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第4章 帝都アウシルバード編
63 時空間魔法の修行
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あれからフライヤはズルい、羨ましいとヴァン様に詰め寄られて、最終的に敬語を使わないことを約束させられた。ルシアやフライヤのようにヴァンと呼んでくれというお願いだけは何とか断った。
そうするとヴァン様は「これでルシア殿に一歩近付けた!」と喜んでいたんだけど、おそらくルシアには友だちのように接して、ヴァン様には敬って接する感じが、ルシアに対しての申し訳なさみたいなものがあったのかもな。
その成り行きを見ていたレオーネ皇帝とロンジン隊長が固まっていたのが印象的だったな。風龍様から「呼び捨てにしてくれ! 敬語を使うな!」とお願いされるなんて普通ありえないもんね。
そうしてプライベートバーでの飲み会が終わったあと、僕とルシアとフライヤには皇宮の離れに一室ずつ宿泊する部屋を用意してくれた。
とんでもなく広くて豪華な部屋。さすが皇宮のゲストルームだな。皇宮自体がビックリするような大きさだから、こんなに広い部屋がたくさんあっても驚かないけどね。
それにしてもとんでもない一日だった。レオーネ皇帝に会うとは思ってもみなかったよ。ヴァン様まで来ちゃうしさ。
僕はとても広くて豪華な浴室でシャワーを浴びて、楽々と3人は寝ることができるベッドを独り占めして深い眠りについた。
窓から太陽の光が入ってきて、部屋を明るく照らしている。自然の光に目を覚まし、窓から外を見ると、雲一つない快晴でとても気持ちがいい。
僕が身だしなみを整えていると、ドアがノックされた。
「おはようございます、レン様。朝食の準備が出来ておりますので、食堂にご案内します」
案内に来てくれたのは、昨日、レオーネ皇帝と一緒にいた兎の獣人のアイラさんだった。
「おはようございます。アイラさん。ルシアやフライヤはどうしているか分かりますか?」
「名前を覚えてくださっていたのですね。ありがとうございます。ルシア様、フライヤ様はさきほどご案内したところです。レン様もどうぞ」
アイラさんに案内された食堂ではルシアとフライヤが朝食を食べていた。
僕にも同じものが用意されたんだけど、朝から分厚いステーキだ。しかし、これが柔らかくてすっごく美味しい! ルシアも気に入ったみたいでおかわりしてたよ。
ボリュームたっぷりの朝食を食べたあとは、ルシアと勉強会。学校の勉強を一通りやってから、最近は特に力を入れてる時空間魔法の修行を行う。
時空間魔法はとにかく魔力の消費が大きい。魔力貯蔵量は修行で簡単に増えるものでは無いから、今やってるのは大気中のマナを効率よく取り込み、魔力に変換できるようになること。そのための訓練として24時間常に使っている障壁魔法を少しずつ強くしている。
障壁魔法を使うようになってから、マナを取り込む感覚が鋭敏になってきて、マナを取り込む量が少しずつ増えてきている。そして障壁魔法をずっと使ってるおかげで魔力操作も上達してるし、マナを魔力に変換する魔力変換効率も上がっている。
そして時空間魔法の魔力の使い方にも大分慣れてきた。僕の荷物を収納している空間に物を出し入れするのも、補助魔道具のリング無しで出来るようになったし、次元断の練習を繰り返すうちに自分の魔力貯蔵量を把握できるようになった。
『ふむ。時空間魔法の使い方も上達してきたな。よし。それでは見える範囲ではあるが、転移の練習をするとしよう』
「えっ? 転移!? 転移の魔法は時空間魔法を極めないと無理じゃなかったの?」
『その通りだ。転移を使えるようになるためには、まだまだ力量が不足している。まずは転移の感覚をつかむための練習を始めるのだ。
転移をするためには転移したい場所に座標を定め、その場所と自分がいる場所の空間を俯瞰的にとらえなければならない。
具体的には転移したい空間と自分がいる空間を頭に浮かべて、それぞれの空間を入れ替える。
当然、自分が行ったことがあるところの方がイメージしやすいし、座標を定めやすい。いつも言っているが、時空間魔法の肝は座標を定めることだ。今のお主では遠方への座標を定めることも難しいが、何よりも移動するための魔力が足りない。そこで、目に見える範囲で転移を練習することで、転移の感覚を掴んで行くというわけだ。自由自在に転移を使えるようになるためにな』
「なるほど!」
『それでは早速やってもらおう。まずは目の前に転移してみよ。座標の定め方は次元断と同じ要領だ。そして頭の中で目の前の空間と自分がいる空間を入れ替えるのだ。それができたら転移と唱えよ』
「次元断の要領か。それなら何とかなるかも。分かった。やってみるよ」
僕は2mほど目の前の空間に座標を定めた。うん。これはいつも次元断でやってるからできるね。頭の中に2つの空間を浮かべて……あれ? 2つの空間を俯瞰的にとらえるって難しいな。ちょっと目を閉じて思い浮かべてみよう。う~ん。こんな感じかな?
『少し時間がかかり過ぎだな。座標の指定が甘くなっているぞ。いったんやり直せ』
本当だ。目の前に指定した座標がずれてきている。目を閉じて空間のことを考えているうちに座標の指定の意識が薄れたんだな。
「もう一度やり直してみるよ」
僕は同じように目の前に座標を定めて、目を閉じて一瞬で空間を思い浮かべる。よし! これでいいはず! 目を開けて大きな声で唱える。
「転移!!」
おおっ! 立つ位置が変わってるよ! 成功したよね?
『ほう。上手くいったではないか。どんな感じだ?』
「すごいよ! 一瞬で場所を移動できるのって不思議な感じだよ。いつもルシアに転移で移動してもらってるから、転移をする感覚は掴みやすくて助かったんだけど、自分でやってみて感じたのは"時間が止まってる"って言うのかな? 表現が合ってるか分かんないけど、とにかく単純に移動しただけじゃなくて、時間に違和感があったんだよね」
『フハハハハッ! 流石は空の紋章の所持者だな。時間と空間の感覚に鋭敏だ。そのとおり。転移の素晴らしいところは、移動する時間が0秒というところだ。どんなに遠いところに転移しようが時間がかかることはない。つまりは転移が起きている間は時間が止まっているとも言える。時間と空間を操る魔法。それが時空間魔法なのだ』
「時間と空間を操る魔法か。時間を操ると言われてもピンとこないな~」
『そうか? お主の前で分かりやすい実演をしたはずだがな』
「分かりやすい実演? 一体何のことを言ってるの?」
『レナールのパーティーにカインズと言う者がおったであろう』
「もちろん覚えてるよ。無くした左腕をルシアが治癒魔法で治してあげた人でしょ?」
『そうだ。しかし一つ間違っておる。左腕を治したのは治癒魔法ではなく時空間魔法だ』
「時空間魔法?」
『確かに治癒魔法でも欠損を治すレベルの使い手はいるし、我も使うことができるのだが、治癒魔法の場合は負傷した本人の回復力によっても治り方に差が出たり、復元後のリハビリにも影響が出る。そういったことを考慮し、カインズには時空間魔法で左腕だけ時間の巻き戻しを行ったのだ。端的に言えば左腕を欠損する前へと時を戻した。そうすれば左腕は元に戻っただけであるから本人には何の負担も発生しない。デメリットは治癒魔法に比べて時空間魔法は魔力の消費が大きいことだが、我には大した問題ではないからな』
あ~。そうだったんだ。確かあのときはカインズさんの左腕が生えてきたように見えてたけど、あれは時間が巻き戻されて元に戻る逆再生の様子を見てたわけか。
僕はルシアの話を聞いて、あらためて時空間魔法のすごさを実感していた。
そうするとヴァン様は「これでルシア殿に一歩近付けた!」と喜んでいたんだけど、おそらくルシアには友だちのように接して、ヴァン様には敬って接する感じが、ルシアに対しての申し訳なさみたいなものがあったのかもな。
その成り行きを見ていたレオーネ皇帝とロンジン隊長が固まっていたのが印象的だったな。風龍様から「呼び捨てにしてくれ! 敬語を使うな!」とお願いされるなんて普通ありえないもんね。
そうしてプライベートバーでの飲み会が終わったあと、僕とルシアとフライヤには皇宮の離れに一室ずつ宿泊する部屋を用意してくれた。
とんでもなく広くて豪華な部屋。さすが皇宮のゲストルームだな。皇宮自体がビックリするような大きさだから、こんなに広い部屋がたくさんあっても驚かないけどね。
それにしてもとんでもない一日だった。レオーネ皇帝に会うとは思ってもみなかったよ。ヴァン様まで来ちゃうしさ。
僕はとても広くて豪華な浴室でシャワーを浴びて、楽々と3人は寝ることができるベッドを独り占めして深い眠りについた。
窓から太陽の光が入ってきて、部屋を明るく照らしている。自然の光に目を覚まし、窓から外を見ると、雲一つない快晴でとても気持ちがいい。
僕が身だしなみを整えていると、ドアがノックされた。
「おはようございます、レン様。朝食の準備が出来ておりますので、食堂にご案内します」
案内に来てくれたのは、昨日、レオーネ皇帝と一緒にいた兎の獣人のアイラさんだった。
「おはようございます。アイラさん。ルシアやフライヤはどうしているか分かりますか?」
「名前を覚えてくださっていたのですね。ありがとうございます。ルシア様、フライヤ様はさきほどご案内したところです。レン様もどうぞ」
アイラさんに案内された食堂ではルシアとフライヤが朝食を食べていた。
僕にも同じものが用意されたんだけど、朝から分厚いステーキだ。しかし、これが柔らかくてすっごく美味しい! ルシアも気に入ったみたいでおかわりしてたよ。
ボリュームたっぷりの朝食を食べたあとは、ルシアと勉強会。学校の勉強を一通りやってから、最近は特に力を入れてる時空間魔法の修行を行う。
時空間魔法はとにかく魔力の消費が大きい。魔力貯蔵量は修行で簡単に増えるものでは無いから、今やってるのは大気中のマナを効率よく取り込み、魔力に変換できるようになること。そのための訓練として24時間常に使っている障壁魔法を少しずつ強くしている。
障壁魔法を使うようになってから、マナを取り込む感覚が鋭敏になってきて、マナを取り込む量が少しずつ増えてきている。そして障壁魔法をずっと使ってるおかげで魔力操作も上達してるし、マナを魔力に変換する魔力変換効率も上がっている。
そして時空間魔法の魔力の使い方にも大分慣れてきた。僕の荷物を収納している空間に物を出し入れするのも、補助魔道具のリング無しで出来るようになったし、次元断の練習を繰り返すうちに自分の魔力貯蔵量を把握できるようになった。
『ふむ。時空間魔法の使い方も上達してきたな。よし。それでは見える範囲ではあるが、転移の練習をするとしよう』
「えっ? 転移!? 転移の魔法は時空間魔法を極めないと無理じゃなかったの?」
『その通りだ。転移を使えるようになるためには、まだまだ力量が不足している。まずは転移の感覚をつかむための練習を始めるのだ。
転移をするためには転移したい場所に座標を定め、その場所と自分がいる場所の空間を俯瞰的にとらえなければならない。
具体的には転移したい空間と自分がいる空間を頭に浮かべて、それぞれの空間を入れ替える。
当然、自分が行ったことがあるところの方がイメージしやすいし、座標を定めやすい。いつも言っているが、時空間魔法の肝は座標を定めることだ。今のお主では遠方への座標を定めることも難しいが、何よりも移動するための魔力が足りない。そこで、目に見える範囲で転移を練習することで、転移の感覚を掴んで行くというわけだ。自由自在に転移を使えるようになるためにな』
「なるほど!」
『それでは早速やってもらおう。まずは目の前に転移してみよ。座標の定め方は次元断と同じ要領だ。そして頭の中で目の前の空間と自分がいる空間を入れ替えるのだ。それができたら転移と唱えよ』
「次元断の要領か。それなら何とかなるかも。分かった。やってみるよ」
僕は2mほど目の前の空間に座標を定めた。うん。これはいつも次元断でやってるからできるね。頭の中に2つの空間を浮かべて……あれ? 2つの空間を俯瞰的にとらえるって難しいな。ちょっと目を閉じて思い浮かべてみよう。う~ん。こんな感じかな?
『少し時間がかかり過ぎだな。座標の指定が甘くなっているぞ。いったんやり直せ』
本当だ。目の前に指定した座標がずれてきている。目を閉じて空間のことを考えているうちに座標の指定の意識が薄れたんだな。
「もう一度やり直してみるよ」
僕は同じように目の前に座標を定めて、目を閉じて一瞬で空間を思い浮かべる。よし! これでいいはず! 目を開けて大きな声で唱える。
「転移!!」
おおっ! 立つ位置が変わってるよ! 成功したよね?
『ほう。上手くいったではないか。どんな感じだ?』
「すごいよ! 一瞬で場所を移動できるのって不思議な感じだよ。いつもルシアに転移で移動してもらってるから、転移をする感覚は掴みやすくて助かったんだけど、自分でやってみて感じたのは"時間が止まってる"って言うのかな? 表現が合ってるか分かんないけど、とにかく単純に移動しただけじゃなくて、時間に違和感があったんだよね」
『フハハハハッ! 流石は空の紋章の所持者だな。時間と空間の感覚に鋭敏だ。そのとおり。転移の素晴らしいところは、移動する時間が0秒というところだ。どんなに遠いところに転移しようが時間がかかることはない。つまりは転移が起きている間は時間が止まっているとも言える。時間と空間を操る魔法。それが時空間魔法なのだ』
「時間と空間を操る魔法か。時間を操ると言われてもピンとこないな~」
『そうか? お主の前で分かりやすい実演をしたはずだがな』
「分かりやすい実演? 一体何のことを言ってるの?」
『レナールのパーティーにカインズと言う者がおったであろう』
「もちろん覚えてるよ。無くした左腕をルシアが治癒魔法で治してあげた人でしょ?」
『そうだ。しかし一つ間違っておる。左腕を治したのは治癒魔法ではなく時空間魔法だ』
「時空間魔法?」
『確かに治癒魔法でも欠損を治すレベルの使い手はいるし、我も使うことができるのだが、治癒魔法の場合は負傷した本人の回復力によっても治り方に差が出たり、復元後のリハビリにも影響が出る。そういったことを考慮し、カインズには時空間魔法で左腕だけ時間の巻き戻しを行ったのだ。端的に言えば左腕を欠損する前へと時を戻した。そうすれば左腕は元に戻っただけであるから本人には何の負担も発生しない。デメリットは治癒魔法に比べて時空間魔法は魔力の消費が大きいことだが、我には大した問題ではないからな』
あ~。そうだったんだ。確かあのときはカインズさんの左腕が生えてきたように見えてたけど、あれは時間が巻き戻されて元に戻る逆再生の様子を見てたわけか。
僕はルシアの話を聞いて、あらためて時空間魔法のすごさを実感していた。
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