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第5章 ネイスエル女王国編
79 ネイスエルの女王様
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今、僕たちの目の前にはネイスエル女王国の女王様であるエレノア女王が微笑を浮かべながら立っている。
その女王様から味わったことのないような不思議な感覚が漂ってきて、僕とルシアを包んでいるようだ。
「ルシア、これって何なの?」
「ほう。妾のすぐ側にいるのに、まだ話ができるとは大した子どもじゃ。流石はアリウス家の子息というところかえ」
『これは魅了という魔法だ。簡単に言えば心を操る魔法だな。人魚は歌声や匂いなどに乗せて使う特有の能力を持っているため、通常よりも効果が高い。今回は匂いに乗せて使っているタイプだ』
なるほど。魅了の魔法か。心を操るって……今、僕たちの心が操られてるの? そんな感じはしないけど、それすらも分からないほどの効果なのかも。
『安心しろ。お主は障壁魔法があるからすぐに魅了にかかったりはしない。このまま続けられれば危ないがな。当然だが、我には微塵も効かん』
ルシアに効かないのは当然なんだ。確かに障壁魔法も僕とは段違いだけど、そもそも龍族には効かないのかもな。
「2人ともにすぐには効かぬか。大したものじゃ。まあよい。ゆっくりと魅了して、本当のことを話してもらうのじゃ」
女王様は僕たちのことを疑ってるんだな。水龍様と知り合いというのがすぐに信じられないのは分かるけど、本当にルシアは知り合いなんだけどな。
『……気に入らんな』
うん? ルシアからひんやりとした空気が漂って来たぞ……。
『我とレンに魅了の魔法を使ってきたということは攻撃を加えたということなのだぞ? 理解しておるのか女王よ』
「そなたたちから真実を聞くためには仕方ないのじゃ。何も危害を加えるつもりはないのじゃ」
『理解しておらんな。魅了の魔法自体が危害を加える魔法だと言っておるのだ。そちらがそのつもりなら、我もそのつもりでいくぞ』
ルシアから大量の魔力が発せられる。ものすごい魔力量だ。これ、どんな魔法を使うつもりか知らないけど、王宮ぐらい軽く吹っ飛ぶと思う。ルシアの口調は冷静だけど、怒りが伝わってくるな。ルシアが怒りを表すなんて始めてのことだ。この空気を浴びせられてる女王様は大丈夫なのか? いや、大丈夫そうじゃないな。
「ひっ! 何たる魔力……どうなっておるのじゃ……いや……その目、その目はもしかして龍族……」
あっ、本当だ。ルシアの目が金色に輝いて見える。多分、怒りで龍族の瞳に戻ってるね。これ、怒りをぶつけられていない僕が見てても怖いんですけど……。
『アクアボロスの知人と分かる程度の魔法を使ってやろう。安心しろ。殺しはしない。とりあえず、こんな無駄に豪華な建物はいらんだろう?』
ルシアが魔力を集中するととてつもない密度で集約されていく。……これはやばい。数秒後の光景がリアルに目に浮かぶ。女王様だけじゃなく、警護の4人もガレオス伯爵も震えて動くことすらできていない。
『これで信じてもらえねば、さらなる魔法を見せてやる』
ルシアが魔法を発動する。その瞬間……
「お待ちくだされ!! 分かりました! その瞳、その魔力、龍族の方に間違いありませんのじゃ! 妾がアクア様のところまでご案内しますゆえ、何卒ご容赦くださいませ~!」
女王様がルシアに土下座してる……。それを見た警護の4人とガレオス伯爵も慌てて土下座している。
『ふむ。たまにはこれぐらいの魔法を使ってみたかったのだが、まあ仕方あるまい』
そう言うと、ルシアの周りに集約されていた魔力が霧散していく。それを見た女王様たちが安堵の表情に変わる。
「まさか龍族の方がアクア様を訪ねて来られるとは思いもしませんので失礼しましたのじゃ……。妾が責任をもってアクア様のところにお連れするのじゃ。それで、いつご出発なさるおつもりかえ?」
『それならば今から頼む』
「今から……いえいえ、承知しましたのじゃ。それでは出発しますのじゃ」
女王様の態度が180℃変わりましたね。あんな魔力を見せられたら人外の者としか思えないもんね。
そもそもウェスタール王国から来た僕もいて、本当の不審人物とは思ってないから会ったんだろうし。
「女王様……我々はどのようにすれば……」
空気のような存在になってた警護の4人と伯爵が女王様に恐る恐ると話しかける。
「そなたたちはここで待っておれ! 宰相や姫にも事情を伝えておくのじゃぞ! こんな失礼なことが無いようにくれぐれもしっかりと伝えるのじゃ!」
「「「はい!!」」」
おお~。みなさんの反応も全然変わったよ。
「それでは妾についてくるのじゃ。この部屋の奥に神殿に行くための入口が作られているのじゃ。ところでレン殿も行くのかえ? 人族のそなたでは神殿まで行くのは難しいと思うのじゃが」
「お気遣いありがとうございます。しかし特別な魔道具を着けておりますので大丈夫です。よろしくお願いします」
「妾の魅了を防ぐほどの障壁魔法といい、そなたも只者ではないのう。分かったのじゃ。途中で何かあったら言うのじゃぞ」
「ありがとうございます」
奥の方に歩いて行くと、厳かな雰囲気の部屋があり、そこには湖へと潜る穴が床に設けられていた。
「それではご案内しますのでついてくるのじゃ」
女王様がそのまま水の中に飛び込んだ。そのあとに続いてルシアも飛び込む。僕も置いて行かれないように、魔道具に魔力を流して水の中へと飛び込んだ。
その女王様から味わったことのないような不思議な感覚が漂ってきて、僕とルシアを包んでいるようだ。
「ルシア、これって何なの?」
「ほう。妾のすぐ側にいるのに、まだ話ができるとは大した子どもじゃ。流石はアリウス家の子息というところかえ」
『これは魅了という魔法だ。簡単に言えば心を操る魔法だな。人魚は歌声や匂いなどに乗せて使う特有の能力を持っているため、通常よりも効果が高い。今回は匂いに乗せて使っているタイプだ』
なるほど。魅了の魔法か。心を操るって……今、僕たちの心が操られてるの? そんな感じはしないけど、それすらも分からないほどの効果なのかも。
『安心しろ。お主は障壁魔法があるからすぐに魅了にかかったりはしない。このまま続けられれば危ないがな。当然だが、我には微塵も効かん』
ルシアに効かないのは当然なんだ。確かに障壁魔法も僕とは段違いだけど、そもそも龍族には効かないのかもな。
「2人ともにすぐには効かぬか。大したものじゃ。まあよい。ゆっくりと魅了して、本当のことを話してもらうのじゃ」
女王様は僕たちのことを疑ってるんだな。水龍様と知り合いというのがすぐに信じられないのは分かるけど、本当にルシアは知り合いなんだけどな。
『……気に入らんな』
うん? ルシアからひんやりとした空気が漂って来たぞ……。
『我とレンに魅了の魔法を使ってきたということは攻撃を加えたということなのだぞ? 理解しておるのか女王よ』
「そなたたちから真実を聞くためには仕方ないのじゃ。何も危害を加えるつもりはないのじゃ」
『理解しておらんな。魅了の魔法自体が危害を加える魔法だと言っておるのだ。そちらがそのつもりなら、我もそのつもりでいくぞ』
ルシアから大量の魔力が発せられる。ものすごい魔力量だ。これ、どんな魔法を使うつもりか知らないけど、王宮ぐらい軽く吹っ飛ぶと思う。ルシアの口調は冷静だけど、怒りが伝わってくるな。ルシアが怒りを表すなんて始めてのことだ。この空気を浴びせられてる女王様は大丈夫なのか? いや、大丈夫そうじゃないな。
「ひっ! 何たる魔力……どうなっておるのじゃ……いや……その目、その目はもしかして龍族……」
あっ、本当だ。ルシアの目が金色に輝いて見える。多分、怒りで龍族の瞳に戻ってるね。これ、怒りをぶつけられていない僕が見てても怖いんですけど……。
『アクアボロスの知人と分かる程度の魔法を使ってやろう。安心しろ。殺しはしない。とりあえず、こんな無駄に豪華な建物はいらんだろう?』
ルシアが魔力を集中するととてつもない密度で集約されていく。……これはやばい。数秒後の光景がリアルに目に浮かぶ。女王様だけじゃなく、警護の4人もガレオス伯爵も震えて動くことすらできていない。
『これで信じてもらえねば、さらなる魔法を見せてやる』
ルシアが魔法を発動する。その瞬間……
「お待ちくだされ!! 分かりました! その瞳、その魔力、龍族の方に間違いありませんのじゃ! 妾がアクア様のところまでご案内しますゆえ、何卒ご容赦くださいませ~!」
女王様がルシアに土下座してる……。それを見た警護の4人とガレオス伯爵も慌てて土下座している。
『ふむ。たまにはこれぐらいの魔法を使ってみたかったのだが、まあ仕方あるまい』
そう言うと、ルシアの周りに集約されていた魔力が霧散していく。それを見た女王様たちが安堵の表情に変わる。
「まさか龍族の方がアクア様を訪ねて来られるとは思いもしませんので失礼しましたのじゃ……。妾が責任をもってアクア様のところにお連れするのじゃ。それで、いつご出発なさるおつもりかえ?」
『それならば今から頼む』
「今から……いえいえ、承知しましたのじゃ。それでは出発しますのじゃ」
女王様の態度が180℃変わりましたね。あんな魔力を見せられたら人外の者としか思えないもんね。
そもそもウェスタール王国から来た僕もいて、本当の不審人物とは思ってないから会ったんだろうし。
「女王様……我々はどのようにすれば……」
空気のような存在になってた警護の4人と伯爵が女王様に恐る恐ると話しかける。
「そなたたちはここで待っておれ! 宰相や姫にも事情を伝えておくのじゃぞ! こんな失礼なことが無いようにくれぐれもしっかりと伝えるのじゃ!」
「「「はい!!」」」
おお~。みなさんの反応も全然変わったよ。
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奥の方に歩いて行くと、厳かな雰囲気の部屋があり、そこには湖へと潜る穴が床に設けられていた。
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