教え上手な龍のおかげでとんでもないことになりました

明日真 亮

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第2章 風の大龍穴編

29 龍脈と龍穴

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 ラムセト砂漠を移動しはじめてから6日目の朝。僕たちはいつもと同じように砂漠を走っていた。
 昼過ぎに小さなオアシスを通りかかったから、そこで少し休憩を取ることにした。ちなみにここまでくるのにデザートウルフとデザートゴブリンと黒い蠍と戦ったんだけどね。
 僕も探知魔法を使ってるから、魔物がいるのは分かってるんだけど、実戦こそが最良の修行というのがルシアの方針だから、魔物と戦いながら移動をしてるんだよね。

 それにしてもこのオアシスは小さいけどとても気持ちがいい。僕たち以外に休憩している人はいないみたいだし、リラックスして休めるな。
 僕たちは昼食にルシアが収納空間から取り出した冷たいスープに入った麺を食べてる。これもめちゃくちゃ美味しいな。暑いところで冷たい麺は最高だね!

 ……あれ? ルシアが真剣な表情で地面を触ってるぞ。 何かあるのかな?

「何か気になることでもあったの?」
『ふむ。このオアシスは龍脈が2本重なった小さな龍穴となっておるな』
「龍脈が重なった龍穴? ……そういえば、ルシアは大龍穴を回るのが目的だと言ってたけど、そもそも龍穴ってなんなの?」
『そうか。お主には龍穴について教えていなかったな。丁度よい、説明しておこう。
 お主たちが住む人間界にはとてつもないエネルギーが存在している。自然エネルギーと呼ばれるものだ。そのエネルギーは”龍脈”という河のようなものを流れており、人間界を満遍なく循環しておる。そのエネルギーのおかげで木々も育つし、生命も誕生する。その一方で火山の噴火や竜巻などの災害をもたらすこともある。創造と破壊の両方の力を内包しておるのだ。
 そしてその龍脈が重なる場所を”龍穴”という。つまり龍穴と呼ばれる場所は自然エネルギーに満ちておるから、自ずと肥沃な土地になることが多い。このオアシスに関しては、最近、龍脈が重なるようになったのであろう。この状態が続けば大きなオアシスへと変貌するだろうな』
「なるほど。自然エネルギーが流れるところが龍脈、その龍脈が重なる場所を龍穴と言うんだね。最近重なったって説明したということは、龍脈はずっと同じ場所にあるわけじゃないってこと?」
『そうだ。龍脈は永久に同じ場所にあるとは限らない。何らかの要因で移動することもあるのだ。とは言ってもポンポンと移動することもないから、この場所も当分の間は龍穴の状態が続くと思うぞ』
「そうなんだね。そうしたら大龍穴というのは龍脈がたくさん重なった場所ってことかな?」
『その通りだ。人間界には膨大な自然エネルギーが集まる大龍穴が5か所存在している。一つはお主も知っておるフレアボロスがいる火山だ。そして今向かっているラムセト砂漠の中央には風の大龍穴があり、他の3つの大陸にも1か所ずつ大龍穴がある』
「五大陸にそれぞれ大龍穴があるんだね! ということは大龍穴巡りは全ての大陸に行けるのか~。すごく楽しみになってきたよ!

 ――あれ? 探知魔法に大きな点が表示された……。こっちに近づいて来てる!」

『そのようだな。この感じから言って、今までの魔物とは比べものにならない強敵のようだ。レアンデルよ。オアシスから少し離れたところで待ち構えるぞ』
「分かった。それにしてもこんな大きな点で表示される魔物ってどんな相手だろう。ドキドキするな」

 移動中に探知魔法を使うようになってから、色々なことが分かるようになった。
 探知魔法の対象を魔力を持ってる生物にしてるのは以前と同じだ。これで魔物もしくは魔力を持った人間が近づいて来たら気づくことができる。
 対象は丸い点で表示されて、その数も分かるようになってる。ちなみに今、表示されている数は【1】だ。ルシアも魔力を持ってるけど、僕が仲間と認識してるから表示されていない。
 あとは丸い点の大きさが魔力量の大きさを表している。
 今、表示されている魔物は今まで見たことがない大きさの丸い点だから、多くの魔力を持った強い魔物だと予想できるわけだ。



 僕たちはオアシスの東側に移動して、その魔物を待ち構えた。

『来るぞ』

 ルシアの声とともに砂が隆起しているのが視界に入った。魔物は砂の中を移動してきているようだ。

 砂が盛り上がりながら、どんどん近づいてくる。僕たちまでの距離が15mぐらいになった瞬間、大量の砂が地面から天へと昇っていくように見えた。

「なにあの魔物! めちゃくちゃ大きいよ!?」

 目の前に現れたのは20m以上もあるミミズの化け物みたいな魔物だった。
 砂の中に埋まっている身体も含めると、見えている身体の倍以上の大きさかも知れない。

『これはまた、見事に成長したサンドワームだな。なかなか厄介そうな相手だ』

 そう言うとルシアはいつものように空中に浮かんで見学スタイルに入った。

 ふう。これは強敵に間違いないな。魔力も多いし、今まで砂漠で戦ったどの魔物よりも威圧感がすごい。
 僕は目の前のサンドワームを見つめながら、戦いのイメージを固めていた。
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