教え上手な龍のおかげでとんでもないことになりました

明日真 亮

文字の大きさ
上 下
85 / 131
第5章 ネイスエル女王国編

83 アクア様たちが乱入

しおりを挟む
「ルシア様! どの料理も最高に美味しいです。それにこちらのお酒も芳醇な香りと味わいが素晴らしいです。最高に幸せな気分です!」

 アクア様がうっとりとした表情でルシアと話している。それにしてもお酒を飲むペースが速いよね。アクア様もお酒が好きなのかな? ヴァン様にフライヤは大のお酒好き。ルシアもお酒が嫌いじゃなさそうだし、龍族ってお酒が好きな人が多いのかもね。

「ねえねえ、レン様! ルフトリーフ様と戦ったときの話をもう一度お聞かせください!」

 それで僕はというと、アクア様の眷属であるウェンディさんをはじめとした4人の女子たちに次々と質問攻めにあい、今はヴァン様のところで起こった出来事を話しているところだ。

 食事中にルシアが話した内容で分かったんだけど、大龍穴にいる五大属性龍の中でアクア様が一番若いそうだ。火龍様をフレア姉、ヴァン様をヴァン兄と呼んでるのは親しみを込めてそう呼んでるだけで本当の兄妹では無いらしい。
 そしてアクア様の眷属であるウェンディさんたちは眷属の中で一番若いそうだ。それでも100歳は超えてるらしいけど……。

 そして僕のことをレン様と呼ぶからなぜなのか聞いたんだけど、「空の紋章をお持ちなのですから当然です」ということらしい。そして僕には普通に話して欲しいと言われたから、今の状況になってるんだけど、こういうやりとりって大龍穴で必ず発生している気がするよ。

『レンよ。ウェンディたちに気に入られたようだな。こう見えてもアクアの眷属だけあって、水魔法の達人揃いだ。明日の大龍穴の確認は我とアクアだけで事足りるから、練習試合をしてみるとよい。治癒魔法に特化したシンシアでも強敵だぞ。練習試合で転移は使ってよいが、次元断は禁止にしておこう』
「分かった。僕も楽しみだよ」
「レン様、転移も使えるのですか? すご~い!!」
「いや、転移と言っても練習中のやつで……」

 ウェンディさんたちからの熱量がとんでもない。時空間魔法が使えるのってそんなにすごいことなんだよな。

 一方、アクア様はというとたまにチラッとこっちを見られるけど、すぐに目をそらされる。親しくなるのは難しそうだな……。でもウェンディさんたちが僕と話すのを止めさせたりはしない。そこはOKみたいだ。



 僕たちは美味しい食事とともにたくさんの話をして夜は更けていく。神殿には客室があるそうで、僕たちにそれぞれ一部屋ずつ用意してくれた。

 それと驚くべき施設があって、海底の神殿の奥にはなぜか大浴場が。しかも天然温泉。自由に使っていいそうなので、ルシアと2人でゆったりと入っていたら、アクア様たちが「お背中をお流しいたします!」と5人で乱入してきた!

「ウソでしょ! 僕は大丈夫です。ルシアをお願いします」

 そう告げると、僕はそのまま浴槽に潜って奥の方へと逃げるように泳いでいく。おそらく5人でルシアの背中を流しに来たんだろう。アクア様が僕の背中を流すはずがないし。そんなことを考えながら浴槽の一番端まで泳いでお湯から顔を出すと、

「旅の疲れを癒やしてくださいませ!」

 ……ウェンディさんが、待ち構えてました。



 ルシアの方を見るとアクア様を含めた3人でルシアの背中を流してる。はぁ~、人族と龍族では感覚が違うのかな。僕はこんなに女性に囲まれて裸を見られるのは恥ずかしいんですけど。せめてもの救いは5人とも作業着みたいなものを着てるから目のやり場には困らないことかな。

「さあ、レン様もこちらにお座りください。旅の疲れを落として差し上げますよ!」

 もう覚悟を決めよう。恥ずかしがってることが恥ずかしくなってきた。
 浴槽から出て浴室の椅子に座ると、「いきますよ~!」と掛け声をかけられて、ウェンディさんとシンシアさんに頭に背中、腕を洗われる。絶妙な力加減でとても気持ちがいい。「あとはご自由になさってください~」と洗う道具を置いて退散していく5人。

 ふぅ~。何かどっと疲れた……。とりあえず置いていったタオルで全身を洗って、もう一度浴槽に入る。

「ねえ、ルシア」
『なんだ?』
「龍族って、龍形態の時は裸のようなものだよね。もしかして人形態でも裸が恥ずかしくないとか?」
『あほう! 恥ずかしいに決まっておろうが! しかし……確かに龍形態のときは気にならん。人形態のときも人族のようには気にならんのかも知れんな。服を着ずに外を歩くのは嫌だが、風呂場では誰に見られても平気だぞ』
「さっきみたいにアクア様たちが入ってきても恥ずかしくないの?」
『何が恥ずかしいのだ? 風呂場だから裸に決まっておろう。不思議なことをいう奴だ』

 なるほどね。やっぱり人族と龍族では違うんだ~。

 そのあともルシアと話したけど、風呂場で裸が当たり前なのは、男女問わず当たり前という感覚らしい。
 つまりさっきアクア様たちは作業着のようなものを着てたけど、裸で入ってきたとしても何も思わないんだって。
 そして『アクアたちも裸を見られたなどと思うわけがなかろう、風呂場なのだから』と言ってた。

 その感覚、人族が理解するのは難しいです。

 ……というか忘れてたけど、ルシアの服って魔法なんだよね! 幻術魔法なのか、変身の魔法なのか分かんないけど、とにかく僕のように服を着ているわけじゃない。
 そりゃ~、人族と龍族の感覚が違うはずだよ。アクア様たちの作業着も魔法だったということだよね。
 はぁ~、よかった。魔法を使ってくれて。

 僕は湯船に浸かりながら、人族と龍族の認識の違いをあれこれと考えていた。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

お爺様の贈り物

豆狸
ファンタジー
お爺様、素晴らしい贈り物を本当にありがとうございました。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

終了し強制力の無くなった乙女ゲームの世界の悪役令嬢のその後…

クロノス
恋愛
私はよくある異世界に転生した元日本人で社会人だった。仕事の帰り道によくあるトラック事故にて呆気なく死んでしまった/(-_-)\ まさかの転生先が前世で何度もプレーする程大好きだった乙女ゲームの中の悪役令嬢になっていた。 私の前世の推しである悪役令嬢になるなんて~ 攻略対象者?ヒロイン?知りません! って思ってたらヒロインめちゃくちゃウザイし攻略対象者もめちゃくちゃウザイ… 強制力やっぱりあるし( ・᷄ὢ・᷅ ) 強制力あっても何とか逞しく乗り切ろうとする悪役令嬢に転生した私の物語 女神の愛し子の私に冤罪って… って何故かどんどん話のスケールがでかくなってませんか!? ゆるふわ設定です! 頭をラフにしてお読み下さい(*^^*)

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

食うために軍人になりました。

KBT
ファンタジー
 ヴァランタイン帝国の片田舎ダウスター領に最下階位の平民の次男として生まれたリクト。  しかし、両親は悩んだ。次男であるリクトには成人しても継ぐ土地がない。  このままではこの子の未来は暗いものになってしまうだろう。  そう思った両親は幼少の頃よりリクトにを鍛え上げる事にした。  父は家の蔵にあったボロボロの指南書を元に剣術を、母は露店に売っていた怪しげな魔導書を元に魔法を教えた。    それから10年の時が経ち、リクトは成人となる15歳を迎えた。  両親の危惧した通り、継ぐ土地のないリクトは食い扶持を稼ぐために、地元の領軍に入隊試験を受けると、両親譲りの剣術と魔法のおかげで最下階級の二等兵として無事に入隊する事ができた。  軍と言っても、のどかな田舎の軍。  リクトは退役するまで地元でのんびり過ごそうと考えていたが、入隊2日目の朝に隣領との戦争が勃発してしまう。  おまけに上官から剣の腕を妬まれて、単独任務を任されてしまった。  その任務の最中、リクトは平民に対する貴族の専横を目の当たりにする。  生まれながらの体制に甘える貴族社会に嫌気が差したリクトは軍人として出世して貴族の専横に対抗する力を得ようと立身出世の道を歩むのだった。    剣と魔法のファンタジー世界で軍人という異色作品をお楽しみください。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

処理中です...