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初めての(俺)
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実戦で魔物を殺すのはこれが三度目だった。
一度目は膝に乗るくらいの小さな魔物で、たくさん生えた足でちょろちょろと逃げ回られてしまったが、芯をとらえた一刀で片が付いた。
師範は、初めてにしては上出来だと褒めてくれた。
二度目は自分の半分ほどの魔物で、動きは遅かったがヌメヌメとした体表に手こずった。
斬った感覚は、まるで泥のようだった。
今日倒した魔物は、俺とそう変わらない大きさの四本足の魔物で、斬れば俺と同じ色の血を流した。
温かい血を肌に浴びて、俺は反射的に飛び退いていた。
背筋が凍り、肌が粟立つ。
これは嫌悪感だ。
中途半端に斬ってしまった魔物は、痛みに喘ぎ、俺を恨めしげに睨んだ。
怖かった。
自分のしていることが。
俺は今、食べもしない生き物の命を奪おうとしている。
迷いは俺の手足に鉛のようにまとわりつく。
魔物の牙を何とか剣で受け、弾き飛ばされた俺に師範が告げた。
「その魔物は今朝、村の子の足を食いちぎったそうですよ」
「……っ!」
師範には俺の迷いなんて全てお見通しなんだろう。
俺は、師範の望むように強くなる。
それこそが、俺の望みのはずだ。
師範の言葉を支えに、俺は魔物の肉を今度こそ最後まで引き裂いた。
村の人々には感謝された。
良ければ泊まっていってくれと、村で一番良い宿の一番良い部屋に案内された。
俺のベッドよりずっとふかふかの布団。
小さな村の小さな宿は、夜になればしんと静まり返っていた。
ごそり。と、何度目になるか分からない寝返りを打つ。
隣のベッドでは、師範が枕元の小さな灯りで本を読んでいた。
師範はいつも「子どもはたくさん寝るものです。たくさん寝て、たくさん大きくなってくださいね」と言う。
だから、寝ようと思うのに。なのに、どうしても寝られない。
心臓がドキドキして、いつまでも鳴り止まない。
俺が殺した。その手触りが。いつまでも消えなくて……。
「……寝られないのですか?」
そっと囁くような師範の声。
師範の方へ寝返りを打てば、師範は眼鏡の奥から闇色の瞳で俺をじっと観察した。
「おや、少し頬が赤いようですね。知恵熱でも出たのでしょうか?」
師範は本を置くと俺のベッドにやってきて、俺の額に手を当てた。
あ……。せんせーの手、ひんやりして気持ちいい……。
「少し熱があるでしょうか……?」
師範は首を傾げると顔を近づけて来た。
おでことおでこをくっつけて、直接測るつもりなんだろう。
あの綺麗な顔があんまり近くに来るとドキドキしてしまうから、俺は慌てて目を閉じて待った。
コツンと当てられた師範の額は、俺よりちょっとだけひんやりしている気がする。
「うーん……やはり、少しだけ熱があるようですね」
額をつけたまま話されると、師範の声が直接頭の中に響くみたいだ。
師範の息が俺の前に吐き出されて、それを俺が吸う。
これが師範の体内の匂い。
師範の……内側の、匂い……。
「……っ!」
急に体中の血がお腹の下の方に集まるみたいで、体が熱くなる。
なんだ、これ……。
「ギリル……?」
尋ねられても、何て答えたら良いのか分からない。
「……せんせ、俺……」
何とか伝えようと口を開けば、熱い息が零れた。
師範は何かに気付いたような顔をして、俺の布団を捲った。
「ああ、なるほど。こういう事でしたか」
師範の視線を辿れば、俺の下腹部では寝巻きのズボンがそれに持ち上げられてシルエットを変えていた。
「な……、なんだこれ……」
時々勝手に硬くなったり戻ったりしていたのは知っていたけれど、これは、こんなにガチガチになっていいものなんだろうか。
「私の教育不足でしたね。あなたには歳の近い友人もいないのですから、私がちゃんと説明しておくべきでした」
何のことだろう。と思う間に、師範はずるりと俺のズボンを下ろした。
「せ、せんせ!?」
「心配要りませんよ。すぐに治してあげますからね」
治す……? これは治療が必要な状態なのか。
確かにちょっと、血が集まり過ぎて痛いような気もする。
「ギリルの歳なら何もおかしいことではありませんよ。成長の証です。誰でも起こることですからね」
そう言って、師範は優しく俺のモノを撫でた。
「っ!」
感じたことのない強い感覚。
予想していなかった接触に、びくりと肩が跳ねる。
師範の白い指先は、二本、三本と俺のモノへと絡みついてくる。
「せん、せ……何を……っ」
師範の指が動く度に、腰が浮いてしまいそうになる。
心臓のドキドキが一層早くなってくる。
「今日は私がしますから、よく見て覚えておいてくださいね。次からはギリルが自分でするんですよ」
次……? また次もこんな風になるのか?
そしたら俺が、こんな風に、自分のものを触るのか……?
「魔物を倒して精神が昂ったのもあるのでしょうね……」
俺のモノの先から、じわりと何かが滲んでくる。
排尿感はないのに。師範に触られて漏らすような情けない真似、絶対にしたくないのに。
恥ずかしさと悔しさで真っ赤になって顔を顰める俺に、師範が優しく諭す。
「大丈夫ですよ。これはあなたの精子が出る前触れで、尿とは違いますから」
せいし、ってなんだっけ……。ああ、交尾の時のあれか。
いや、でもそれはメスの体内に入れるべき物じゃないのか?
それを、どうしてこんな……?
師範は俺から漏れた液体を指先に絡めると、俺のものをもう少しだけ強く握って擦り始めた。
「……っ、ぅ……、っ」
ビリビリと刺さるような強烈な刺激。痛みでも、痒みでもない、これは……。
「ギリル……、気持ち良いですか?」
師範から与えられているこの刺激が快感だと知った瞬間、ぞわりと全身の毛が逆立った。
「うぁ、……ぁ……っ。きもち、ぃ……っっ」
認めれば、それは途端に鮮やかさを増す。
身体中から、そこへと血が集まってくるのを感じる。
「ぁ……、あ……っ、せ、せんせ……っ、俺、なんか……、出そ……ぅ……」
上がり始めた息の合間から伝えれば、師範は満足気に微笑んだ。
「ええ、それでいいんですよ。そのまま出しておしまいなさい」
師範の言葉に従うように、俺のモノはぐんと張り詰めてから、勢いよく白いものを吐き出し始めた。
「っっくっ、ぅ……っ」
頭の芯まで痺れるような快感と達成感。
初めての感覚に、俺はなすすべなく翻弄される。
「ふふ、上手にできましたね。これでギリルも一人前ですよ」
その声に、思わずギュッとつぶっていた目をそうっと開けば、師範の綺麗な指が、俺の精でどろどろになったまま、俺のモノをゆっくりと扱いていた。
「こうやって、最後まで出してしまいましょうね」
見れば、優しく微笑む師範の銀色の眼鏡の端に、俺が吐き出した物が飛んでいた。
……俺が、師範を汚してしまった。
師範に俺の子種をかけてしまった。
反省すべきことなのに、なぜかそれを嬉しく感じている自分がいるなんて……。
こんな感情間違ってる。それをわかっていながら、俺はこの感情をどうしても殺しきれない……。
愕然としている俺の体を、師範は手早く拭いて衣類を整え、布団に寝かしつけた。
「疲れたでしょう。ゆっくりおやすみなさい」
「……おやすみ」
「『おやすみなさい』ですよ。ギリルも一人前ともなれば、そろそろ言葉遣いも直してゆきましょうね」
「おやすみなさい。せんせい……」
「はい、おやすみなさい。良い夢を」
師範は俺のことを何でも分かってる。
もしかして、俺がこんな事を思ってしまっているのにも、本当は気付いているんじゃないだろうか。
そう考えると、心が芯から凍りそうだった。
師範にだけは嫌われたくない。
世界中の全員に嫌われたって、師範さえ俺のことを好きでいてくれたら、俺はそれでいいから……。
必死で祈りながら目を閉じる。
その夜俺にできた事は、せめて、汚れた師範の顔をそれ以上見ないようにする事だけだった。
一度目は膝に乗るくらいの小さな魔物で、たくさん生えた足でちょろちょろと逃げ回られてしまったが、芯をとらえた一刀で片が付いた。
師範は、初めてにしては上出来だと褒めてくれた。
二度目は自分の半分ほどの魔物で、動きは遅かったがヌメヌメとした体表に手こずった。
斬った感覚は、まるで泥のようだった。
今日倒した魔物は、俺とそう変わらない大きさの四本足の魔物で、斬れば俺と同じ色の血を流した。
温かい血を肌に浴びて、俺は反射的に飛び退いていた。
背筋が凍り、肌が粟立つ。
これは嫌悪感だ。
中途半端に斬ってしまった魔物は、痛みに喘ぎ、俺を恨めしげに睨んだ。
怖かった。
自分のしていることが。
俺は今、食べもしない生き物の命を奪おうとしている。
迷いは俺の手足に鉛のようにまとわりつく。
魔物の牙を何とか剣で受け、弾き飛ばされた俺に師範が告げた。
「その魔物は今朝、村の子の足を食いちぎったそうですよ」
「……っ!」
師範には俺の迷いなんて全てお見通しなんだろう。
俺は、師範の望むように強くなる。
それこそが、俺の望みのはずだ。
師範の言葉を支えに、俺は魔物の肉を今度こそ最後まで引き裂いた。
村の人々には感謝された。
良ければ泊まっていってくれと、村で一番良い宿の一番良い部屋に案内された。
俺のベッドよりずっとふかふかの布団。
小さな村の小さな宿は、夜になればしんと静まり返っていた。
ごそり。と、何度目になるか分からない寝返りを打つ。
隣のベッドでは、師範が枕元の小さな灯りで本を読んでいた。
師範はいつも「子どもはたくさん寝るものです。たくさん寝て、たくさん大きくなってくださいね」と言う。
だから、寝ようと思うのに。なのに、どうしても寝られない。
心臓がドキドキして、いつまでも鳴り止まない。
俺が殺した。その手触りが。いつまでも消えなくて……。
「……寝られないのですか?」
そっと囁くような師範の声。
師範の方へ寝返りを打てば、師範は眼鏡の奥から闇色の瞳で俺をじっと観察した。
「おや、少し頬が赤いようですね。知恵熱でも出たのでしょうか?」
師範は本を置くと俺のベッドにやってきて、俺の額に手を当てた。
あ……。せんせーの手、ひんやりして気持ちいい……。
「少し熱があるでしょうか……?」
師範は首を傾げると顔を近づけて来た。
おでことおでこをくっつけて、直接測るつもりなんだろう。
あの綺麗な顔があんまり近くに来るとドキドキしてしまうから、俺は慌てて目を閉じて待った。
コツンと当てられた師範の額は、俺よりちょっとだけひんやりしている気がする。
「うーん……やはり、少しだけ熱があるようですね」
額をつけたまま話されると、師範の声が直接頭の中に響くみたいだ。
師範の息が俺の前に吐き出されて、それを俺が吸う。
これが師範の体内の匂い。
師範の……内側の、匂い……。
「……っ!」
急に体中の血がお腹の下の方に集まるみたいで、体が熱くなる。
なんだ、これ……。
「ギリル……?」
尋ねられても、何て答えたら良いのか分からない。
「……せんせ、俺……」
何とか伝えようと口を開けば、熱い息が零れた。
師範は何かに気付いたような顔をして、俺の布団を捲った。
「ああ、なるほど。こういう事でしたか」
師範の視線を辿れば、俺の下腹部では寝巻きのズボンがそれに持ち上げられてシルエットを変えていた。
「な……、なんだこれ……」
時々勝手に硬くなったり戻ったりしていたのは知っていたけれど、これは、こんなにガチガチになっていいものなんだろうか。
「私の教育不足でしたね。あなたには歳の近い友人もいないのですから、私がちゃんと説明しておくべきでした」
何のことだろう。と思う間に、師範はずるりと俺のズボンを下ろした。
「せ、せんせ!?」
「心配要りませんよ。すぐに治してあげますからね」
治す……? これは治療が必要な状態なのか。
確かにちょっと、血が集まり過ぎて痛いような気もする。
「ギリルの歳なら何もおかしいことではありませんよ。成長の証です。誰でも起こることですからね」
そう言って、師範は優しく俺のモノを撫でた。
「っ!」
感じたことのない強い感覚。
予想していなかった接触に、びくりと肩が跳ねる。
師範の白い指先は、二本、三本と俺のモノへと絡みついてくる。
「せん、せ……何を……っ」
師範の指が動く度に、腰が浮いてしまいそうになる。
心臓のドキドキが一層早くなってくる。
「今日は私がしますから、よく見て覚えておいてくださいね。次からはギリルが自分でするんですよ」
次……? また次もこんな風になるのか?
そしたら俺が、こんな風に、自分のものを触るのか……?
「魔物を倒して精神が昂ったのもあるのでしょうね……」
俺のモノの先から、じわりと何かが滲んでくる。
排尿感はないのに。師範に触られて漏らすような情けない真似、絶対にしたくないのに。
恥ずかしさと悔しさで真っ赤になって顔を顰める俺に、師範が優しく諭す。
「大丈夫ですよ。これはあなたの精子が出る前触れで、尿とは違いますから」
せいし、ってなんだっけ……。ああ、交尾の時のあれか。
いや、でもそれはメスの体内に入れるべき物じゃないのか?
それを、どうしてこんな……?
師範は俺から漏れた液体を指先に絡めると、俺のものをもう少しだけ強く握って擦り始めた。
「……っ、ぅ……、っ」
ビリビリと刺さるような強烈な刺激。痛みでも、痒みでもない、これは……。
「ギリル……、気持ち良いですか?」
師範から与えられているこの刺激が快感だと知った瞬間、ぞわりと全身の毛が逆立った。
「うぁ、……ぁ……っ。きもち、ぃ……っっ」
認めれば、それは途端に鮮やかさを増す。
身体中から、そこへと血が集まってくるのを感じる。
「ぁ……、あ……っ、せ、せんせ……っ、俺、なんか……、出そ……ぅ……」
上がり始めた息の合間から伝えれば、師範は満足気に微笑んだ。
「ええ、それでいいんですよ。そのまま出しておしまいなさい」
師範の言葉に従うように、俺のモノはぐんと張り詰めてから、勢いよく白いものを吐き出し始めた。
「っっくっ、ぅ……っ」
頭の芯まで痺れるような快感と達成感。
初めての感覚に、俺はなすすべなく翻弄される。
「ふふ、上手にできましたね。これでギリルも一人前ですよ」
その声に、思わずギュッとつぶっていた目をそうっと開けば、師範の綺麗な指が、俺の精でどろどろになったまま、俺のモノをゆっくりと扱いていた。
「こうやって、最後まで出してしまいましょうね」
見れば、優しく微笑む師範の銀色の眼鏡の端に、俺が吐き出した物が飛んでいた。
……俺が、師範を汚してしまった。
師範に俺の子種をかけてしまった。
反省すべきことなのに、なぜかそれを嬉しく感じている自分がいるなんて……。
こんな感情間違ってる。それをわかっていながら、俺はこの感情をどうしても殺しきれない……。
愕然としている俺の体を、師範は手早く拭いて衣類を整え、布団に寝かしつけた。
「疲れたでしょう。ゆっくりおやすみなさい」
「……おやすみ」
「『おやすみなさい』ですよ。ギリルも一人前ともなれば、そろそろ言葉遣いも直してゆきましょうね」
「おやすみなさい。せんせい……」
「はい、おやすみなさい。良い夢を」
師範は俺のことを何でも分かってる。
もしかして、俺がこんな事を思ってしまっているのにも、本当は気付いているんじゃないだろうか。
そう考えると、心が芯から凍りそうだった。
師範にだけは嫌われたくない。
世界中の全員に嫌われたって、師範さえ俺のことを好きでいてくれたら、俺はそれでいいから……。
必死で祈りながら目を閉じる。
その夜俺にできた事は、せめて、汚れた師範の顔をそれ以上見ないようにする事だけだった。
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