教え上手な龍のおかげでとんでもないことになりました

明日真 亮

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第3章 ハンターの町 ボレアザント編

40 ハンター登録

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「僕は登録してもいいんじゃないかと思うけど、ルシアはどう思う?」
『我はお主がいいのならそれで構わんぞ』

 ルシアは悩む素振りもなくすぐに返事が返ってきた。

「そうしたらレナールさん、推薦人になってもらいたいのですが、推薦人になるとご迷惑をおかけするようなことはないでしょうか」
「カカッ! そういった心配は必要無いぜ。なんだかんだ言ってもハンターの仕事は危険なものが多いからな。誰でも簡単に登録できたらまずいから、形式上制限しているっていうだけだ。登録したあとは自己責任の世界だから、全て自分次第っていうわけだ」
「それならよかったです。あらためて推薦人をお願いできますか」
「おう! 分かったぜ。ミナ、ハンター登録の手続きを済ませてくれ」
「分かりました」

 ミナさんが僕たちの前に用紙を差し出してきた。

「こちらにお名前と年齢、職種の欄は剣士とか魔法使いとか、ご自分のスタイルをお書きください。ちなみに名前は本名じゃなくて結構ですよ。愛称でも何でも構いません。貴族の方が登録されるときは偽名にされることがほとんどですし」

 何か見事に僕のことを言われてる気がする。ミナさんって心を読んだりしてないよね……

「それとパーティー登録はなさいますか? パーティーとは2人以上で活動する場合に登録することができます。主なメリットはパーティー専用のクエストを受注できたり、パーティーで攻略した実績が個人のランクにも反映されます。特にデメリットはありません」
「それならお願いしようかな」
「そうしましたらお二人のパーティ名をお決めください。こちらも何でも構いません」
『グルメの深淵で頼む』

 えっ? パーティ名にグルメを入れちゃうの? しかも即答だし。

「ルシア、そんな簡単にパーティ名を決めていいの?」
『我とお主がハンターとして活動するならグルメのためでしかなかろう。グルメの奥深さを表したパーティ名こそ相応しい』

 ……まあ、何でもいいけどさ。

「はい。それでは登録用紙を確かに受領しました。これでハンター登録は完了です。早速ですがハンター証をお渡しします」

 ミナさん、めちゃくちゃ手際がいいな。というか、ハンター登録する前提で準備してたんだろうな。

「このネックレスがハンター証です。こちらのプレート部分にランクが記載されています。右手をこちらのボードに置いていただけますか」

 ネックレスが置かれているボードに手を置く。

「これでハンター証に情報が登録されました。お名前などの個人情報や達成したクエストなどの情報も登録されていきます。それではレンさん、ルシアさん、これからよろしくお願いします」

 無事にハンター登録が終わった。僕の名前なんだけど、さすがに本名は使いたくなかったからレンで登録したんだよね。

「これでハンター仲間だな! あらためてよろしく頼むぜ。それじゃあ早速、素材引取所に行くとしよう」

 僕たちはレナールさんの案内で素材引取所に向かった。そこは天井が高くとても広い空間で、力自慢みたいな人たちが大勢働いていた。

「あっちにいるやつのところがおすすめだ。お~い! ライナス! 素材の引き取りを頼むぜ」

 レナールさんが声をかけると身長が2m以上はありそうな巨体の男性が振り返る。

「おう! レナールじゃないか! また良い素材を見つけてきたのか?」
「違う違う。今日は俺じゃねえ。こっちの二人が素材を引き取って欲しいんだとよ」

 レナールさんと話している巨体の男性は犀の獣人みたいだ。それにしても見事な体躯だな。戦ってもすごく強そうな気がする。

「はじめまして。レンと言います。素材を引き取ってもらいたいのですが、どこに置けばいいですか?」
「どこに? どういうことだ? そこの台の上に置いてもらえばいいが、素材はどこにあるんだ?」
「う~ん。その台の上じゃ狭いと思います。もう少し広い場所に置かせてもらえませんか?」
「そうだった! ライナスが疑問に思うのも仕方ないが、収納魔法の魔道具にたくさんの素材があるんだとよ。ライナスの後ろのスペースに置いてもいいか?」
「収納魔法の魔道具!? それはまた珍しいものを。おう! 俺の後ろのスペースに置いてくんな」

 ライナスさんの後ろには床に広いスペースが空いている。ここなら大丈夫かな。

「それじゃどんどん置いていきますね」

 僕はバッグに手を入れて、収納空間から素材を次から次に取り出して、床に並べた。あれだけ広かった床のスペースが完全に埋まってしまった。レナールさんとライナスさんが目を大きく開いて見合わせている。

「「なんだこりゃ~!!」」

「おいレナール!! これはどうなってんだ? あの魔道具とんでもない性能だぞ! というかレンと言ったな! これまさかお前が仕留めたのか?」
「えっ! そうですけど……」
「サンドワームの素材まであるんだぞ!! しかも鋭利な刃物かなんかでとてもきれいに仕留められてるやつが! Bランクのパーティでもこんなものを持ってくるのは中々無いんだぞ? お前まさかBランク……いやもしかしてAランクなのか?」
「いえ、さきほど登録したばかりのFランクです」
「はっ?」
「カカカカカッ!! あまりのすごさに笑いしか出てこねえや。やっぱり俺の見立ては正しかったんだな。二人とも只者じゃない雰囲気が出まくってたからな。それでお兄さんの方も素材がたっぷりあるのかい?」
『我も同じぐらいはあるな。しかし、美味しい食事ができる程度に換金できればよいから我の分の素材の引き取りはまたの機会にするとしようか』
「いや、美味しい食事の分だけでいいって……。この床の分だけでもとんでもない金額になるぞ……」

 ライナスさんが呆れたように呟いている。ちなみに僕の収納空間にはまだ素材が入ってるんだけど、スペースが埋まったから途中で止めたんだけどね。
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