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第4章 帝都アウシルバード編
70 特別な魔道具
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僕たちは伝説の魔道具職人であるナディア様のところに向かっていた。
「ナディア様が実在してることにも驚いたけど、ウェスタール王国にいたなんてびっくりだよ」
『別にウェスタール王国に住んでいるわけではないぞ。たまたま今はウェスタール王国にいるというだけだ』
「ああ、そうなんだね。何か用事でもあって来られてるのかな」
『用事があるのかどうかは知らぬが、基本的に移動し続けているのだ。空飛ぶ島で漂っているからな』
「空を飛ぶ島!? そんなものがあるの? どうやって飛んでるんだろう? すごい魔法とか?」
『本人に聞いてみるがよい。もうすぐ着くからな』
それから少し飛んでいると、目の前に大きな雲の塊が見えてきた。
『あの雲の中に空飛ぶ島が浮かんでいる。雲が囲むことで地上から島を見ることができなくなっているのだ。こんな高度を飛ぶ鳥や魔物なども滅多にいないが、そういった類のものは雲の中に入れなくなっている。今は我が接近したことに気付いて入れるようにしてくれたみたいだがな。それでは行くぞ』
ルシアが雲の中に入ると、視界が雲で全く見えなくなった。深い霧の中にいる感じだ。でもすぐに視界は晴れた。
「うわ~!! すごいや! 本当に島が空に浮かんでる! こんなの誰に話しても信じてもらえないだろうな」
目の前には原理は分からないけど、悠然と島が空に浮かんでいる。思ってたのより大きい島だ。森や池みたいなものも見える。真ん中あたりに大きな建物も見えるな。
『あの建物にいるはずだ。下りるぞ』
ルシアと建物の前に下りると、ルシアはすぐに人形態に転体した。目の前には石で作られている2階建ての建物がある。空から見ても大きい建物だったけど、近くで見るとさらに大きく感じるね。
建物に近寄ると入口の扉が開いた。そこには大きな犬がいる。
「よく来たな。中に入れ」
「犬がしゃべった!! えっ!? もしかしてナディア様って人間じゃないの?」
『特大のあほうだな。こいつはペットだ。しかも正確には犬ではなく犬型の魔物だ。魔力が流れておるから分かるだろう? 言葉を操れる魔物ということだ』
確かに。魔力が流れてるのは見えてたけど、しゃべったインパクトの方が大きくて焦ってしまったよ。
犬の魔物は僕たちを案内してくれるということで、長い廊下を歩いてついて行った。
案内されたところは大きな部屋。色んな道具が置いてあるから工房のような雰囲気がするね。部屋を見回していると、奥の方から一人の女性がやってきた。とてつもなく綺麗な人だな。さらさらの黒くて長い髪が印象的な細身の女性だ。
「久しぶりね。龍界の坊や。今日はどういったご用件かしら?」
龍界の坊や? えっ、もしかしてルシアのことじゃないよね。
『ふん。お主に頼みごとをするのも気が乗らぬが、アクアに頼むよりもマシだと思っただけだよ、魔道具ばあさん』
魔道具ばあさん? どう見ても20代にしか見えないこちらの女性をばあさんですと?
「フフフ」
『フハハハハ』
2人とも声は笑ってるけど、目が笑ってませんけど……
「まあ、いいわ。それであなたが連れてきた男の子を紹介してくれるかしら?」
『レン、自己紹介して欲しいそうだぞ。ここに来た目的も伝えるとよい』
ルシアが積極的に絡みたくないのが伝わってくるな。
「ナディア様、初めまして。ウェスタール王国のレアンデル=アリウスと言います。今はハンターをしていてレンと名乗っています。ルシアに鍛えてもらいながら旅をしているのですが、次の目的地である水の大龍穴に行くためのご相談をしたくてこちらに来ました。人族である僕が海の底に行けるような魔道具はあるものでしょうか?」
ナディア様は微笑みを浮かべながら僕の話を聞いて、ゆっくりと口を開く。
「レン君と言ったわね。あなたはその若さで魔力の操作が随分と上手なようね。本人の資質もあるでしょうけど、先生の指導が良いのかしらね」
『お主に指導のことを言われてもむず痒い気持ちになるぞ』
「あら、純粋に褒めてるのよ。とにかくレン君はその調子で魔力の扱いを極めていくといいわよ。そしてさっきの質問だけど、海の底に行ける魔道具は作れるわ。そうね。アクアに頼りたくない気持ちも分かるし、久しぶりに会えたのも嬉しいし、レン君との出会いをお祝いするということで今から魔道具を作ってあげるわ」
ナディア様が魔道具を作ってくれるのか! それは嬉しいな。それにしてもナディア様ってルシアと知り合いなだけじゃなくて、水龍様のことも知ってるんだな。
「そうしたら30分ぐらい待ってもらえるかしら。チャチャっと作ってしまうから。それまでの間、お散歩でも、2階のゲストルームで寛いでもらってもいいから、自由に過ごしててね」
30分でできるのか。とんでもない魔道具だと思うんだけど、流石はナディア様だな。それにしても教科書に出てくる人が実在してるって……ナディア様は一体何歳なんだろう? いや、女性の年齢を考えるのはよくない。それに教科書のナディア様とお会いしてるナディア様が同じ人とは限らないし。ご先祖様が教科書に出てくるナディア様なのかもね。
僕たちは魔道具ができるのを待っている間、2人で島を散歩していた。
「ここが空に浮かんでいる島なんて信じられないよ。自然豊かだし、揺れるようなことも無いし、地上にいるのと同じ感じ。唯一違うのは見回す限り空というところだけ。島からは周りの分厚い雲は見えないんだね」
『あの雲は外敵に対するためのものだからな。地上から姿を隠し、外敵が侵入できないようにしている。そういう効果を持たせながら、内側からはきれいな景色が見えるようにしているのだろう。こだわりが強いばあさんだからな』
「そんなすごい雲なら魔道具で作っているか、特別な魔法かも知れないね。それにしてもあんなに若くて綺麗な女性をばあさんってひどくない?」
『ふん! 我を坊や扱いするのだから、ばあさんで十分だ。お主も見た目に騙されてはいかんぞ。
確かに我が知る限りでも、魔道具を作る能力は1番だ。今では技を受け継いだ弟子どもが色々な魔道具を作って世の中に普及しているが、それとはレベルが違うからな。
今回依頼した魔道具は誰にも作れないものだ。その点は感謝して良いがな』
魔道具作りじゃナンバー1の腕前か。ルシアにそこまで言わせるとは流石はナディア様だな。
ルシアとナディア様の不思議な関係について色々と話をしながら、僕たちは島の散歩を続けた。
「ナディア様が実在してることにも驚いたけど、ウェスタール王国にいたなんてびっくりだよ」
『別にウェスタール王国に住んでいるわけではないぞ。たまたま今はウェスタール王国にいるというだけだ』
「ああ、そうなんだね。何か用事でもあって来られてるのかな」
『用事があるのかどうかは知らぬが、基本的に移動し続けているのだ。空飛ぶ島で漂っているからな』
「空を飛ぶ島!? そんなものがあるの? どうやって飛んでるんだろう? すごい魔法とか?」
『本人に聞いてみるがよい。もうすぐ着くからな』
それから少し飛んでいると、目の前に大きな雲の塊が見えてきた。
『あの雲の中に空飛ぶ島が浮かんでいる。雲が囲むことで地上から島を見ることができなくなっているのだ。こんな高度を飛ぶ鳥や魔物なども滅多にいないが、そういった類のものは雲の中に入れなくなっている。今は我が接近したことに気付いて入れるようにしてくれたみたいだがな。それでは行くぞ』
ルシアが雲の中に入ると、視界が雲で全く見えなくなった。深い霧の中にいる感じだ。でもすぐに視界は晴れた。
「うわ~!! すごいや! 本当に島が空に浮かんでる! こんなの誰に話しても信じてもらえないだろうな」
目の前には原理は分からないけど、悠然と島が空に浮かんでいる。思ってたのより大きい島だ。森や池みたいなものも見える。真ん中あたりに大きな建物も見えるな。
『あの建物にいるはずだ。下りるぞ』
ルシアと建物の前に下りると、ルシアはすぐに人形態に転体した。目の前には石で作られている2階建ての建物がある。空から見ても大きい建物だったけど、近くで見るとさらに大きく感じるね。
建物に近寄ると入口の扉が開いた。そこには大きな犬がいる。
「よく来たな。中に入れ」
「犬がしゃべった!! えっ!? もしかしてナディア様って人間じゃないの?」
『特大のあほうだな。こいつはペットだ。しかも正確には犬ではなく犬型の魔物だ。魔力が流れておるから分かるだろう? 言葉を操れる魔物ということだ』
確かに。魔力が流れてるのは見えてたけど、しゃべったインパクトの方が大きくて焦ってしまったよ。
犬の魔物は僕たちを案内してくれるということで、長い廊下を歩いてついて行った。
案内されたところは大きな部屋。色んな道具が置いてあるから工房のような雰囲気がするね。部屋を見回していると、奥の方から一人の女性がやってきた。とてつもなく綺麗な人だな。さらさらの黒くて長い髪が印象的な細身の女性だ。
「久しぶりね。龍界の坊や。今日はどういったご用件かしら?」
龍界の坊や? えっ、もしかしてルシアのことじゃないよね。
『ふん。お主に頼みごとをするのも気が乗らぬが、アクアに頼むよりもマシだと思っただけだよ、魔道具ばあさん』
魔道具ばあさん? どう見ても20代にしか見えないこちらの女性をばあさんですと?
「フフフ」
『フハハハハ』
2人とも声は笑ってるけど、目が笑ってませんけど……
「まあ、いいわ。それであなたが連れてきた男の子を紹介してくれるかしら?」
『レン、自己紹介して欲しいそうだぞ。ここに来た目的も伝えるとよい』
ルシアが積極的に絡みたくないのが伝わってくるな。
「ナディア様、初めまして。ウェスタール王国のレアンデル=アリウスと言います。今はハンターをしていてレンと名乗っています。ルシアに鍛えてもらいながら旅をしているのですが、次の目的地である水の大龍穴に行くためのご相談をしたくてこちらに来ました。人族である僕が海の底に行けるような魔道具はあるものでしょうか?」
ナディア様は微笑みを浮かべながら僕の話を聞いて、ゆっくりと口を開く。
「レン君と言ったわね。あなたはその若さで魔力の操作が随分と上手なようね。本人の資質もあるでしょうけど、先生の指導が良いのかしらね」
『お主に指導のことを言われてもむず痒い気持ちになるぞ』
「あら、純粋に褒めてるのよ。とにかくレン君はその調子で魔力の扱いを極めていくといいわよ。そしてさっきの質問だけど、海の底に行ける魔道具は作れるわ。そうね。アクアに頼りたくない気持ちも分かるし、久しぶりに会えたのも嬉しいし、レン君との出会いをお祝いするということで今から魔道具を作ってあげるわ」
ナディア様が魔道具を作ってくれるのか! それは嬉しいな。それにしてもナディア様ってルシアと知り合いなだけじゃなくて、水龍様のことも知ってるんだな。
「そうしたら30分ぐらい待ってもらえるかしら。チャチャっと作ってしまうから。それまでの間、お散歩でも、2階のゲストルームで寛いでもらってもいいから、自由に過ごしててね」
30分でできるのか。とんでもない魔道具だと思うんだけど、流石はナディア様だな。それにしても教科書に出てくる人が実在してるって……ナディア様は一体何歳なんだろう? いや、女性の年齢を考えるのはよくない。それに教科書のナディア様とお会いしてるナディア様が同じ人とは限らないし。ご先祖様が教科書に出てくるナディア様なのかもね。
僕たちは魔道具ができるのを待っている間、2人で島を散歩していた。
「ここが空に浮かんでいる島なんて信じられないよ。自然豊かだし、揺れるようなことも無いし、地上にいるのと同じ感じ。唯一違うのは見回す限り空というところだけ。島からは周りの分厚い雲は見えないんだね」
『あの雲は外敵に対するためのものだからな。地上から姿を隠し、外敵が侵入できないようにしている。そういう効果を持たせながら、内側からはきれいな景色が見えるようにしているのだろう。こだわりが強いばあさんだからな』
「そんなすごい雲なら魔道具で作っているか、特別な魔法かも知れないね。それにしてもあんなに若くて綺麗な女性をばあさんってひどくない?」
『ふん! 我を坊や扱いするのだから、ばあさんで十分だ。お主も見た目に騙されてはいかんぞ。
確かに我が知る限りでも、魔道具を作る能力は1番だ。今では技を受け継いだ弟子どもが色々な魔道具を作って世の中に普及しているが、それとはレベルが違うからな。
今回依頼した魔道具は誰にも作れないものだ。その点は感謝して良いがな』
魔道具作りじゃナンバー1の腕前か。ルシアにそこまで言わせるとは流石はナディア様だな。
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