⚔️師範を殺したくない俺(勇者)と、弟子に殺されたい私(魔王)

良音 夜代琴

文字の大きさ
13 / 56

わからない事(俺)*

しおりを挟む
 師範は俺の口付けを受け入れてくれた。

 喜びに胸が弾む。
 いや、弾むどころじゃないくらい俺の心臓はバクバクいっていた。

 こんなにピッタリくっついてしまうと、俺の心音が師範に聞こえてしまうかも知れない。
 そう思うと恥ずかしかったが、師範はきっとそのくらいのことお見通しなんだろう。



 それならもう構わない。
 俺の全てで、この美しい人を愛したかった。

 過去に何があったって構うものか。今の師範が、俺だけのものであるならば。

 俺はそう決意しながら、師範に一枚きり残した肌着の紐を解くとその下の素肌へ指を這わせる。
 ちらと表情をうかがえば、師範は眉間に僅かに皺を寄せ、どこか緊張したような面持ちをしていた。


 ……緊張してるのか?

 それは……久しぶり、だからか……?


 俺は違和感を抱えたまま、けれど、それが何かがわからないまま、師範を少しでもリラックスさせようと、その頬に口付ける。
 目元にも、耳にも、額にも。優しく優しく唇を落とす。

 どうか心配しないでほしい。

 絶対乱暴な事はしないから。

 大切に抱くと、約束するから……。


「師範、俺……っ師範の事……」


「……ギリル。大丈夫ですよ……」

 師範が優しく囁いて、俺の頭を撫でる。

 頭を撫でられたのはずいぶん久しぶりな気がする。
 昔は毎日欠かさず俺を撫でてくれた、師範の手だ。
 師範の手は、俺に食事を与えてくれて、俺に文字の書き方を教えてくれて、俺に剣を持たせてくれた。

「師範……」

 師範の手を取って、指先に口付ける。
 たっぷりと想いを込めて。


 ああ、この人を守りたい。

 この人を幸せにしたい。

 この人が、もうあんな風に涙することのないように。

 俺が、この人の笑顔を守りたい……。



 けれど俺が愛を込めて口付けるほどに、師範の悲しみの色は濃くなった。



 何かが間違ってる。

 俺は何か決定的な見落としをしている。

 心はそう告げているのに、この滑らかな肌から手が離せない。




 師範の透けるように白い肌は今、俺の愛撫に確かに色付きつつある。

 胸元の柔らかな粒は撫でられるほどに硬く尖り、そこに俺の指が触れる度、師範は小さく息を呑んだ。
 師範の細い首筋からくっきりと浮かんだ鎖骨、その下の薄い胸へと唇を這わせれば、師範が声を漏らした。

「っ、ぁ……」

 小さな小さな、細い声だった。

 なのに俺の心臓はたったそれだけでバクバクと激しく騒ぐ。
 カーッと頭に血がのぼるようで、どうにも抑えきれない。

 逸る心に急かされて、俺は俺より一回りほど小さな師範の身体を向かい合わせに抱き上げた。

「わぁ」

 師範の体は俺よりずっと軽い。
 下手すればそこらの女性よりも軽いんじゃないだろうか。

 驚きにあげられた小さな声が可愛くて、俺は美しい銀の髪へ口付ける。

 師範を俺の膝の上に座らせると、俺は師範の後ろへと手を伸ばした。

 俺のゴツゴツした尻と違って、先生の尻は小さいけれど柔らかく、ふにふにとした触り心地がたまらない。
 手のひらに吸い付くような師範の尻たぶを両手でゆっくり揉みしだきながら、俺は最後の同意を求める。

「師範……、中に、触れてもいい、よな……?」

 師範は小さく息を呑んでから、覚悟を滲ませて答えた。

「……はい……」



 やはり、師範にとって行為は辛いことなんだろうか。

「師範が嫌だと感じたら、俺はいつでもやめるから。我慢しないで言ってくれよ……?」

 最後に念を押せば、師範はやはりまだ緊張の残る声で「……ありがとうございます」とだけ答えた。



「はい」と言わなかった師範は、嫌だと思っても我慢しようと思っているんだろう。

 ……俺だってもう、そのくらいの事は分かるよ……。

 いつまでも子どもだと思われている事を、俺は悔しく思う反面、嬉しくも思ってしまう。



 膝に抱き上げたことで、師範の薄く滑らかな胸は俺の目の前に露わになっている。
 前のはだけた肌着の合間から覗くのは、ぷっくりと尖り淡く色付いた粒。
 美味しそうなそれに舌を這わせれば、師範の軽い身体がひくりと震える。

 ……ああ、せんせい……。

 俺は多分心のどこかで、いつまでもずっと師範の子でいたいんだ……。

 なのに、そんな師範を全て俺のものにしたいとも願っている……。




「俺は……間違ってるよな……」


 どこで間違えたのか、俺はどうすればよかったのか。

 どうすれば……師範の望む正しい人間であれたのか。





 俺に分かるのは、自分が師範を何も分かっていないことだけだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

勇者様への片思いを拗らせていた僕は勇者様から溺愛される

八朔バニラ
BL
蓮とリアムは共に孤児院育ちの幼馴染。 蓮とリアムは切磋琢磨しながら成長し、リアムは村の勇者として祭り上げられた。 リアムは勇者として村に入ってくる魔物退治をしていたが、だんだんと疲れが見えてきた。 ある日、蓮は何者かに誘拐されてしまい…… スパダリ勇者×ツンデレ陰陽師(忘却の術熟練者)

【完結】恋人になりたかった

ivy
BL
初めてのキスは、 すべてが始まった合図だと思っていた。 優しい大地と過ごす時間は、 律にとって特別で、 手放したくないものになっていく。 けれど……

もう一度言って欲しいオレと思わず言ってしまったあいつの話する?

藍音
BL
ある日、親友の壮介はおれたちの友情をぶち壊すようなことを言い出したんだ。 なんで?どうして? そんな二人の出会いから、二人の想いを綴るラブストーリーです。 片想い進行中の方、失恋経験のある方に是非読んでもらいたい、切ないお話です。 勇太と壮介の視点が交互に入れ替わりながら進みます。 お話の重複は可能な限り避けながら、ストーリーは進行していきます。 少しでもお楽しみいただけたら、嬉しいです。 (R4.11.3 全体に手を入れました) 【ちょこっとネタバレ】 番外編にて二人の想いが通じた後日譚を進行中。 BL大賞期間内に番外編も完結予定です。

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

壊すほどに、俺はお前に囚われている

氷月
BL
【後輩と先輩、交錯する心と体】 春、新学期の大学キャンパス。 4年の蓮(レン)は、人気者らしく女子に囲まれながらも、なぜか新入生・七瀬巧(タクミ)の姿を探してしまう自分に気づいていた。 彼は去年の秋、かつて蓮が想いを寄せていた男の恋人の友人として出会った相手。 ――まさか、この俺様が、また男に惹かれるなんて。 否定しようとすればするほど、目はタクミを追ってしまう。 無邪気に笑う顔。ふと見せる真剣な横顔。 先輩と後輩、互いに抗えない感情に囚われながら、夏の学園を駆け抜けていく――。

処理中です...