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第4章 帝都アウシルバード編
57 皇位継承戦②
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「馬鹿な……お前、あれだけの刃を食らって、なぜ立てるっ!!」
平然と立っているレオーネに向かって、勝利を確信していたロンジンが声を張り上げる。
「なぜって、攻撃を防御したからに決まっているだろう。それ以外に何があるというのか、全くもって意味が分からん」
レオーネはひどくつまらなさそうな態度で、つぶやくように返事を返した。
「ふざけるな! ディーンアックスの攻撃はただの攻撃ではない。使用者の魔力を増幅して、風属性の攻撃魔法に変換しているのだ。お前の着ている安物の鎧で防げるようなものじゃないんだぞ!!」
激高して問い詰めるロンジン。それに対して呆れかえったような顔をしてレオーネが語りだす。
「ふ~。俺が身に付けているのは確かに何でもない普通の軽装鎧だ。さっきの攻撃魔法は鎧で防いだわけじゃない。攻撃魔法を防ぐためには魔法を使うしかあるまい。つまり障壁魔法で防いだのだ。それぐらい説明せんでも理解できるだろう? 俺はここに戦いに来たのであって、戦いの説明をしにきたわけじゃないんだぞ?」
それを聞いたロンジンはさらに怒りをこめて怒鳴り返した。
「そんなことはあり得ねえんだよっ!! 俺様の魔力を皇族に伝わる秘宝の戦斧で増幅した攻撃魔法だ! 獣人族が防げるレベルの魔法じゃねえんだよっ! てめえ、どんな裏技を使いやがったんだ!」
「あり得るかあり得ないかはお前が決めることではない。しかし質問ばかりで煩わしいな。それなら一つ教えてやろう。お前の実力で特筆すべきところはその膂力のようだ。そして俺の長所を一つ挙げるとすれば……それは魔力だ。全ての獣人族が魔力が少ないというわけではないぞ。俺の母のように強大な魔力を持つ者もいる。その力を俺も受け継いでいるし、使い方も叩きこまれているからな。ここからは俺の攻撃を受けてもらおう」
レオーネは左手に魔力を集中する。そしてロンジンの方向にその手を向けた。
「ウィンドカッター!!」
レオーネの左手から風の刃が放出され、ロンジンを目がけて猛スピードで飛んでいく。その魔法に合わせて、レオーネは右手に槍を構えてロンジンに駆け寄る。
「くそっ!!」
ロンジンは攻撃魔法を躱すが、その風の刃の大きさと速さにより、左腕の一部が切り裂かれる。その瞬間にレオーネは槍を突き出した。一瞬にしてロンジンの左腕が吹き飛ぶ。
「ギエェ――!!」
そのあまりの激痛にロンジンが叫ぶ。それを見ていた観衆の多くが呆気にとられたように静寂したあと、あちらこちらで悲鳴のような声が聞こえる。
「これぐらいも避けられないのか。スピードには自信があったように見えたのだが」
レオーネとしては小手調べぐらいのつもりで攻撃を繰り出していた。
しかし、レオーネから放たれた風魔法のウィンドカッターは、デザートウルフ程度の魔物を軽く仕留める威力があり、ロンジンに駆け寄る際には風魔法の補助により移動速度が底上げされ、ミスリルで作られた槍には十分な魔力が込められていた。
攻撃をする過程でレオーネに身に付いている自然な動きがそのまま出ただけなのだが、この一連の動作による攻撃を躱すのは容易なことではなかった。
左腕を失ったロンジンであったが、すぐに手持ちのポーションを使い、止血と痛みの緩和を行っていた。
「き、貴様。よくも俺様の腕を……許さん……許さんぞ~!!!」
ロンジンはレオーネを鬼の形相で睨みつける。
「まだ闘志は衰えていないようだな。それは重畳」
こんなに簡単に勝負がついてしまっては何の面白みもないと思っていたレオーネは素直に感想を述べる。
一方のロンジンはレオーネへの怒りが収まらない。左腕を飛ばされたこともそうだが、レオーネに苦戦するなどあってはならないことなのだ。
「貴様相手に見せることになるとは思ってもいなかったが……仕方ない。俺様の切り札を切るとしよう」
ロンジンは持っていた戦斧をその場で床に突き刺した。
そして少し俯いて、全身に力を漲らせると、レオーネを見つめて小さく呟いた。
「――聖獣化」
その瞬間、ロンジンはその姿を変えた。
平然と立っているレオーネに向かって、勝利を確信していたロンジンが声を張り上げる。
「なぜって、攻撃を防御したからに決まっているだろう。それ以外に何があるというのか、全くもって意味が分からん」
レオーネはひどくつまらなさそうな態度で、つぶやくように返事を返した。
「ふざけるな! ディーンアックスの攻撃はただの攻撃ではない。使用者の魔力を増幅して、風属性の攻撃魔法に変換しているのだ。お前の着ている安物の鎧で防げるようなものじゃないんだぞ!!」
激高して問い詰めるロンジン。それに対して呆れかえったような顔をしてレオーネが語りだす。
「ふ~。俺が身に付けているのは確かに何でもない普通の軽装鎧だ。さっきの攻撃魔法は鎧で防いだわけじゃない。攻撃魔法を防ぐためには魔法を使うしかあるまい。つまり障壁魔法で防いだのだ。それぐらい説明せんでも理解できるだろう? 俺はここに戦いに来たのであって、戦いの説明をしにきたわけじゃないんだぞ?」
それを聞いたロンジンはさらに怒りをこめて怒鳴り返した。
「そんなことはあり得ねえんだよっ!! 俺様の魔力を皇族に伝わる秘宝の戦斧で増幅した攻撃魔法だ! 獣人族が防げるレベルの魔法じゃねえんだよっ! てめえ、どんな裏技を使いやがったんだ!」
「あり得るかあり得ないかはお前が決めることではない。しかし質問ばかりで煩わしいな。それなら一つ教えてやろう。お前の実力で特筆すべきところはその膂力のようだ。そして俺の長所を一つ挙げるとすれば……それは魔力だ。全ての獣人族が魔力が少ないというわけではないぞ。俺の母のように強大な魔力を持つ者もいる。その力を俺も受け継いでいるし、使い方も叩きこまれているからな。ここからは俺の攻撃を受けてもらおう」
レオーネは左手に魔力を集中する。そしてロンジンの方向にその手を向けた。
「ウィンドカッター!!」
レオーネの左手から風の刃が放出され、ロンジンを目がけて猛スピードで飛んでいく。その魔法に合わせて、レオーネは右手に槍を構えてロンジンに駆け寄る。
「くそっ!!」
ロンジンは攻撃魔法を躱すが、その風の刃の大きさと速さにより、左腕の一部が切り裂かれる。その瞬間にレオーネは槍を突き出した。一瞬にしてロンジンの左腕が吹き飛ぶ。
「ギエェ――!!」
そのあまりの激痛にロンジンが叫ぶ。それを見ていた観衆の多くが呆気にとられたように静寂したあと、あちらこちらで悲鳴のような声が聞こえる。
「これぐらいも避けられないのか。スピードには自信があったように見えたのだが」
レオーネとしては小手調べぐらいのつもりで攻撃を繰り出していた。
しかし、レオーネから放たれた風魔法のウィンドカッターは、デザートウルフ程度の魔物を軽く仕留める威力があり、ロンジンに駆け寄る際には風魔法の補助により移動速度が底上げされ、ミスリルで作られた槍には十分な魔力が込められていた。
攻撃をする過程でレオーネに身に付いている自然な動きがそのまま出ただけなのだが、この一連の動作による攻撃を躱すのは容易なことではなかった。
左腕を失ったロンジンであったが、すぐに手持ちのポーションを使い、止血と痛みの緩和を行っていた。
「き、貴様。よくも俺様の腕を……許さん……許さんぞ~!!!」
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そして少し俯いて、全身に力を漲らせると、レオーネを見つめて小さく呟いた。
「――聖獣化」
その瞬間、ロンジンはその姿を変えた。
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