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第3章 ハンターの町 ボレアザント編
51 ボレアザントのギルドマスター
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「ハンターをしている理由ですか? ルシア様もご存知の通り私も大龍穴の管理をしていたのですが、リーフの補佐がどんどん上手になりまして私の手伝いが必要なくなってしまったのです。リーフのやつはむしろ私が手伝わない方がいいとか言い出す始末で……。
そこでヴァン様から「フライヤはラムセティッド大陸各地を見て周り何か異常があったら報告せよ。また旨そうな酒を見つけたら教えよ」と指示がありまして」
『それはあとの方の指示を実行させるために各地を周らせてる気がするな……』
「情報を集めるために効果的な方法を考えたところ、人族の生活に入り込んで集めたほうが良いという結論に至り、ハンターになってみたというわけです。ヴァン様はフラッと色んな町に顔を出される方ですが、ヴァン様の眷属と分かると動きにくくなるので、そのことは伏せています。その代わりSランクハンターとしてヴァン様とコンタクトが取れるということにしております」
ヴァン様って色んな町に行くんだ! そりゃレナールさんたちの会話の中に普通に登場するわけだよ。
『ふむ。情報収集とハンターは組み合わせがよいからな。なるほど。酒好きな2人の間ではバッチリな役割分担ができたということか』
「はは……そう言われてしまうと身も蓋もないのですが、大陸各地の美味しいお酒を探すのにハンターというのは最適でしたね」
なるほど。要はリーフさんが大龍穴管理の補佐として残り、フライヤが大陸の異常監視を兼ねたお酒探しをしてるんだね。
「ところでルシア様は何の御用で来られたのですか? ヴァン様からは何も聞いておりませんので。レンの修行のために来られたのですか?」
『ふむ。レンの修行もあるが、人間界の大龍穴を全て回っておるのだ。まずはフレアのところに行って、次はヴァンのところを見てきた。きちんと管理されており安心したぞ。あとは我の趣味であるグルメの旅だ。レナールにボレアザントを案内してもらったが全て大満足だぞ。あやつは素晴らしいグルメだな』
「そんなに満足されたのなら嬉しい限りです。レナールは見どころのあるハンターですが、グルメの方面でも活躍できるとは思いませんでした。ところで帝都には行かれてないのですか?」
『帝都には行っていないな。ボレアザントだけでも十分に満足しておるぞ』
「ボレアザントも良いのですが、帝都に一か所おすすめの場所があるのです。そこは料理も美味しいですし、お酒のラインナップが素晴らしいです。今晩の予定が決まってないのでしたら、そこで夕食はいかがです?」
『分かった。行こう』
ルシアは食事のことになると相変わらずの即決だな。
僕たちはランチを食べながら談笑していると、コンコンコンとフライヤの個室のドアがノックされた。
「ファンタールだ。フライヤ、戻ってきてるんだろう? 入るぞ」
フライヤが僕たちに視線を向けると、僕とルシアは軽く頷いた。
「どうぞ、入ってくれ」
ドアが開いて入ってきたのは、象の獣人の女性だった。すごく強そうな雰囲気が漂っている。
「そちらの二人がルシア殿とレン殿だな。私はここのギルドマスターをしているファンタールという。先ほどレナールから報告を受けた。フライヤとともにボレアザントを守ってくれたとのこと。ギルドを代表してお礼を言わせてくれ。本当にありがとう」
ファンタールさんは僕たちにお礼を述べると、深々と頭を下げた。
「止めてくれ、ファンタール。別にお礼を言われるようなことはしていない。たまたまクイーンサンドワームと遭遇したから退治しただけだ」
「その辺の魔物を倒した感覚で言ってくれるが、普通は倒せない災害級の魔物なんだぞ。Sランクと話してると調子がくるうよ」
「お前もあのクイーンサンドワームぐらいなら倒せてるよ。まだ生まれたばかりの子どもという感じだったからな。大きくなる前だったから楽に倒せたよ」
あれ、子どもだったの? 全長200mはあったのに。あれで大きくなる前とか、どんだけ巨大な魔物なんだよ……
「ルシア殿とレン殿の活躍も聞いている。今回、2人にはギルドから特別表彰を予定している。決定したらあらためて伝えさせてもらう」
僕たちに特別表彰!?
やっぱりクイーンサンドワームを倒すってことはすごいことなんだよね。フライヤは簡単そうに倒したけど、僕の次元断では倒せなかったもんな。
そうだ。レナールさんが帰ってきたと言ってたな。聞きたいことがあるぞ。
「はじめまして。レンと言います。レナールさんから報告を受けたと言われてましたが、レナールさんの仲間の方は無事に戻って来られたのですか?」
「ああ。リゲルという副リーダーが帰ってきて一通りの報告があったぞ。今は全員ギルドで治療を受けている。数日で回復すると思うが、一人は左腕を欠損しているから義手を作るしかないな。しかし、全員無事に帰って来れたのもお前たちのおかげだ。全員感謝していたぞ」
「そうなんですね。みなさん、命に別条はなかったのならひとまず安心しました」
左腕を失くしたカインズさんという人が一番重傷のように見えたけど、他の人たちも決して軽い怪我じゃなかったからな。ひとまず安心できたよ。
『今、レナールはどこにおるのだ?』
ルシアがファンタールさんに尋ねる。
「今は仲間たちのところにいるはずだが」
『そこまで案内してくれぬか?』
「それは構わないが……」
ルシアはその返事を聞くとすぐにフライヤの部屋を出ていった。
ファンタールさんを先頭に、僕とフライヤはルシアを追いかけた。
そこでヴァン様から「フライヤはラムセティッド大陸各地を見て周り何か異常があったら報告せよ。また旨そうな酒を見つけたら教えよ」と指示がありまして」
『それはあとの方の指示を実行させるために各地を周らせてる気がするな……』
「情報を集めるために効果的な方法を考えたところ、人族の生活に入り込んで集めたほうが良いという結論に至り、ハンターになってみたというわけです。ヴァン様はフラッと色んな町に顔を出される方ですが、ヴァン様の眷属と分かると動きにくくなるので、そのことは伏せています。その代わりSランクハンターとしてヴァン様とコンタクトが取れるということにしております」
ヴァン様って色んな町に行くんだ! そりゃレナールさんたちの会話の中に普通に登場するわけだよ。
『ふむ。情報収集とハンターは組み合わせがよいからな。なるほど。酒好きな2人の間ではバッチリな役割分担ができたということか』
「はは……そう言われてしまうと身も蓋もないのですが、大陸各地の美味しいお酒を探すのにハンターというのは最適でしたね」
なるほど。要はリーフさんが大龍穴管理の補佐として残り、フライヤが大陸の異常監視を兼ねたお酒探しをしてるんだね。
「ところでルシア様は何の御用で来られたのですか? ヴァン様からは何も聞いておりませんので。レンの修行のために来られたのですか?」
『ふむ。レンの修行もあるが、人間界の大龍穴を全て回っておるのだ。まずはフレアのところに行って、次はヴァンのところを見てきた。きちんと管理されており安心したぞ。あとは我の趣味であるグルメの旅だ。レナールにボレアザントを案内してもらったが全て大満足だぞ。あやつは素晴らしいグルメだな』
「そんなに満足されたのなら嬉しい限りです。レナールは見どころのあるハンターですが、グルメの方面でも活躍できるとは思いませんでした。ところで帝都には行かれてないのですか?」
『帝都には行っていないな。ボレアザントだけでも十分に満足しておるぞ』
「ボレアザントも良いのですが、帝都に一か所おすすめの場所があるのです。そこは料理も美味しいですし、お酒のラインナップが素晴らしいです。今晩の予定が決まってないのでしたら、そこで夕食はいかがです?」
『分かった。行こう』
ルシアは食事のことになると相変わらずの即決だな。
僕たちはランチを食べながら談笑していると、コンコンコンとフライヤの個室のドアがノックされた。
「ファンタールだ。フライヤ、戻ってきてるんだろう? 入るぞ」
フライヤが僕たちに視線を向けると、僕とルシアは軽く頷いた。
「どうぞ、入ってくれ」
ドアが開いて入ってきたのは、象の獣人の女性だった。すごく強そうな雰囲気が漂っている。
「そちらの二人がルシア殿とレン殿だな。私はここのギルドマスターをしているファンタールという。先ほどレナールから報告を受けた。フライヤとともにボレアザントを守ってくれたとのこと。ギルドを代表してお礼を言わせてくれ。本当にありがとう」
ファンタールさんは僕たちにお礼を述べると、深々と頭を下げた。
「止めてくれ、ファンタール。別にお礼を言われるようなことはしていない。たまたまクイーンサンドワームと遭遇したから退治しただけだ」
「その辺の魔物を倒した感覚で言ってくれるが、普通は倒せない災害級の魔物なんだぞ。Sランクと話してると調子がくるうよ」
「お前もあのクイーンサンドワームぐらいなら倒せてるよ。まだ生まれたばかりの子どもという感じだったからな。大きくなる前だったから楽に倒せたよ」
あれ、子どもだったの? 全長200mはあったのに。あれで大きくなる前とか、どんだけ巨大な魔物なんだよ……
「ルシア殿とレン殿の活躍も聞いている。今回、2人にはギルドから特別表彰を予定している。決定したらあらためて伝えさせてもらう」
僕たちに特別表彰!?
やっぱりクイーンサンドワームを倒すってことはすごいことなんだよね。フライヤは簡単そうに倒したけど、僕の次元断では倒せなかったもんな。
そうだ。レナールさんが帰ってきたと言ってたな。聞きたいことがあるぞ。
「はじめまして。レンと言います。レナールさんから報告を受けたと言われてましたが、レナールさんの仲間の方は無事に戻って来られたのですか?」
「ああ。リゲルという副リーダーが帰ってきて一通りの報告があったぞ。今は全員ギルドで治療を受けている。数日で回復すると思うが、一人は左腕を欠損しているから義手を作るしかないな。しかし、全員無事に帰って来れたのもお前たちのおかげだ。全員感謝していたぞ」
「そうなんですね。みなさん、命に別条はなかったのならひとまず安心しました」
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『今、レナールはどこにおるのだ?』
ルシアがファンタールさんに尋ねる。
「今は仲間たちのところにいるはずだが」
『そこまで案内してくれぬか?』
「それは構わないが……」
ルシアはその返事を聞くとすぐにフライヤの部屋を出ていった。
ファンタールさんを先頭に、僕とフライヤはルシアを追いかけた。
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