呪術師かどうかは見破れるがな。ただし分かったことはあるぞ。呪いに込められた魔力の質だ』
魔力の質? 魔力の流れは見えるけど、魔力の質が見えることはないな。鑑定の魔法だとそこまで分かるんだな。
『魔力の質が王女本人と共通している部分がある。これが何を示しているかと言うと、呪術師は王女の血縁関係にあるものということだ。先に言っておくが女王ではないぞ。女王の魔力の質は把握しておる。この王宮に王女と血縁関係がある者はおるか?』
女王様、王女様、宰相様が顔を見合わせて、驚きの表情を浮かべている。そりゃそうだよな。犯人は血縁関係のある者だなんて、想像したくもないだろう。
「妾がお答えしよう。妾以外の王女の血縁関係者で王宮におるものは、クリスタの父親である公爵のシメオン、妹である次女のソフィア、従姉であるアマンダの3人じゃ。ソフィアはまだ成人してないゆえほとんどはローネ湖におるのじゃが、たまには王宮にも来る」
ということは、容疑者は3人ってことか? 女王様の説明からするとソフィア王女の可能性は低いように思うけど。
『それでは、その3人と会わせてもらおう。その中の誰かが呪術師だ』
「ルシア様! レン様! 宰相様よりご案内するように申し使っております! こちらへお越しください」
キビキビとした警備隊の人に付いていくと、王宮の西側へと案内される。
「ルシア様、レン様をお連れしました!」
着いた部屋は宰相様の私室のようだ。中に通されると、女王様と王女様と宰相様の3人がソファーに座って待っていた。
「よくぞ来てくれたのじゃ。宰相から報告は聞いたのじゃが、妾も呪いについては詳しく知らぬ。ルシア様、王女を見てもらってもいいかえ?」
女王様は僕たちが部屋に入った途端、ソファーから立ち上がると、ルシアに頭を下げてお願いしている。
『もちろんだ。王女よ。今から調べてみるが、知りたくないことまで分かってしまうかもしれん。その覚悟はあるか?』
「はい。私は眠っているときのことは覚えていません。ですが魔力の流れに少しの違和感があるのです。その原因が分かるのであれば何を調べてもらっても大丈夫です。ルシア様、よろしくお願いします」
『ふむ。分かった。それでは調べてみよう。その前に、レンよ。お主にはどのように見えておる?』
僕は部屋に入ったときから、王女様の魔力の流れをずっと見ていた。
「ルシアが言ってる魔力の滞留というのは分かったよ。僅かだけど澱のようなものが溜まってみえる。それと昨日会ったときより魔力の流れがほんの少し遅くなってる感じがするね」
『うむ。その通りだ。おそらくは昨晩も呪いをかけられたのだろう。精神や体力の衰弱を狙ったものではない。継続的に呪いをかけて、魔力の流れを阻害する、つまり魔力を使えないようにさせることが狙いであろう』
「魔力を使えないようにする? そんなことができるの?」
『簡単にできることではない。しかも耐性が強い人魚相手なら尚更だ。だからこそ時間をかけて継続的にやっておるのだろう。王女がうなされ、眠っているのに起きて歩き出すのは、王女が無意識で出している拒否反応だろうな。心と身体が異常を訴えているのだ』
呪いってすごいんだな。しかし、王女を狙ってそんな呪術を使うやつって何者なんだ? 王宮でそれだけのことをやるなんてリスクも大きいはずだ。強い恨みでもあるのか?
「ルシア様、お願いなのじゃ。クリスタを見てやって欲しいのじゃ」
僕とルシアのやりとりを聞いてた女王様が悲痛な表情で訴えてくる。となりの王女様も宰相様も辛そうだ。
『それでは王女を調べてみよう』
ルシアはそう言うと、王女の方を向いて粒子のような魔力を放出する。ルシアの魔力が王女を包み込む。それからしばらくすると、王女を包んでいたルシアの魔力はルシアの中に戻っていった。
『ふむ。分かったぞ。王女の異変はやはり呪いが原因だ。呪いにより少しずつだが、魔力の流れが阻害されておる』
「ルシア様、魔力の流れを元に戻すことは、呪いを外すことは可能なのでしょうか?」
クリスタ王女が辛そうな表情でルシアに尋ねる。
『結論から言えば可能だ。解呪という魔法で呪いを外すことができる。しかし、解呪の魔法には膨大な魔力が必要だ。解呪を使えるものが複数集まって、ようやく呪いを外すことができるのだ』
「ルシア様。解呪の魔法を使える者に心当たりはありますかな?」
宰相様がお尋ねになる。
『解呪の魔法を使えるのは呪術師どもだ。呪いをかける魔法を受け継ぐと同時に、呪いを解く魔法も受け継ぐ。しかし呪術師どもを複数集めるのは現実的ではないな。相手がそういう交渉を持ちかけてきているという状況なら別だが、現状は王女に呪いをかけることだけが目的に見える』
「では……王女様の呪いを外すのは難しいということですか……」
『早合点するな、ベルスよ。我も解呪の魔法は使えるぞ。好んで使いたい魔法ではないがな』
「それでは、王女様を救っていただけるのでしょうか!」
『お主に約束しただろう? 王女を救ってやると。しかし、王女の解呪の話はいったん置いておく。まずは呪術師の話だ。我に分かったことは王女が呪いを受けている状態であるということだ。
しかし、王女を鑑定しただけでは呪術師を特定することはできん。呪術師本人を見ればそいつが呪術師かどうかは見破れるがな。ただし分かったことはあるぞ。呪いに込められた魔力の質だ』
魔力の質? 魔力の流れは見えるけど、魔力の質が見えることはないな。鑑定の魔法だとそこまで分かるんだな。
『魔力の質が王女本人と共通している部分がある。これが何を示しているかと言うと、呪術師は王女の血縁関係にあるものということだ。先に言っておくが女王ではないぞ。女王の魔力の質は把握しておる。この王宮に王女と血縁関係がある者はおるか?』
女王様、王女様、宰相様が顔を見合わせて、驚きの表情を浮かべている。そりゃそうだよな。犯人は血縁関係のある者だなんて、想像したくもないだろう。
「妾がお答えしよう。妾以外の王女の血縁関係者で王宮におるものは、クリスタの父親である公爵のシメオン、妹である次女のソフィア、従姉であるアマンダの3人じゃ。ソフィアはまだ成人してないゆえほとんどはローネ湖におるのじゃが、たまには王宮にも来る」
ということは、容疑者は3人ってことか? 女王様の説明からするとソフィア王女の可能性は低いように思うけど。
『それでは、その3人と会わせてもらおう。その中の誰かが呪術師だ』
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