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第4章 帝都アウシルバード編
53 若きレオーネ①
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「ここが帝都アウシルバードか! ボレアザントも大きい町だったけど、さすがに帝都は人が多いな。何と言ってもあそこに見える建物がすっごいね!」
僕とルシアとフライヤは満福亭をチェックアウトしたあと、ルシアが転移を使ってすぐに帝都に来ていた。
「ああ、あの建物が皇帝の住む皇宮だ。獣人族というのは見栄っ張りなところがあって、歴代の皇帝が増築を重ねてあんな大きな建物になってしまったと言われている。私も何度も行ったことがあるが、無駄な部屋だらけで本当に無駄の塊だよ」
フライヤが呆れた顔で説明してくれた。
「それじゃ、あそこにレオーネ=サンネイシス皇帝が住んでいるんだ! 授業で習った人物がすぐ近くにいると思うと何だか面白いね。もっとサンネイシス帝国のことをしっかり学んでおけばよかったな」
「なんだ、レンはサンネイシス帝国に興味があるのか? よかったら近くの店でお茶でも飲みながら、私が知ってる範囲でよければ帝国について説明しようか?」
「本当!? ぜひお願いするよ! せっかく修行の旅で違う国に来てるんだから、その国のことをもっと知りたくなるよね」
そうして通りを歩いていると落ち着いた感じのお店を見つけた。
僕たちはそこで飲み物を注文して、ゆったりとくつろぎながら色んな話をした。そこでフライヤが教えてくれた話はとても面白かった。
サンネイシス帝国は皇子や皇女が必ず皇帝になるわけではなく、皇太子に挑戦できる制度があるという実力主義の国である。現皇帝のレオーネ皇帝がまさに皇太子に挑戦する制度で新しい皇帝になったと、僕も学園の授業で習った。
しかしフライヤの話では、普通は皇帝の子どもが皇太子として選ばれ、そのまま皇帝になることがほとんどだそうだ。
皇太子に挑むのにも条件があって、帝国の上級貴族として有名な七獣家の当主の過半数が認めないと挑戦権が得られない。
つまり手を挙げれば誰でも皇太子に挑戦できるというわけではない。
挑戦権を得た場合は単純明快で、一対一の戦いに勝ったほうが皇帝となる。
レオーネ皇帝は、先代皇帝の妾の子どもだったそうだ。先代の皇帝と皇后の間には三男二女がいて、皇后が溺愛していた長男が皇太子となっていた。皇太子に相応しく恵まれた身体と圧倒的な膂力により、とてつもない強さを誇っていた。しかしその性格は尊大かつ横柄で、自分以外の全てを見下し、貴族に対しても平民のように扱う様は七獣家も持て余していた。
そこで白羽の矢が立てられたのが、当時、ハンターとして名を挙げていたレオーネだった。皇帝の子どもでありながらも、皇宮に住む側室とは異なり、皇帝が外で作った女性との子どもであったため、一応、皇子という身分は認められていたが皇宮に住むことは許されなかった。
当の本人はそんなことを気にすることもなく、10歳でハンター登録をしたあとは主に魔物の討伐クエストをこなして生計を立てていた。レオーネが19歳になるとき、先代の皇帝が皇太子に帝位を譲ることを宣言した。そのとき迅速に動いたのが七獣家の一つであるシュティール家。七獣家への根回しも済ませ、19歳でAランクハンターとなっていたレオーネに、皇太子に挑戦する話を持ちかけたのだ。
しかしレオーネには皇帝になりたいという気持ちはなく、シュティール家の使者が熱くなって説明する、皇帝になれば贅沢三昧とか、権力の頂点を掴めるといった提案に何の魅力も感じなかった。ただ興味を引いたのは、皇太子と一対一で戦えるということ。
そのときサンネイシス帝国で知らないものはいない、強さの象徴として語られる皇太子のロンジン。
10歳から戦いの中に身を置いてきたレオーネは、帝国最強と謳われる腹違いの兄に当たるロンジンの強さに興味があった。一体どれぐらい強いのか? ただその一点に。
そこでレオーネはシュティール家の使者に条件を出す。その話に乗ってやってもいい。しかし皇帝になった場合は皇帝の仕事などまるで分からぬから、全てそちらでこなすようにと。
その条件にシュティール家の使者は内心で喜びの声をあげた。もともと皇帝の座に着いたら暴走するのが目に見えているロンジンへの対抗策として祭り上げられたのがレオーネである。ロンジンの強さは疑いようがないが、Aランクハンターとして名を挙げているレオーネであれば勝ち目があると見込まれたのだ。仮に負けたとしても七獣家に影響が及ばない裏工作も当然用意してある。
使者は二つ返事で了承の旨を伝えた。こうしてレオーネとロンジンで皇位を争う舞台が整えられたのである。
皇帝が皇位の継承を宣言してから7日以内に異議を申し立てるものがいなければ、皇太子への皇位継承が確定する。今回もすんなりと皇位継承が行われると思われていた7日目の早朝。皇宮にレオーネが現れた。皇位継承に異議を申し立てるためだ。
申し立ては受理され、翌日には七獣家の審査が行われる。シュティール家が五つの家に根回しを済ませているため、事実上審査は終わっているようなものだが。
この異議申し立てに激怒しているものがいる。皇太子であるロンジンとその母である皇后のカミラだ。
「ふざけるんじゃねえ! あのレオーネが異議申し立てだと!? 貧乏くさい女が生んだ王族の恥晒しが俺様に挑戦するなんて有り得ねえんだよ!」
「そのとおりだわ! 皇帝陛下があんな子どもをお情けで皇子として認めるから、調子に乗ってしまったじゃないの!」
「七獣家のやつらは分かってるんだろうな。俺様だけが皇帝に相応しいんだ。審査なんてやること自体が間違ってるんだ」
「ええ。私からも七獣家に釘を刺しておくわ。本当に憎たらしいったらありゃしない」
サンネイシス帝国の歴史が大きく動き出そうとしていた。
僕とルシアとフライヤは満福亭をチェックアウトしたあと、ルシアが転移を使ってすぐに帝都に来ていた。
「ああ、あの建物が皇帝の住む皇宮だ。獣人族というのは見栄っ張りなところがあって、歴代の皇帝が増築を重ねてあんな大きな建物になってしまったと言われている。私も何度も行ったことがあるが、無駄な部屋だらけで本当に無駄の塊だよ」
フライヤが呆れた顔で説明してくれた。
「それじゃ、あそこにレオーネ=サンネイシス皇帝が住んでいるんだ! 授業で習った人物がすぐ近くにいると思うと何だか面白いね。もっとサンネイシス帝国のことをしっかり学んでおけばよかったな」
「なんだ、レンはサンネイシス帝国に興味があるのか? よかったら近くの店でお茶でも飲みながら、私が知ってる範囲でよければ帝国について説明しようか?」
「本当!? ぜひお願いするよ! せっかく修行の旅で違う国に来てるんだから、その国のことをもっと知りたくなるよね」
そうして通りを歩いていると落ち着いた感じのお店を見つけた。
僕たちはそこで飲み物を注文して、ゆったりとくつろぎながら色んな話をした。そこでフライヤが教えてくれた話はとても面白かった。
サンネイシス帝国は皇子や皇女が必ず皇帝になるわけではなく、皇太子に挑戦できる制度があるという実力主義の国である。現皇帝のレオーネ皇帝がまさに皇太子に挑戦する制度で新しい皇帝になったと、僕も学園の授業で習った。
しかしフライヤの話では、普通は皇帝の子どもが皇太子として選ばれ、そのまま皇帝になることがほとんどだそうだ。
皇太子に挑むのにも条件があって、帝国の上級貴族として有名な七獣家の当主の過半数が認めないと挑戦権が得られない。
つまり手を挙げれば誰でも皇太子に挑戦できるというわけではない。
挑戦権を得た場合は単純明快で、一対一の戦いに勝ったほうが皇帝となる。
レオーネ皇帝は、先代皇帝の妾の子どもだったそうだ。先代の皇帝と皇后の間には三男二女がいて、皇后が溺愛していた長男が皇太子となっていた。皇太子に相応しく恵まれた身体と圧倒的な膂力により、とてつもない強さを誇っていた。しかしその性格は尊大かつ横柄で、自分以外の全てを見下し、貴族に対しても平民のように扱う様は七獣家も持て余していた。
そこで白羽の矢が立てられたのが、当時、ハンターとして名を挙げていたレオーネだった。皇帝の子どもでありながらも、皇宮に住む側室とは異なり、皇帝が外で作った女性との子どもであったため、一応、皇子という身分は認められていたが皇宮に住むことは許されなかった。
当の本人はそんなことを気にすることもなく、10歳でハンター登録をしたあとは主に魔物の討伐クエストをこなして生計を立てていた。レオーネが19歳になるとき、先代の皇帝が皇太子に帝位を譲ることを宣言した。そのとき迅速に動いたのが七獣家の一つであるシュティール家。七獣家への根回しも済ませ、19歳でAランクハンターとなっていたレオーネに、皇太子に挑戦する話を持ちかけたのだ。
しかしレオーネには皇帝になりたいという気持ちはなく、シュティール家の使者が熱くなって説明する、皇帝になれば贅沢三昧とか、権力の頂点を掴めるといった提案に何の魅力も感じなかった。ただ興味を引いたのは、皇太子と一対一で戦えるということ。
そのときサンネイシス帝国で知らないものはいない、強さの象徴として語られる皇太子のロンジン。
10歳から戦いの中に身を置いてきたレオーネは、帝国最強と謳われる腹違いの兄に当たるロンジンの強さに興味があった。一体どれぐらい強いのか? ただその一点に。
そこでレオーネはシュティール家の使者に条件を出す。その話に乗ってやってもいい。しかし皇帝になった場合は皇帝の仕事などまるで分からぬから、全てそちらでこなすようにと。
その条件にシュティール家の使者は内心で喜びの声をあげた。もともと皇帝の座に着いたら暴走するのが目に見えているロンジンへの対抗策として祭り上げられたのがレオーネである。ロンジンの強さは疑いようがないが、Aランクハンターとして名を挙げているレオーネであれば勝ち目があると見込まれたのだ。仮に負けたとしても七獣家に影響が及ばない裏工作も当然用意してある。
使者は二つ返事で了承の旨を伝えた。こうしてレオーネとロンジンで皇位を争う舞台が整えられたのである。
皇帝が皇位の継承を宣言してから7日以内に異議を申し立てるものがいなければ、皇太子への皇位継承が確定する。今回もすんなりと皇位継承が行われると思われていた7日目の早朝。皇宮にレオーネが現れた。皇位継承に異議を申し立てるためだ。
申し立ては受理され、翌日には七獣家の審査が行われる。シュティール家が五つの家に根回しを済ませているため、事実上審査は終わっているようなものだが。
この異議申し立てに激怒しているものがいる。皇太子であるロンジンとその母である皇后のカミラだ。
「ふざけるんじゃねえ! あのレオーネが異議申し立てだと!? 貧乏くさい女が生んだ王族の恥晒しが俺様に挑戦するなんて有り得ねえんだよ!」
「そのとおりだわ! 皇帝陛下があんな子どもをお情けで皇子として認めるから、調子に乗ってしまったじゃないの!」
「七獣家のやつらは分かってるんだろうな。俺様だけが皇帝に相応しいんだ。審査なんてやること自体が間違ってるんだ」
「ええ。私からも七獣家に釘を刺しておくわ。本当に憎たらしいったらありゃしない」
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