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第4章 帝都アウシルバード編
58 皇位継承戦③
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ロンジンは身長が2m20cm程あり、鍛えられた筋肉を纏った見事な体躯を誇る獅子の獣人である。
そして、今の彼は身長が3mを超え、顔、腕、足が銀色の獅子の姿へと変貌していた。
「それが噂で聞く聖獣化した姿か。左腕も元に戻っているし、凄まじい力を感じるな」
帝国最強と言われるロンジンは、その圧倒的な膂力や斧の腕前が有名であるが、最強たる一番の理由は聖獣化にこそある。
肉体的な強さを特徴とする獣人族の中には、ルーツとなっている獣の力を引き出すことができるものがおり、その力を引き出すことを聖獣化と呼ぶ。聖獣化が出来る者は僅かであるが、その効果は己の能力を飛躍的に上昇させる絶大なものである。
レオーネの目の前に立つロンジンが静かにレオーネを見つめて語りだす。
「レオーネよ。俺はお前を対等の相手として認めよう。俺の聖獣化は通常のパワーアップに加えて、聖獣化時には超回復が行われる。腕を飛ばされたがそれも元通りだ。逆に言えばお前にそこまでやられたから聖獣化するしかなかったのだ。誇りに思え! それではいくぞ!」
ロンジンは雄々しき獅子の姿とは対照的に、落ち着いた態度でレオーネに言葉を告げる。高圧的なところは変わらないが、酷い横柄さは見られないようにも感じられた。
ロンジンが猛スピードでレオーネに迫ると、右手を振りかぶり、レオーネの左わき腹を狙って手刀を繰り出した。
「速いっ!!」
レオーネは一瞬で接近を許したことに驚き、声をあげながらロンジンの手刀を躱そうとする。
「グハッ!!!」
レオーネは手刀をギリギリで躱したものの、ロンジンはそのままの勢いで回転。さらに踏み込んで左の裏拳を左わき腹に命中させる。
障壁魔法を纏っているレオーネであったが、その威力を殺すことはできず、左わき腹に拳を叩きこまれ、その威力で数メートル先まで飛ばされていた。
観客席より大きな歓声が上がる。今の速い攻防を視認できたものは少ないだろう。ただ、聖獣化したロンジンはサンネイシス帝国の強さの象徴だ。その最強の男が挑戦者を吹き飛ばすシーンは観客を興奮させるに余りある姿であった。
「流石だな、レオーネ。最初の手刀を避けたのもそうだが、俺の拳を腹でうけたのにも関わらずすぐに立ち上がり、痛そうにはしているが大きなダメージには至っていないようだ」
ロンジンはレオーネの姿を見て、冷静に状況を分析していた。
「いや、驚いたよ。聖獣化はどんなものかと思っていたが、想像の上を行っていた。俺も本気で行かないといけないようだ」
「強がりを言いおって……と言いたいところだが、どうやら本当のことのようだな。よいぞ。お前も本気を出せ! 俺も帝国最強の力を見せてやる」
そこからのレオーネとロンジンは、まさしく帝国最強を決めるのに相応しい戦いを繰り広げていた。
聖獣化により今までの数倍の力とスピードを操るロンジンと、獣人とは思えない魔力を操り、ロンジンに劣らないスピードと巧みな攻撃魔法で戦うレオーネ。
観客も息を呑み、戦いを見守っている。もはやレオーネを嘲るものは誰もいない。
強さを好む獣人たちにとって、強者とは憧れの存在であり、尊敬すべき者。舞台で戦う二人は紛れもなく強者であり、この二人のいずれかが最強と呼ぶに相応しいのだ。
レオーネとロンジンの激しい攻防が15分ほど続いたとき、ロンジンがその動きを止めた。
「フハハハハッ!! 強い! 強いな、レオーネよ! 俺とここまで戦えたのはお前が初めてだ。――しかし何事にも終わりはやってくる。俺の聖獣化はあと少しで解けるからな。お前の魔力も大分減ってきたであろう。ここらで勝負を決めないとな。楽しい戦いの時間もこれまでだ」
ロンジンの横には、舞台に突き刺したままの戦斧ディーンアックスがあった。
「なるほどな。そういえばお前は聖獣化してからは素手で戦っていたな」
「そういうことだ。別に手を抜いていた訳ではない。聖獣化した状態でディーンアックスを使うとエネルギーの消費が半端ではないのでな。お前の魔力を消費させてから使うと決めていたまで。ディーンアックスで戦えば5分ほどで聖獣化が解けるが、それで十分。覚悟を決めるのだな」
「面白い。帝国最強の攻撃ということか。手加減はいらん。決着をつけよう!」
ロンジンがディーンアックスを持つと、その戦斧は美しい薄い紫の光を纏った。ロンジンの聖獣化と魔力に反応して、凄まじい力を秘めた状態になっている。
「行くぞっ!!」
ロンジンが正面からレオーネに向かってくる。ロンジンがまだ少し離れたところからその戦斧を軽く振り回すと、いくつもの風の刃がレオーネを襲う。聖獣化してから放たれるその風の刃は威力、速度ともに遥かにレベルが上がっている。
レオーネは最大限の魔力を集中して、何とか風の刃を避けてはみたものの、いくつかの刃は完全には躱しきれず、浅くはない傷を負っていた。
そのタイミングを待ち構えていたロンジンは、一瞬にしてレオーネとの距離を詰めると、戦斧を右から左に全力で振るう。
それはレオーネの残りの全魔力を使っても間違いなく防ぐことのできない威力であり、その攻撃は吸い込まれるようにレオーネに直撃した。
そして、今の彼は身長が3mを超え、顔、腕、足が銀色の獅子の姿へと変貌していた。
「それが噂で聞く聖獣化した姿か。左腕も元に戻っているし、凄まじい力を感じるな」
帝国最強と言われるロンジンは、その圧倒的な膂力や斧の腕前が有名であるが、最強たる一番の理由は聖獣化にこそある。
肉体的な強さを特徴とする獣人族の中には、ルーツとなっている獣の力を引き出すことができるものがおり、その力を引き出すことを聖獣化と呼ぶ。聖獣化が出来る者は僅かであるが、その効果は己の能力を飛躍的に上昇させる絶大なものである。
レオーネの目の前に立つロンジンが静かにレオーネを見つめて語りだす。
「レオーネよ。俺はお前を対等の相手として認めよう。俺の聖獣化は通常のパワーアップに加えて、聖獣化時には超回復が行われる。腕を飛ばされたがそれも元通りだ。逆に言えばお前にそこまでやられたから聖獣化するしかなかったのだ。誇りに思え! それではいくぞ!」
ロンジンは雄々しき獅子の姿とは対照的に、落ち着いた態度でレオーネに言葉を告げる。高圧的なところは変わらないが、酷い横柄さは見られないようにも感じられた。
ロンジンが猛スピードでレオーネに迫ると、右手を振りかぶり、レオーネの左わき腹を狙って手刀を繰り出した。
「速いっ!!」
レオーネは一瞬で接近を許したことに驚き、声をあげながらロンジンの手刀を躱そうとする。
「グハッ!!!」
レオーネは手刀をギリギリで躱したものの、ロンジンはそのままの勢いで回転。さらに踏み込んで左の裏拳を左わき腹に命中させる。
障壁魔法を纏っているレオーネであったが、その威力を殺すことはできず、左わき腹に拳を叩きこまれ、その威力で数メートル先まで飛ばされていた。
観客席より大きな歓声が上がる。今の速い攻防を視認できたものは少ないだろう。ただ、聖獣化したロンジンはサンネイシス帝国の強さの象徴だ。その最強の男が挑戦者を吹き飛ばすシーンは観客を興奮させるに余りある姿であった。
「流石だな、レオーネ。最初の手刀を避けたのもそうだが、俺の拳を腹でうけたのにも関わらずすぐに立ち上がり、痛そうにはしているが大きなダメージには至っていないようだ」
ロンジンはレオーネの姿を見て、冷静に状況を分析していた。
「いや、驚いたよ。聖獣化はどんなものかと思っていたが、想像の上を行っていた。俺も本気で行かないといけないようだ」
「強がりを言いおって……と言いたいところだが、どうやら本当のことのようだな。よいぞ。お前も本気を出せ! 俺も帝国最強の力を見せてやる」
そこからのレオーネとロンジンは、まさしく帝国最強を決めるのに相応しい戦いを繰り広げていた。
聖獣化により今までの数倍の力とスピードを操るロンジンと、獣人とは思えない魔力を操り、ロンジンに劣らないスピードと巧みな攻撃魔法で戦うレオーネ。
観客も息を呑み、戦いを見守っている。もはやレオーネを嘲るものは誰もいない。
強さを好む獣人たちにとって、強者とは憧れの存在であり、尊敬すべき者。舞台で戦う二人は紛れもなく強者であり、この二人のいずれかが最強と呼ぶに相応しいのだ。
レオーネとロンジンの激しい攻防が15分ほど続いたとき、ロンジンがその動きを止めた。
「フハハハハッ!! 強い! 強いな、レオーネよ! 俺とここまで戦えたのはお前が初めてだ。――しかし何事にも終わりはやってくる。俺の聖獣化はあと少しで解けるからな。お前の魔力も大分減ってきたであろう。ここらで勝負を決めないとな。楽しい戦いの時間もこれまでだ」
ロンジンの横には、舞台に突き刺したままの戦斧ディーンアックスがあった。
「なるほどな。そういえばお前は聖獣化してからは素手で戦っていたな」
「そういうことだ。別に手を抜いていた訳ではない。聖獣化した状態でディーンアックスを使うとエネルギーの消費が半端ではないのでな。お前の魔力を消費させてから使うと決めていたまで。ディーンアックスで戦えば5分ほどで聖獣化が解けるが、それで十分。覚悟を決めるのだな」
「面白い。帝国最強の攻撃ということか。手加減はいらん。決着をつけよう!」
ロンジンがディーンアックスを持つと、その戦斧は美しい薄い紫の光を纏った。ロンジンの聖獣化と魔力に反応して、凄まじい力を秘めた状態になっている。
「行くぞっ!!」
ロンジンが正面からレオーネに向かってくる。ロンジンがまだ少し離れたところからその戦斧を軽く振り回すと、いくつもの風の刃がレオーネを襲う。聖獣化してから放たれるその風の刃は威力、速度ともに遥かにレベルが上がっている。
レオーネは最大限の魔力を集中して、何とか風の刃を避けてはみたものの、いくつかの刃は完全には躱しきれず、浅くはない傷を負っていた。
そのタイミングを待ち構えていたロンジンは、一瞬にしてレオーネとの距離を詰めると、戦斧を右から左に全力で振るう。
それはレオーネの残りの全魔力を使っても間違いなく防ぐことのできない威力であり、その攻撃は吸い込まれるようにレオーネに直撃した。
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