教え上手な龍のおかげでとんでもないことになりました

明日真 亮

文字の大きさ
上 下
95 / 131
第6章 怨恨渦巻く陰謀編

93 王女様を鑑定

しおりを挟む
 今日は空が厚い雲に覆われた曇天。早朝から王宮に向かうと、入り口には敬礼をした王宮警備隊の人が立っていた。

「ルシア様! レン様! 宰相様よりご案内するように申し使っております! こちらへお越しください」

 キビキビとした警備隊の人に付いていくと、王宮の西側へと案内される。

「ルシア様、レン様をお連れしました!」

 着いた部屋は宰相様の私室のようだ。中に通されると、女王様と王女様と宰相様の3人がソファーに座って待っていた。

「よくぞ来てくれたのじゃ。宰相から報告は聞いたのじゃが、妾も呪いについては詳しく知らぬ。ルシア様、王女を見てもらってもいいかえ?」

 女王様は僕たちが部屋に入った途端、ソファーから立ち上がると、ルシアに頭を下げてお願いしている。

『もちろんだ。王女よ。今から調べてみるが、知りたくないことまで分かってしまうかもしれん。その覚悟はあるか?』
「はい。私は眠っているときのことは覚えていません。ですが魔力の流れに少しの違和感があるのです。その原因が分かるのであれば何を調べてもらっても大丈夫です。ルシア様、よろしくお願いします」
『ふむ。分かった。それでは調べてみよう。その前に、レンよ。お主にはどのように見えておる?』

 僕は部屋に入ったときから、王女様の魔力の流れをずっと見ていた。

「ルシアが言ってる魔力の滞留というのは分かったよ。僅かだけど澱のようなものが溜まってみえる。それと昨日会ったときより魔力の流れがほんの少し遅くなってる感じがするね」
『うむ。その通りだ。おそらくは昨晩も呪いをかけられたのだろう。精神や体力の衰弱を狙ったものではない。継続的に呪いをかけて、魔力の流れを阻害する、つまり魔力を使えないようにさせることが狙いであろう』
「魔力を使えないようにする? そんなことができるの?」
『簡単にできることではない。しかも耐性が強い人魚相手なら尚更だ。だからこそ時間をかけて継続的にやっておるのだろう。王女がうなされ、眠っているのに起きて歩き出すのは、王女が無意識で出している拒否反応だろうな。心と身体が異常を訴えているのだ』

 呪いってすごいんだな。しかし、王女を狙ってそんな呪術を使うやつって何者なんだ? 王宮でそれだけのことをやるなんてリスクも大きいはずだ。強い恨みでもあるのか?

「ルシア様、お願いなのじゃ。クリスタを見てやって欲しいのじゃ」

 僕とルシアのやりとりを聞いてた女王様が悲痛な表情で訴えてくる。となりの王女様も宰相様も辛そうだ。

『それでは王女を調べてみよう』

 ルシアはそう言うと、王女の方を向いて粒子のような魔力を放出する。ルシアの魔力が王女を包み込む。それからしばらくすると、王女を包んでいたルシアの魔力はルシアの中に戻っていった。

『ふむ。分かったぞ。王女の異変はやはり呪いが原因だ。呪いにより少しずつだが、魔力の流れが阻害されておる』
「ルシア様、魔力の流れを元に戻すことは、呪いを外すことは可能なのでしょうか?」

 クリスタ王女が辛そうな表情でルシアに尋ねる。

『結論から言えば可能だ。解呪という魔法で呪いを外すことができる。しかし、解呪の魔法には膨大な魔力が必要だ。解呪を使えるものが複数集まって、ようやく呪いを外すことができるのだ』
「ルシア様。解呪の魔法を使える者に心当たりはありますかな?」

 宰相様がお尋ねになる。

『解呪の魔法を使えるのは呪術師どもだ。呪いをかける魔法を受け継ぐと同時に、呪いを解く魔法も受け継ぐ。しかし呪術師どもを複数集めるのは現実的ではないな。相手がそういう交渉を持ちかけてきているという状況なら別だが、現状は王女に呪いをかけることだけが目的に見える』
「では……王女様の呪いを外すのは難しいということですか……」
『早合点するな、ベルスよ。我も解呪の魔法は使えるぞ。好んで使いたい魔法ではないがな』
「それでは、王女様を救っていただけるのでしょうか!」
『お主に約束しただろう? 王女を救ってやると。しかし、王女の解呪の話はいったん置いておく。まずは呪術師の話だ。我に分かったことは王女が呪いを受けている状態であるということだ。
 しかし、王女を鑑定しただけでは呪術師を特定することはできん。呪術師本人を見ればそいつが呪術師かどうかは見破れるがな。ただし分かったことはあるぞ。呪いに込められた魔力の質だ』

 魔力の質? 魔力の流れは見えるけど、魔力の質が見えることはないな。鑑定の魔法だとそこまで分かるんだな。

『魔力の質が王女本人と共通している部分がある。これが何を示しているかと言うと、呪術師は王女の血縁関係にあるものということだ。先に言っておくが女王ではないぞ。女王の魔力の質は把握しておる。この王宮に王女と血縁関係がある者はおるか?』

 女王様、王女様、宰相様が顔を見合わせて、驚きの表情を浮かべている。そりゃそうだよな。犯人は血縁関係のある者だなんて、想像したくもないだろう。

「妾がお答えしよう。妾以外の王女の血縁関係者で王宮におるものは、クリスタの父親である公爵のシメオン、妹である次女のソフィア、従姉であるアマンダの3人じゃ。ソフィアはまだ成人してないゆえほとんどはローネ湖におるのじゃが、たまには王宮にも来る」

 ということは、容疑者は3人ってことか? 女王様の説明からするとソフィア王女の可能性は低いように思うけど。

『それでは、その3人と会わせてもらおう。その中の誰かが呪術師だ』
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

終了し強制力の無くなった乙女ゲームの世界の悪役令嬢のその後…

クロノス
恋愛
私はよくある異世界に転生した元日本人で社会人だった。仕事の帰り道によくあるトラック事故にて呆気なく死んでしまった/(-_-)\ まさかの転生先が前世で何度もプレーする程大好きだった乙女ゲームの中の悪役令嬢になっていた。 私の前世の推しである悪役令嬢になるなんて~ 攻略対象者?ヒロイン?知りません! って思ってたらヒロインめちゃくちゃウザイし攻略対象者もめちゃくちゃウザイ… 強制力やっぱりあるし( ・᷄ὢ・᷅ ) 強制力あっても何とか逞しく乗り切ろうとする悪役令嬢に転生した私の物語 女神の愛し子の私に冤罪って… って何故かどんどん話のスケールがでかくなってませんか!? ゆるふわ設定です! 頭をラフにしてお読み下さい(*^^*)

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

食うために軍人になりました。

KBT
ファンタジー
 ヴァランタイン帝国の片田舎ダウスター領に最下階位の平民の次男として生まれたリクト。  しかし、両親は悩んだ。次男であるリクトには成人しても継ぐ土地がない。  このままではこの子の未来は暗いものになってしまうだろう。  そう思った両親は幼少の頃よりリクトにを鍛え上げる事にした。  父は家の蔵にあったボロボロの指南書を元に剣術を、母は露店に売っていた怪しげな魔導書を元に魔法を教えた。    それから10年の時が経ち、リクトは成人となる15歳を迎えた。  両親の危惧した通り、継ぐ土地のないリクトは食い扶持を稼ぐために、地元の領軍に入隊試験を受けると、両親譲りの剣術と魔法のおかげで最下階級の二等兵として無事に入隊する事ができた。  軍と言っても、のどかな田舎の軍。  リクトは退役するまで地元でのんびり過ごそうと考えていたが、入隊2日目の朝に隣領との戦争が勃発してしまう。  おまけに上官から剣の腕を妬まれて、単独任務を任されてしまった。  その任務の最中、リクトは平民に対する貴族の専横を目の当たりにする。  生まれながらの体制に甘える貴族社会に嫌気が差したリクトは軍人として出世して貴族の専横に対抗する力を得ようと立身出世の道を歩むのだった。    剣と魔法のファンタジー世界で軍人という異色作品をお楽しみください。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

処理中です...