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第1章 ウェリス王立学園編
01 学園と幼馴染
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「レアンデル様、朝になりましたよ。もうすぐ朝食の準備ができますので、お顔を洗ってきてくださいませ」
「ふあ~。もう起きる時間なの? 分かったよ、顔を洗ってくるね」
「はい。それでは朝食の準備をしながらお待ちしております」
僕はレアンデル=アリウス。この前誕生日だったから12歳になったばかり。そして今、僕を起こしてくれたのがメイドのフラン。ウェリス王立学園高等部の一年生になったというのに、なかなか自分で起きることができないんだよね。
そういえば今日は週に一回の僕が嫌いな魔法の授業があるんだよな……魔法の授業のことを考えると学校には行きたくないんだけど、サボるわけにもいかないからね。とにかくササッと顔を洗ってこよう。
学園の制服に着替えてダイニングルームに来てみると、妹のリルフィーユがちょこんと椅子に座っていた。
「レン兄さま、おはようございます」
「おはよう、リル。今日も早いね」
僕はリルの隣の椅子に腰をかけた。するとすぐに父上と母上がやってきた。
「おはよう、レン、リル」
「「父上、母上、おはようございます」」
僕の右側にはリルが座っていて、僕の目の前に父上、リルの前には母上が座るのが定位置だ。
「4月からレンは高等部の一年生になって、リルも学園に入学して初等部の一年生だ。そろそろ3か月が経つから大分慣れたと思うが、二人ともよく学んで、よく遊ぶんだぞ」
「「はい! 父上」」
父上は厳しいところもあるけど、ものすごく優しくて温かい。領地のみんなからも慕われている。それにこの国でもトップクラスの火の魔法の使い手だ。
母上は息子である僕が言うのもおかしいけど、とてもきれいでしっかり者の女性だ。父上がベタ惚れしているのが丸わかりである。
「レン、そろそろ学校に行く時間が近づいてるわよ」
「あっ、本当だ。急いで食べなきゃ」
僕は朝ご飯を急いで食べて王都にある学園に向かった。
学園は初等部が5年間、高等部が5年間の10年間となっていて、初等部から高等部へは自動的に進むことができる。
初等部の三年生までは一人で通学をするのが禁止なんだけど、四年生からは一人で通学することが認められている。
屋敷から学園までは結構な距離があるんだけど、僕は四年生のときからいつもランニングをして通っている。
妹のリルはというと僕が家を出たあとに馬車で学園に通っている。女の子は四年生になったからといって走って通う子はいないみたいだね。
リルからは一緒に行こうよって何回も誘われたけど、僕は体力づくりのために走って学園に行きたいんだよね。魔法が苦手な僕には剣の腕を磨くことぐらいしかできないからさ。
そうして学園に向かっていると、学園の正門前に貴族でもなかなか見ることがないくらいの豪華な馬車が優雅に止まるところだった。僕たち学園の生徒なら誰でも知ってる馬車なんだけどね。するとその馬車から金色の髪をなびかせた少女が降りてきた。
「おはよう、レン! ちょうど同じ時間に着いたようね。せっかくだからクラスまで一緒に行きましょう」
「おはよう、アーシェ。いや、遠慮しておくよ。周りの目が痛すぎるからさ」
「あら、周りに気を遣う必要なんてないわよ。ほら行くわよ」
そうやって僕の手を引く彼女の名前はアーシェス=グランベルム。僕の父上とアーシェの父上の仲が良いので、小さい頃から一緒に遊んでいたいわゆる幼なじみであり、今はクラスメイトでもある。
ただしグランベルム家はうちの子爵家とは比べるのもおこがましい貴族家トップの公爵家だ。
そして小さいころはあんなにお転婆だったアーシェも将来は間違いなく美人になることが約束されている顔立ちだ。黄金に光る絹のような長い髪に、キラキラとした装飾が見えるような碧眼。
学園に入学してすぐにファンクラブができたらしい。初等部の少女のファンクラブなんて単なるロリ……いや、その魅力を表したすごいエピソードだと言うことで納得しておこう。
「レン、今日は魔法の授業があるけど気負う必要はないんだからね」
「分かってるよ」
アーシェが気を遣ってくれるのは嬉しいけど、男としては情けない気持ちにもなるんだよな。
正門から入ると右側に初等部の校舎、左側に高等部の校舎がある。それぞれ6階建ての建物になっていて1階が一年生のクラス、2階が二年生のクラスと階が上がるごとに学年が上がっていく。僕たち一年生のクラスは1階にあるというわけだ。
昨年は初等部五年生だったから右側の校舎の5階を上り下りしていた。あれはいい訓練だったな。ちなみに6階には先生たちの部屋や会議室などがある。1学年2クラス制となっていて1クラスは30名。僕たちは1-Aというクラスだ。
クラスに着いてアーシェと分かれると、
「レアンデル君! アーシェス様と一緒に来るなんて調子に乗ってるんじゃないの!?」
ほらきた。口うるさいステラが早速文句を言ってきた。
「たまたま正門の前で一緒になったんだよ。ただそれだけのことだよ」
「アーシェス様のお優しさに便乗して一緒に来るなんて厚かましいわよ」
「はいはい。分かったよ。よく分からないけど気を付けるよ」
僕が自分の席に向かってステラの横を通り過ぎてもまだブツブツ言ってる。
ステラは初等部のころからアーシェス様親衛隊と名乗ってる少し痛い子だからな。アーシェのことを純粋に敬愛してるのは分かるし、アーシェもステラと仲良く付き合ってるからどうこう言うつもりはないけど、僕にはめちゃくちゃ厳しいのが面倒この上ない。
向こうの方からは男子の集まりが嫌な視線を向けていて何か文句を言ってる感じだ。ただ門から一緒に歩いてきただけでこのやっかみ。はぁ~。うんざりするよね。
アーシェは公爵家のご令嬢っていうやつだけど、誰とでも分け隔てなく接するから友人がとても多い。
ウェリス王立学園は王都に5つある学校や学園の中でも最も優秀であり、学園に通う生徒は貴族もしくは有力な商家の子どもたちだ。
学園のルールに家柄や商売の規模で身分の上下を作らないというものがあるんだけど、アーシェは小さいころから誰とでも仲良くなれる性格をしていたんだよね。そういうところがアーシェ信者を増やしてるんだろうな。
僕が自分の席に座るとちょうど担任のエマ先生が入ってきた。ピンク色の長い髪を後ろでまとめ、スラっとした体型とその整った顔立ちはモデルのようだ。フチなし眼鏡がよく似合っていて眼鏡のおかげで先生感が少し増している。
「みなさん、おはようございます。最初の授業は語学です。教科書を開いてください」
1時間目は語学の授業だ。僕が好きな科目の一つでもある。
この世界には大きな5つの大陸があって、それぞれに大陸全土を治める大きな国がある。国によって住んでいる種族も異なり、この国なら大半は人族だし、一番近い大陸には獣人族の国がある。
五大国に住んでいるあらゆる種族の人々を総称して「人間種」と呼ぶんだけど、使っている言葉は世界共通の「標準言語」と呼ばれるもので、語学の授業はこの標準言語を学ぶ。
僕は小さいころから知らないことを覚えるのが好きなんだよね。勉強自体が好きだからどの科目も成績は良い方なんだけど、特に語学は面白い。
僕が好きな語学の授業も終わって、算術と歴史の授業のあと昼食の時間になった。昼食は食堂に移動するのではなく教室ごとに昼食が配られて自分の机で食べるスタイルだ。
学園の昼食はお世辞抜きで美味しい。舌が肥えている生徒たちが多いからね。必然的にこのレベルになったんだろうな。
「はい、みなさん。午後は魔法の授業です。昼食のあとは魔法訓練場に移動してください」
魔法の授業の時間が迫ると、僕は気の重さを感じていた。
◇
<人物紹介>
レアンデル=アリウス
本作の主人公。黒髪に茶色の目。割と整った顔立ち。現在12歳。ウェリス王立学園高等部の一年生。剣は得意だが魔法は苦手。父と母を心から尊敬している。頭の中で色々と考えるのが好き。
リルフィーユ=アリウス
レアンデルの妹。赤みが強い赤茶色の髪と目。現在6歳。ウェリス王立学園初等部の一年生。レアンデルが大好き。少しブラコン気味。
フラン
アリウス家のメイドの一人。明確な役割分担はないが自然とレアンデル担当のようになっている。
アーシェス=グランベルム
公爵家の次女。レアンデルの幼なじみで同級生。金髪碧眼の可愛い系美人。明るくさっぱりとした性格。小さいころからレアンデルが努力するところを応援している。
ステラ
一人だけでアーシェス様親衛隊を名乗っている女の子。アーシェスに近寄るものを排除したがり、特にレアンデルが近寄るのを毛嫌いしている。アーシェスとは普通に仲が良い。
エマ先生
高等部1-A担任。顔もスタイルもよく特に男子生徒から人気がある。授業も上手な真面目な先生。
「ふあ~。もう起きる時間なの? 分かったよ、顔を洗ってくるね」
「はい。それでは朝食の準備をしながらお待ちしております」
僕はレアンデル=アリウス。この前誕生日だったから12歳になったばかり。そして今、僕を起こしてくれたのがメイドのフラン。ウェリス王立学園高等部の一年生になったというのに、なかなか自分で起きることができないんだよね。
そういえば今日は週に一回の僕が嫌いな魔法の授業があるんだよな……魔法の授業のことを考えると学校には行きたくないんだけど、サボるわけにもいかないからね。とにかくササッと顔を洗ってこよう。
学園の制服に着替えてダイニングルームに来てみると、妹のリルフィーユがちょこんと椅子に座っていた。
「レン兄さま、おはようございます」
「おはよう、リル。今日も早いね」
僕はリルの隣の椅子に腰をかけた。するとすぐに父上と母上がやってきた。
「おはよう、レン、リル」
「「父上、母上、おはようございます」」
僕の右側にはリルが座っていて、僕の目の前に父上、リルの前には母上が座るのが定位置だ。
「4月からレンは高等部の一年生になって、リルも学園に入学して初等部の一年生だ。そろそろ3か月が経つから大分慣れたと思うが、二人ともよく学んで、よく遊ぶんだぞ」
「「はい! 父上」」
父上は厳しいところもあるけど、ものすごく優しくて温かい。領地のみんなからも慕われている。それにこの国でもトップクラスの火の魔法の使い手だ。
母上は息子である僕が言うのもおかしいけど、とてもきれいでしっかり者の女性だ。父上がベタ惚れしているのが丸わかりである。
「レン、そろそろ学校に行く時間が近づいてるわよ」
「あっ、本当だ。急いで食べなきゃ」
僕は朝ご飯を急いで食べて王都にある学園に向かった。
学園は初等部が5年間、高等部が5年間の10年間となっていて、初等部から高等部へは自動的に進むことができる。
初等部の三年生までは一人で通学をするのが禁止なんだけど、四年生からは一人で通学することが認められている。
屋敷から学園までは結構な距離があるんだけど、僕は四年生のときからいつもランニングをして通っている。
妹のリルはというと僕が家を出たあとに馬車で学園に通っている。女の子は四年生になったからといって走って通う子はいないみたいだね。
リルからは一緒に行こうよって何回も誘われたけど、僕は体力づくりのために走って学園に行きたいんだよね。魔法が苦手な僕には剣の腕を磨くことぐらいしかできないからさ。
そうして学園に向かっていると、学園の正門前に貴族でもなかなか見ることがないくらいの豪華な馬車が優雅に止まるところだった。僕たち学園の生徒なら誰でも知ってる馬車なんだけどね。するとその馬車から金色の髪をなびかせた少女が降りてきた。
「おはよう、レン! ちょうど同じ時間に着いたようね。せっかくだからクラスまで一緒に行きましょう」
「おはよう、アーシェ。いや、遠慮しておくよ。周りの目が痛すぎるからさ」
「あら、周りに気を遣う必要なんてないわよ。ほら行くわよ」
そうやって僕の手を引く彼女の名前はアーシェス=グランベルム。僕の父上とアーシェの父上の仲が良いので、小さい頃から一緒に遊んでいたいわゆる幼なじみであり、今はクラスメイトでもある。
ただしグランベルム家はうちの子爵家とは比べるのもおこがましい貴族家トップの公爵家だ。
そして小さいころはあんなにお転婆だったアーシェも将来は間違いなく美人になることが約束されている顔立ちだ。黄金に光る絹のような長い髪に、キラキラとした装飾が見えるような碧眼。
学園に入学してすぐにファンクラブができたらしい。初等部の少女のファンクラブなんて単なるロリ……いや、その魅力を表したすごいエピソードだと言うことで納得しておこう。
「レン、今日は魔法の授業があるけど気負う必要はないんだからね」
「分かってるよ」
アーシェが気を遣ってくれるのは嬉しいけど、男としては情けない気持ちにもなるんだよな。
正門から入ると右側に初等部の校舎、左側に高等部の校舎がある。それぞれ6階建ての建物になっていて1階が一年生のクラス、2階が二年生のクラスと階が上がるごとに学年が上がっていく。僕たち一年生のクラスは1階にあるというわけだ。
昨年は初等部五年生だったから右側の校舎の5階を上り下りしていた。あれはいい訓練だったな。ちなみに6階には先生たちの部屋や会議室などがある。1学年2クラス制となっていて1クラスは30名。僕たちは1-Aというクラスだ。
クラスに着いてアーシェと分かれると、
「レアンデル君! アーシェス様と一緒に来るなんて調子に乗ってるんじゃないの!?」
ほらきた。口うるさいステラが早速文句を言ってきた。
「たまたま正門の前で一緒になったんだよ。ただそれだけのことだよ」
「アーシェス様のお優しさに便乗して一緒に来るなんて厚かましいわよ」
「はいはい。分かったよ。よく分からないけど気を付けるよ」
僕が自分の席に向かってステラの横を通り過ぎてもまだブツブツ言ってる。
ステラは初等部のころからアーシェス様親衛隊と名乗ってる少し痛い子だからな。アーシェのことを純粋に敬愛してるのは分かるし、アーシェもステラと仲良く付き合ってるからどうこう言うつもりはないけど、僕にはめちゃくちゃ厳しいのが面倒この上ない。
向こうの方からは男子の集まりが嫌な視線を向けていて何か文句を言ってる感じだ。ただ門から一緒に歩いてきただけでこのやっかみ。はぁ~。うんざりするよね。
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僕が自分の席に座るとちょうど担任のエマ先生が入ってきた。ピンク色の長い髪を後ろでまとめ、スラっとした体型とその整った顔立ちはモデルのようだ。フチなし眼鏡がよく似合っていて眼鏡のおかげで先生感が少し増している。
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この世界には大きな5つの大陸があって、それぞれに大陸全土を治める大きな国がある。国によって住んでいる種族も異なり、この国なら大半は人族だし、一番近い大陸には獣人族の国がある。
五大国に住んでいるあらゆる種族の人々を総称して「人間種」と呼ぶんだけど、使っている言葉は世界共通の「標準言語」と呼ばれるもので、語学の授業はこの標準言語を学ぶ。
僕は小さいころから知らないことを覚えるのが好きなんだよね。勉強自体が好きだからどの科目も成績は良い方なんだけど、特に語学は面白い。
僕が好きな語学の授業も終わって、算術と歴史の授業のあと昼食の時間になった。昼食は食堂に移動するのではなく教室ごとに昼食が配られて自分の机で食べるスタイルだ。
学園の昼食はお世辞抜きで美味しい。舌が肥えている生徒たちが多いからね。必然的にこのレベルになったんだろうな。
「はい、みなさん。午後は魔法の授業です。昼食のあとは魔法訓練場に移動してください」
魔法の授業の時間が迫ると、僕は気の重さを感じていた。
◇
<人物紹介>
レアンデル=アリウス
本作の主人公。黒髪に茶色の目。割と整った顔立ち。現在12歳。ウェリス王立学園高等部の一年生。剣は得意だが魔法は苦手。父と母を心から尊敬している。頭の中で色々と考えるのが好き。
リルフィーユ=アリウス
レアンデルの妹。赤みが強い赤茶色の髪と目。現在6歳。ウェリス王立学園初等部の一年生。レアンデルが大好き。少しブラコン気味。
フラン
アリウス家のメイドの一人。明確な役割分担はないが自然とレアンデル担当のようになっている。
アーシェス=グランベルム
公爵家の次女。レアンデルの幼なじみで同級生。金髪碧眼の可愛い系美人。明るくさっぱりとした性格。小さいころからレアンデルが努力するところを応援している。
ステラ
一人だけでアーシェス様親衛隊を名乗っている女の子。アーシェスに近寄るものを排除したがり、特にレアンデルが近寄るのを毛嫌いしている。アーシェスとは普通に仲が良い。
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