27 / 56
狭い心(私)
しおりを挟む
ギリルが出て行った部屋は、まるで火の消えたランタンのように冷え冷えとしていました。
わずかな光に誘われるように視線をあげれば、窓の外では宿を囲む木々の合間を明るい日差しが踊っています。
そうでしたね……。まだ、お昼前なんでした。
ギリルが優しく撫でてくれた肩が、まだほんの少し彼の熱を残していて、気付けば私は自分の肩に触れていました。
胸に、先程のギリルの言葉が蘇ります。
あれは……本当なのでしょうか。
本当に、死にたい理由に納得できれば、この罪深い命を刈り取ってくれるというのでしょうか。
昨夜はあんなにハッキリと断ったのに?
……ですが、確かに、昨夜もギリルは私に理由を問いましたね。
私が死にたい理由、ですか……。
『世のため人のため、私は滅ぶべき存在です』
そう伝えたところで、ギリルが納得してくれるとは思えませんでした。
私は小さく息をつくと、誰もいなくなった部屋のベッドへ身を預けて、目を閉じました。
眼裏に今までの出来事が蘇ります。
罪のない人達を、大勢殺してきました。
初めは無意識に……。今では、意図的に。
これだけでも、十分私は人間の敵だと思うのですが。
どうしてだか、ギリルは人間全てよりも私を選んでしまうようなので、これだけで納得してもらうのは難しいかもしれませんね……。
では、私が魔王だから。という理由ではどうでしょうか。
私がいるだけで、私が生きているだけで、私の周りには暗がりができてしまいます。
そこから生まれてしまう魔物もまた、たくさんの人達を傷つけてきたのでしょう。
こうやってギリルと共に過ごす間は、彼の持つ光にあてられて多少の闇なら霧散しますし、彼が時折無意識に行なっているであろう広範囲浄化のお陰で、近頃は低級魔族すらめっきり見かけなくなりましたが……。
昨夜の、この部屋で言われたギリルの言葉が、あの時の真っ直ぐな眼差しとともに鮮やかに蘇って、私は慌てて目を開きました。
『俺は師範を守りたい。師範に、ずっと笑っていてほしい。そのためならなんだってやるから』
形ばかりの心臓が、大袈裟に脈を打っています。
……困りましたね……。
私はどうして、こんなにもギリルに翻弄されてしまうのでしょうか。
……こんなはずでは、なかったのに……。
私の目的のため、ギリルに懐いてもらおうとは思っていました。
なので、なるべく優しく接していましたし、私もギリルを可愛い弟子だと思っていました。
けれど、それは、それだけのことで。
決してギリルを自分だけのものにしたいだとか、そんな思い上がりはなかったはずなんです……。
ギリルには、私亡き後も、なるべく悔やまずに……、できれば他の誰かと幸せに……。
けれど、ギリルが見知らぬ女性と仲睦まじく暮らす姿を思うと、私の胸は苦しくなりました。
本当に、どうしたというのでしょう。
私はこんなにも、心が狭かったのでしょうか。
たった一人の弟子の幸せすら、心から願えないなんて……。
わずかな光に誘われるように視線をあげれば、窓の外では宿を囲む木々の合間を明るい日差しが踊っています。
そうでしたね……。まだ、お昼前なんでした。
ギリルが優しく撫でてくれた肩が、まだほんの少し彼の熱を残していて、気付けば私は自分の肩に触れていました。
胸に、先程のギリルの言葉が蘇ります。
あれは……本当なのでしょうか。
本当に、死にたい理由に納得できれば、この罪深い命を刈り取ってくれるというのでしょうか。
昨夜はあんなにハッキリと断ったのに?
……ですが、確かに、昨夜もギリルは私に理由を問いましたね。
私が死にたい理由、ですか……。
『世のため人のため、私は滅ぶべき存在です』
そう伝えたところで、ギリルが納得してくれるとは思えませんでした。
私は小さく息をつくと、誰もいなくなった部屋のベッドへ身を預けて、目を閉じました。
眼裏に今までの出来事が蘇ります。
罪のない人達を、大勢殺してきました。
初めは無意識に……。今では、意図的に。
これだけでも、十分私は人間の敵だと思うのですが。
どうしてだか、ギリルは人間全てよりも私を選んでしまうようなので、これだけで納得してもらうのは難しいかもしれませんね……。
では、私が魔王だから。という理由ではどうでしょうか。
私がいるだけで、私が生きているだけで、私の周りには暗がりができてしまいます。
そこから生まれてしまう魔物もまた、たくさんの人達を傷つけてきたのでしょう。
こうやってギリルと共に過ごす間は、彼の持つ光にあてられて多少の闇なら霧散しますし、彼が時折無意識に行なっているであろう広範囲浄化のお陰で、近頃は低級魔族すらめっきり見かけなくなりましたが……。
昨夜の、この部屋で言われたギリルの言葉が、あの時の真っ直ぐな眼差しとともに鮮やかに蘇って、私は慌てて目を開きました。
『俺は師範を守りたい。師範に、ずっと笑っていてほしい。そのためならなんだってやるから』
形ばかりの心臓が、大袈裟に脈を打っています。
……困りましたね……。
私はどうして、こんなにもギリルに翻弄されてしまうのでしょうか。
……こんなはずでは、なかったのに……。
私の目的のため、ギリルに懐いてもらおうとは思っていました。
なので、なるべく優しく接していましたし、私もギリルを可愛い弟子だと思っていました。
けれど、それは、それだけのことで。
決してギリルを自分だけのものにしたいだとか、そんな思い上がりはなかったはずなんです……。
ギリルには、私亡き後も、なるべく悔やまずに……、できれば他の誰かと幸せに……。
けれど、ギリルが見知らぬ女性と仲睦まじく暮らす姿を思うと、私の胸は苦しくなりました。
本当に、どうしたというのでしょう。
私はこんなにも、心が狭かったのでしょうか。
たった一人の弟子の幸せすら、心から願えないなんて……。
10
あなたにおすすめの小説
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、
隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。
しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです…
オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が
なかたのでした。
本当の花嫁じゃない。
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
勇者様への片思いを拗らせていた僕は勇者様から溺愛される
八朔バニラ
BL
蓮とリアムは共に孤児院育ちの幼馴染。
蓮とリアムは切磋琢磨しながら成長し、リアムは村の勇者として祭り上げられた。
リアムは勇者として村に入ってくる魔物退治をしていたが、だんだんと疲れが見えてきた。
ある日、蓮は何者かに誘拐されてしまい……
スパダリ勇者×ツンデレ陰陽師(忘却の術熟練者)
もう一度言って欲しいオレと思わず言ってしまったあいつの話する?
藍音
BL
ある日、親友の壮介はおれたちの友情をぶち壊すようなことを言い出したんだ。
なんで?どうして?
そんな二人の出会いから、二人の想いを綴るラブストーリーです。
片想い進行中の方、失恋経験のある方に是非読んでもらいたい、切ないお話です。
勇太と壮介の視点が交互に入れ替わりながら進みます。
お話の重複は可能な限り避けながら、ストーリーは進行していきます。
少しでもお楽しみいただけたら、嬉しいです。
(R4.11.3 全体に手を入れました)
【ちょこっとネタバレ】
番外編にて二人の想いが通じた後日譚を進行中。
BL大賞期間内に番外編も完結予定です。
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
壊すほどに、俺はお前に囚われている
氷月
BL
【後輩と先輩、交錯する心と体】
春、新学期の大学キャンパス。
4年の蓮(レン)は、人気者らしく女子に囲まれながらも、なぜか新入生・七瀬巧(タクミ)の姿を探してしまう自分に気づいていた。
彼は去年の秋、かつて蓮が想いを寄せていた男の恋人の友人として出会った相手。
――まさか、この俺様が、また男に惹かれるなんて。
否定しようとすればするほど、目はタクミを追ってしまう。
無邪気に笑う顔。ふと見せる真剣な横顔。
先輩と後輩、互いに抗えない感情に囚われながら、夏の学園を駆け抜けていく――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる