25 / 131
第2章 風の大龍穴編
24 デザートウルフの群れ
しおりを挟む
僕はあっという間にデザートウルフの群れに取り囲まれてしまった。探知魔法を見てみると、たくさんの丸い点の横に【22】の表示がある。
デザートウルフを数えてみると……22匹いる! これは便利だね。――と言ってる場合ではないようだ。
『デザートウルフの厄介なところは群れで行動し連携を取るところだ。砂漠のハンターと言われるほど、賢い連携で攻撃してくる』
「砂漠のハンターね。そんな異名まであったんだ」
『知識は武器だ。お主も貪欲に集めるのだぞ。さて、新しく手に入れた剣とマントも試したことだし、これからは魔法も解禁だ。火魔法による攻撃も使いながら、デザートウルフの群れを殲滅してみよ』
「魔法も使っていいんだね! よかった。剣だけじゃキツイと思ってたよ。試したいこともあるし早速行くよ!」
『我は空中から応援しておるぞ』
ルシアは再び空中に浮いて観戦を始めた。
まずはデザートウルフに火魔法がどれぐらい効くのか試さなくちゃ。僕は密度が薄くて大きさに重点を置いた球形の魔力を放出して、デザートウルフが集まっているところを狙う。
「行け! ファイアーボール!!」
ファイアーボールはデザートウルフの群れを目がけて一直線に飛んでいき、砂の地面にぶつかると同時に燃え上がった。
よし! 10匹ぐらいを巻き込んでやったぞ。……なるほどね。これぐらいじゃ致命傷は与えられないんだな。
デザートウルフの方を見ると、怪我や火傷はしているものの、まだ動ける状態のデザートウルフが唸りをあげている。
それならこれを試そう。僕は右手に魔力を集中してファイアーボールを発動。10個の火の球を宙に浮かべる。密度を高めた野球ボールサイズのファイアーボールだ。そのまま怪我をしたデザートウルフを目がけて一斉に飛ばす。
猛スピードで放たれたファイアーボールは全て見事に命中! 急所を狙っては見たけれど仕留めたのは7匹だな。
『ほう。上手い攻め方だな。狙いも正確で良かったぞ』
空中からルシアが褒めてる。嬉しいけど、喜んでる場合じゃない。
さっき仕留め損なった3匹と僕を取り囲んでいる12匹がファイアーボールの打ち終わりを狙って次々と襲ってきた。
僕は攻撃を躱しながら剣を振る。しかし15匹の同時攻撃は簡単には捌けない。
「これだけの数で連携をとられると流石に危ないな……」
僕は一旦、距離を取るために魔力を足に集中させて後方へと下がった。
僕の正面には15匹のデザートウルフが今にも襲いかかろうと態勢を低く構えている。
「オーーンッ!」
1匹のデザートウルフが吠えると同時に襲い掛かってきた。それを合図に残りの全てが跳躍して飛びかかってくる。
僕は以前父上から教わった魔法を使う。目の前に高くて広い四角い魔力を放出して、
「ファイアーウォール!!」
すると炎で出来た壁が出現。父上から習った攻防一体の火魔法だ。次々と飛び掛かってくるデザートウルフはファイアウォールの炎に突っ込んで焼かれている。
その中には火の壁を突き破ってくるやつもいたけど、ルシアから言われたとおり魔力の流れを見ているから、どこから来るかは一目瞭然。
壁を突き破ってくるものはミスリルの剣で一刀両断にして、全てのデザートウルフを仕留めることができた。
探知魔法の映像を見ると丸い点が消えていて、数字の表示も【0】になっていた。
『レアンデル、見事であったな』
ルシアがふわりと空中から降りてきた。
『魔法の使い方も効果的だったし、魔力の流れを見ながら落ち着いて戦うこともできていた。色々と試しながらの戦いではあったが、見事にはまっていたな。成功も失敗も次に活かすことが大事なのだ。全ての経験を糧にしていくのだぞ』
「うん。すごく勉強になったよ」
『少し休憩をしたらあらためてオアシスに向かうぞ。その前に魔物についてもう一つ教えておこう』
「お願いします!」
『魔物が普通の動物と違うところは魔力を使えるということだ。そしてその魔力が固まり結晶化した”魔石”というものを持っている。魔石とは何に使うか知っておるか?』
「確か魔法の道具に使われているんだよね」
『そうだ。室内を照らしたり、物を冷やしたり、色んな効果を持つ魔道具があるが、そのエネルギー源には魔石を使っておる。つまり魔物を倒したあとに得られる魔石は高値で売れるということだ』
「魔石を売るの?」
『お主はランバートから100万ゴルドという大金を与えられたと思うが、お金は使うと減るのだぞ? 武器を揃えるのも、美味しいものを食べるのもお金は必要だ。稼げるときに稼いでおかないと旅はできないぞ?』
「それはもちろんそうだね。でも魔石を売るなんて思いつかなかったんだよ」
『魔石だけではないぞ。デザートウルフならば毛皮も貴重な素材の一つだ。こういったものも高く売れる。もちろん傷が無いものほど高値が付くから、お主が火魔法で仕留めたやつは素材の回収という意味では駄目な倒し方というわけだ』
「なるほど。そこまで考えて戦ってなかったね」
『それはよい。我も初実戦から素材回収まで求めるつもりは無かった。しかしそういうところまで意識して戦う場面も出てくる。知識として知っておくのだな」
「分かった」
『それでは少しだけ休憩したら魔石を回収してオアシスに向かうぞ。魔石は魔物の心臓部にある。上手く取れよ』
「えっ! 僕が取るの?」
『当たり前ではないか。お主が仕留めたのだし、お主の修行なのだぞ? 獲物の解体も大事な経験だ。1匹だけでいいから毛皮も回収するように。本来は解体用のナイフでもあれば良いのだが、ミスリルの剣で代用せよ。残りのものは我に任せよ』
「わ、分かったよ」
僕はルシアに教えてもらいながらデザートウルフの解体作業を終えた。結果から言えば、ルシアに解体の才能があるんじゃないか? と言われるぐらい上手いことできたんだけど、解体の才能ってあった方がいいのかな? 無いよりいいよね。
デザートウルフを数えてみると……22匹いる! これは便利だね。――と言ってる場合ではないようだ。
『デザートウルフの厄介なところは群れで行動し連携を取るところだ。砂漠のハンターと言われるほど、賢い連携で攻撃してくる』
「砂漠のハンターね。そんな異名まであったんだ」
『知識は武器だ。お主も貪欲に集めるのだぞ。さて、新しく手に入れた剣とマントも試したことだし、これからは魔法も解禁だ。火魔法による攻撃も使いながら、デザートウルフの群れを殲滅してみよ』
「魔法も使っていいんだね! よかった。剣だけじゃキツイと思ってたよ。試したいこともあるし早速行くよ!」
『我は空中から応援しておるぞ』
ルシアは再び空中に浮いて観戦を始めた。
まずはデザートウルフに火魔法がどれぐらい効くのか試さなくちゃ。僕は密度が薄くて大きさに重点を置いた球形の魔力を放出して、デザートウルフが集まっているところを狙う。
「行け! ファイアーボール!!」
ファイアーボールはデザートウルフの群れを目がけて一直線に飛んでいき、砂の地面にぶつかると同時に燃え上がった。
よし! 10匹ぐらいを巻き込んでやったぞ。……なるほどね。これぐらいじゃ致命傷は与えられないんだな。
デザートウルフの方を見ると、怪我や火傷はしているものの、まだ動ける状態のデザートウルフが唸りをあげている。
それならこれを試そう。僕は右手に魔力を集中してファイアーボールを発動。10個の火の球を宙に浮かべる。密度を高めた野球ボールサイズのファイアーボールだ。そのまま怪我をしたデザートウルフを目がけて一斉に飛ばす。
猛スピードで放たれたファイアーボールは全て見事に命中! 急所を狙っては見たけれど仕留めたのは7匹だな。
『ほう。上手い攻め方だな。狙いも正確で良かったぞ』
空中からルシアが褒めてる。嬉しいけど、喜んでる場合じゃない。
さっき仕留め損なった3匹と僕を取り囲んでいる12匹がファイアーボールの打ち終わりを狙って次々と襲ってきた。
僕は攻撃を躱しながら剣を振る。しかし15匹の同時攻撃は簡単には捌けない。
「これだけの数で連携をとられると流石に危ないな……」
僕は一旦、距離を取るために魔力を足に集中させて後方へと下がった。
僕の正面には15匹のデザートウルフが今にも襲いかかろうと態勢を低く構えている。
「オーーンッ!」
1匹のデザートウルフが吠えると同時に襲い掛かってきた。それを合図に残りの全てが跳躍して飛びかかってくる。
僕は以前父上から教わった魔法を使う。目の前に高くて広い四角い魔力を放出して、
「ファイアーウォール!!」
すると炎で出来た壁が出現。父上から習った攻防一体の火魔法だ。次々と飛び掛かってくるデザートウルフはファイアウォールの炎に突っ込んで焼かれている。
その中には火の壁を突き破ってくるやつもいたけど、ルシアから言われたとおり魔力の流れを見ているから、どこから来るかは一目瞭然。
壁を突き破ってくるものはミスリルの剣で一刀両断にして、全てのデザートウルフを仕留めることができた。
探知魔法の映像を見ると丸い点が消えていて、数字の表示も【0】になっていた。
『レアンデル、見事であったな』
ルシアがふわりと空中から降りてきた。
『魔法の使い方も効果的だったし、魔力の流れを見ながら落ち着いて戦うこともできていた。色々と試しながらの戦いではあったが、見事にはまっていたな。成功も失敗も次に活かすことが大事なのだ。全ての経験を糧にしていくのだぞ』
「うん。すごく勉強になったよ」
『少し休憩をしたらあらためてオアシスに向かうぞ。その前に魔物についてもう一つ教えておこう』
「お願いします!」
『魔物が普通の動物と違うところは魔力を使えるということだ。そしてその魔力が固まり結晶化した”魔石”というものを持っている。魔石とは何に使うか知っておるか?』
「確か魔法の道具に使われているんだよね」
『そうだ。室内を照らしたり、物を冷やしたり、色んな効果を持つ魔道具があるが、そのエネルギー源には魔石を使っておる。つまり魔物を倒したあとに得られる魔石は高値で売れるということだ』
「魔石を売るの?」
『お主はランバートから100万ゴルドという大金を与えられたと思うが、お金は使うと減るのだぞ? 武器を揃えるのも、美味しいものを食べるのもお金は必要だ。稼げるときに稼いでおかないと旅はできないぞ?』
「それはもちろんそうだね。でも魔石を売るなんて思いつかなかったんだよ」
『魔石だけではないぞ。デザートウルフならば毛皮も貴重な素材の一つだ。こういったものも高く売れる。もちろん傷が無いものほど高値が付くから、お主が火魔法で仕留めたやつは素材の回収という意味では駄目な倒し方というわけだ』
「なるほど。そこまで考えて戦ってなかったね」
『それはよい。我も初実戦から素材回収まで求めるつもりは無かった。しかしそういうところまで意識して戦う場面も出てくる。知識として知っておくのだな」
「分かった」
『それでは少しだけ休憩したら魔石を回収してオアシスに向かうぞ。魔石は魔物の心臓部にある。上手く取れよ』
「えっ! 僕が取るの?」
『当たり前ではないか。お主が仕留めたのだし、お主の修行なのだぞ? 獲物の解体も大事な経験だ。1匹だけでいいから毛皮も回収するように。本来は解体用のナイフでもあれば良いのだが、ミスリルの剣で代用せよ。残りのものは我に任せよ』
「わ、分かったよ」
僕はルシアに教えてもらいながらデザートウルフの解体作業を終えた。結果から言えば、ルシアに解体の才能があるんじゃないか? と言われるぐらい上手いことできたんだけど、解体の才能ってあった方がいいのかな? 無いよりいいよね。
0
お気に入りに追加
1,492
あなたにおすすめの小説

終了し強制力の無くなった乙女ゲームの世界の悪役令嬢のその後…
クロノス
恋愛
私はよくある異世界に転生した元日本人で社会人だった。仕事の帰り道によくあるトラック事故にて呆気なく死んでしまった/(-_-)\
まさかの転生先が前世で何度もプレーする程大好きだった乙女ゲームの中の悪役令嬢になっていた。
私の前世の推しである悪役令嬢になるなんて~
攻略対象者?ヒロイン?知りません!
って思ってたらヒロインめちゃくちゃウザイし攻略対象者もめちゃくちゃウザイ…
強制力やっぱりあるし( ・᷄ὢ・᷅ )
強制力あっても何とか逞しく乗り切ろうとする悪役令嬢に転生した私の物語
女神の愛し子の私に冤罪って…
って何故かどんどん話のスケールがでかくなってませんか!?
ゆるふわ設定です!
頭をラフにしてお読み下さい(*^^*)

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

食うために軍人になりました。
KBT
ファンタジー
ヴァランタイン帝国の片田舎ダウスター領に最下階位の平民の次男として生まれたリクト。
しかし、両親は悩んだ。次男であるリクトには成人しても継ぐ土地がない。
このままではこの子の未来は暗いものになってしまうだろう。
そう思った両親は幼少の頃よりリクトにを鍛え上げる事にした。
父は家の蔵にあったボロボロの指南書を元に剣術を、母は露店に売っていた怪しげな魔導書を元に魔法を教えた。
それから10年の時が経ち、リクトは成人となる15歳を迎えた。
両親の危惧した通り、継ぐ土地のないリクトは食い扶持を稼ぐために、地元の領軍に入隊試験を受けると、両親譲りの剣術と魔法のおかげで最下階級の二等兵として無事に入隊する事ができた。
軍と言っても、のどかな田舎の軍。
リクトは退役するまで地元でのんびり過ごそうと考えていたが、入隊2日目の朝に隣領との戦争が勃発してしまう。
おまけに上官から剣の腕を妬まれて、単独任務を任されてしまった。
その任務の最中、リクトは平民に対する貴族の専横を目の当たりにする。
生まれながらの体制に甘える貴族社会に嫌気が差したリクトは軍人として出世して貴族の専横に対抗する力を得ようと立身出世の道を歩むのだった。
剣と魔法のファンタジー世界で軍人という異色作品をお楽しみください。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる