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目が覚めたら、ラディーはもう居なかった。
でもボクには服が着せてあったし、布も一枚かけてあった。
ラディーがかけてくれたのかと思うと、すごく嬉しくなる。

ぐぅ。とお腹が鳴って、今日はまだ何も食べてなかったことに気付く。
あの頃は、何も食べない日が多かったけど、ここに来てからは毎日何か食べることができた。
視線を動かすと、部屋の隅、ボクのスペースにあるテーブルに、食事が用意してあった。
「ラディーが置いていってくれたんだ……」
嬉しくて呟いたボクの声は、ひどく掠れていた。
喉も、とっても乾いてることに気付く。
あそこまで行けば、飲み物が飲める……。

体を起こすと、あちこちが痛い。
お尻は、ボクの体重がかかると飛び上がりたくなるくらい痛かったし、肩と脚の包帯のところからも薄く血が滲んでいた。
いっぱい動いたから、また継ぎ目がズレちゃったのかな……。

前に、廊下を通る誰かがラディーの合成は手荒だからソアクヒンしかできない。と言っていた。
十年も持たないだろう、可哀想に、という言葉も聞こえた。
ボクはきっと、そんなに長くは生きられないって事なんだろうな……。

硬い診察台から降りる。
立とうとしても、足の継ぎ目が痛くて歩けそうにない。
四つ這いになって、なんとか、部屋の隅に作ってあるボクのスペースに戻る。
硬い診察用のベッドとは違って、ふかふかのボクのお布団。
それに、ボクのテーブル。

部屋はいつも暖かくて、雨に降られたり、風に凍えたりすることもない。
ラディーはボクを良い子だと、可愛いと言ってくれる。
ちょっと前まで、こんな日がボクに来るなんて、思ってもいなかった。

……やっぱりボク、幸せだなぁ。

ボクは思わず口元を緩ませながら、右手でトレイからコップを慎重に持ち上げると、震える左手の肉球をそうっと添えた。
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