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第3章 ハンターの町 ボレアザント編
52 レナールと仲間たち
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「ここが治療室だ」
ファンタールさんの案内で1階にある治療室にやってきた。
「これはファンタール様。いかがなされたのかのう?」
羊の獣人の男性が声をかけてきた。大分年配の人のようだ。
「ネイルか。カインズたちの具合はどうだ?」
横でフライヤが教えてくれたけど、ネイルさんは治療室の長で、治癒魔法のスペシャリストらしい。
「みんなワシの治癒魔法でほぼ治療が終わったところじゃよ。あと2~3日もすれば動けるようになる。カインズの義手作成はそれからじゃの。向こうの部屋に4人とも寝ておるぞ。レナールのやつがへばり付いておる」
「状況は分かった。お疲れだったな」
ファンタールさんとネイルさんのやりとりが終わって、治療室の奥にある部屋に向かった。
「おお! みんな戻ってたのか! パーティの仲間たちも無事に帰ってくることができた。本当にありがとうな」
そこにはベッドが4つ並べられており、レナールさんがちょうど部屋の真ん中に立っていた。
「レナールさん、みなさんの様子はどうですか?」
「さっき治療が終わってみんな寝ているところだ。クイーンサンドワームとの戦いから生きて戻ってこれたんだ。こんなに嬉しいことはないよ」
レナールさんが涙を浮かべて喜んでいる。
『レナールよ。確かに命が救われたことは喜ぶべきことだ。しかし我はお主から美味しい食事を案内してもらったことへの借りが返せておらぬ。そこでだ。その男の左腕を治療することで一つ借りを返させてもらいたい』
「左腕の治療って……。まさか欠損を治すって話じゃないよな? そんなことが出来るのはネイスエルの女王ぐらいしか噂を聞かないが」
『世の中は広いのだぞ。治療に秀でた者が世界に一人だけのはずがあるまい。まあ見ておれ』
ルシアはそういうと、カインズさんの側に行って、左腕が有ったところに魔力を集中した。
ルシアの魔力がどんどん流れていく。とてつもない魔力の量だ。それとともにカインズさんの左腕が……生えてきてる……?
『これで元通りだ』
カインズさんの腕はすっかり元通りに治ってた。いや、正確には元がどんな腕だったのかは知らないんだけど、きれいな左腕がそこにはあった。
「何てことだ……。ルシアさん! あんたって人は本当にとんでもない人だな! フライヤ様が敬ってるのが分かるよ!!」
「当たり前じゃないか。ルシア様はすごい方なんだぞ」
「食事の案内なんて大したことじゃない。それなのにあんたって人は……」
『我も誰にでも魔法を使うわけではないぞ。お主の案内してくれた料理には本当に満足したし、単純な話、お主のことを気に入ったのだ。それに今夜にはボレアザントを立つ予定だ。借りを返す場は今しかなかったからな』
「ボレアザントを出ていくのか!? 一体、どこに行くんだ?」
「私が帝都を案内することにした。ルシア様にはラムセティッド大陸に良い思い出をたくさん作ってもらいたいからな!」
「そうか。……俺はまだ仲間たちの側を離れるわけにはいかないから着いていけないが、帝都も素晴らしいところだ。フライヤ様の案内ならきっと楽しい思い出ができるさ」
「フフ。任せておけ!」
レナールさんと別れるのも名残惜しいけど、二度と会えなくなるわけじゃないし、僕が転移を使えるようになったらいつでも会いに来れるしね。
「レン、お前は強いがまだまだ子どもなんだ。無理はしないで周りの大人たちに頼るのも大事だぞ。そして修行の旅で色んな経験をするだろうが、無駄なことなんて一つもない。思いっきり楽しめよ!」
「はい! 旅でしかできない経験をたくさん味わってきます!」
僕たちは治療室をあとにして、ギルマスのファンタールさんの部屋に案内された。
「ルシア殿。カインズの腕の件は本当にビックリしたぞ! 治療室長のネイルの口があんぐりと開いていたのが面白かったがな。
私が知っている最高峰の治癒魔法の使い手がネイスエル女王国のエレノア女王。そしてSランクハンターの"神秘の癒し手"ことクレアレイン、また神聖国の巫女たちもかなりの腕前と聞く。
しかしルシア殿もその者たちに引けをとらない凄まじい魔法だった。Sランクハンターのフライヤさえも敬う力の一端を見ることが出来て感動したぞ」
「何を言ってるのだ、ファンタール。ルシア様のすごさはあんな程度で計れる代物じゃないぞ?」
「フハハハ! そうだろうな! Sランクハンターは化け物揃いだと言われているが、世の中には知られていない実力者がいるのだな。レン殿も少年とは思えない実力であるし」
ファンタールさんは豪快に笑って僕たちを見回すと、居住まいを正して話し始めた。
「わざわざ私の部屋まで来てもらったのは、先ほど帝都に行くという話をしていたからだ。明後日の午後、私も帝都のギルド支部に行かねばならない。そこで今回の特別表彰の内容が決定することになっているのだ。手間を取らせて悪いが明後日の夕方ごろに帝都の支部に来てもらえないだろうか」
え~っ。わざわざそこまでして特別表彰を受けるというのも気が引けるよね。
「ルシア殿は美食家なのであろう? 帝都の支部に来てもらえれば、私が帝都支部でしか食せないコース料理を用意させよう」
『特別表彰とやらは別に貰わなくともよいのだが、コース料理のために伺うとしよう』
だよね! そうなるよね! さすがギルドマスターだな。人の扱いがうまい。
僕たちはファンタールさんと話をしたあと、満福亭の部屋の片付けと精算を済ませて、フライヤと一緒に帝都へ出発した。
ファンタールさんの案内で1階にある治療室にやってきた。
「これはファンタール様。いかがなされたのかのう?」
羊の獣人の男性が声をかけてきた。大分年配の人のようだ。
「ネイルか。カインズたちの具合はどうだ?」
横でフライヤが教えてくれたけど、ネイルさんは治療室の長で、治癒魔法のスペシャリストらしい。
「みんなワシの治癒魔法でほぼ治療が終わったところじゃよ。あと2~3日もすれば動けるようになる。カインズの義手作成はそれからじゃの。向こうの部屋に4人とも寝ておるぞ。レナールのやつがへばり付いておる」
「状況は分かった。お疲れだったな」
ファンタールさんとネイルさんのやりとりが終わって、治療室の奥にある部屋に向かった。
「おお! みんな戻ってたのか! パーティの仲間たちも無事に帰ってくることができた。本当にありがとうな」
そこにはベッドが4つ並べられており、レナールさんがちょうど部屋の真ん中に立っていた。
「レナールさん、みなさんの様子はどうですか?」
「さっき治療が終わってみんな寝ているところだ。クイーンサンドワームとの戦いから生きて戻ってこれたんだ。こんなに嬉しいことはないよ」
レナールさんが涙を浮かべて喜んでいる。
『レナールよ。確かに命が救われたことは喜ぶべきことだ。しかし我はお主から美味しい食事を案内してもらったことへの借りが返せておらぬ。そこでだ。その男の左腕を治療することで一つ借りを返させてもらいたい』
「左腕の治療って……。まさか欠損を治すって話じゃないよな? そんなことが出来るのはネイスエルの女王ぐらいしか噂を聞かないが」
『世の中は広いのだぞ。治療に秀でた者が世界に一人だけのはずがあるまい。まあ見ておれ』
ルシアはそういうと、カインズさんの側に行って、左腕が有ったところに魔力を集中した。
ルシアの魔力がどんどん流れていく。とてつもない魔力の量だ。それとともにカインズさんの左腕が……生えてきてる……?
『これで元通りだ』
カインズさんの腕はすっかり元通りに治ってた。いや、正確には元がどんな腕だったのかは知らないんだけど、きれいな左腕がそこにはあった。
「何てことだ……。ルシアさん! あんたって人は本当にとんでもない人だな! フライヤ様が敬ってるのが分かるよ!!」
「当たり前じゃないか。ルシア様はすごい方なんだぞ」
「食事の案内なんて大したことじゃない。それなのにあんたって人は……」
『我も誰にでも魔法を使うわけではないぞ。お主の案内してくれた料理には本当に満足したし、単純な話、お主のことを気に入ったのだ。それに今夜にはボレアザントを立つ予定だ。借りを返す場は今しかなかったからな』
「ボレアザントを出ていくのか!? 一体、どこに行くんだ?」
「私が帝都を案内することにした。ルシア様にはラムセティッド大陸に良い思い出をたくさん作ってもらいたいからな!」
「そうか。……俺はまだ仲間たちの側を離れるわけにはいかないから着いていけないが、帝都も素晴らしいところだ。フライヤ様の案内ならきっと楽しい思い出ができるさ」
「フフ。任せておけ!」
レナールさんと別れるのも名残惜しいけど、二度と会えなくなるわけじゃないし、僕が転移を使えるようになったらいつでも会いに来れるしね。
「レン、お前は強いがまだまだ子どもなんだ。無理はしないで周りの大人たちに頼るのも大事だぞ。そして修行の旅で色んな経験をするだろうが、無駄なことなんて一つもない。思いっきり楽しめよ!」
「はい! 旅でしかできない経験をたくさん味わってきます!」
僕たちは治療室をあとにして、ギルマスのファンタールさんの部屋に案内された。
「ルシア殿。カインズの腕の件は本当にビックリしたぞ! 治療室長のネイルの口があんぐりと開いていたのが面白かったがな。
私が知っている最高峰の治癒魔法の使い手がネイスエル女王国のエレノア女王。そしてSランクハンターの"神秘の癒し手"ことクレアレイン、また神聖国の巫女たちもかなりの腕前と聞く。
しかしルシア殿もその者たちに引けをとらない凄まじい魔法だった。Sランクハンターのフライヤさえも敬う力の一端を見ることが出来て感動したぞ」
「何を言ってるのだ、ファンタール。ルシア様のすごさはあんな程度で計れる代物じゃないぞ?」
「フハハハ! そうだろうな! Sランクハンターは化け物揃いだと言われているが、世の中には知られていない実力者がいるのだな。レン殿も少年とは思えない実力であるし」
ファンタールさんは豪快に笑って僕たちを見回すと、居住まいを正して話し始めた。
「わざわざ私の部屋まで来てもらったのは、先ほど帝都に行くという話をしていたからだ。明後日の午後、私も帝都のギルド支部に行かねばならない。そこで今回の特別表彰の内容が決定することになっているのだ。手間を取らせて悪いが明後日の夕方ごろに帝都の支部に来てもらえないだろうか」
え~っ。わざわざそこまでして特別表彰を受けるというのも気が引けるよね。
「ルシア殿は美食家なのであろう? 帝都の支部に来てもらえれば、私が帝都支部でしか食せないコース料理を用意させよう」
『特別表彰とやらは別に貰わなくともよいのだが、コース料理のために伺うとしよう』
だよね! そうなるよね! さすがギルドマスターだな。人の扱いがうまい。
僕たちはファンタールさんと話をしたあと、満福亭の部屋の片付けと精算を済ませて、フライヤと一緒に帝都へ出発した。
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