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番外編
拉致監禁される中隊長達のお話(4/14)『事実』(イムノス視点)
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「……ぁ、ぁぁ……、ああああああああああっっっ!!!」
目の前の事実を受け止めきれずに、必死で首を振る隊長の腕を、私は逃さないようにもう一度ベッドへと繋いだ。
鎖がジャラジャラと音を立てて、隊長の瞳に僅かに光が戻る。ささやかに残った判断能力を振り絞る様に身体を捻って私から逃れようとする隊長。
その細く引き締まった腰を両手で掴んで引き寄せれば、美しい白い喉から悲しみに貫かれる声が漏れた。
「ぁああぁっ!」
仕方がない、予定よりも早くバレてしまったが、この声は返す事にしよう。
この声では話し辛くて仕方がないから。
「隊長……」
私の本来の声で声をかければ、目隠しの隙間から、青い瞳がまだどこか信じられないような表情でこちらを見上げる。
「イム、ノス……。なん……で……」
掠れた声が酷く美しくて、私は微笑む。
「隊長のナカは、温かくて、柔らかくて、とても良いですね」
「……っっ!!」
私の言葉に次々と顔色を変える隊長の表情がもっと見たい。
ああ。私の後ろの『彼』の事も、紹介しなくてはね。
私は、隊長の細い身体を自身の身体で押し潰すようにしながら、片目だけがチラリと覗いた目隠しを解いた。
自由にされた青い瞳が、怯えるような眼差しで、私と繋がるそこを確認する。
間違いなく私と繋がっている所が、隊長によく見えるように私は身体を軽く起こした。
一瞬目を逸らしかけた隊長の、普段見たことのない弱さに胸が高鳴る。
そんなに信じたくないことだったのか。
「……もしかして、隊長は他の人としたことがありませんでしたか?」
私の言葉に、金色の髪がかかった肩がびくりと揺れる。
そんなに素直に反応されてしまうと、もっとその心を揺らしたくなってしまう。
「私を、どなたかと間違われていたのですか?」
ハッとした表情で私を見上げる瞳には、怒りが滲んでいる。
こんな顔も、初めてだ。
この方は魔物に対して怒りが無く、また人に対しても怒る様なことがない。
そんな方から初めて向けられた、憎しみすら混ざる厳しい感情に、どくりと心臓が跳ねた。
「ルストックから声を奪ったのか。……あいつはどうした」
低く唸るように問われて、私は優雅に微笑むと後ろを指し示す。
このベッドを除いた周囲は薄暗く、急に目隠しを外された目では、すぐには見えないだろう。
重く大きな椅子に縛り付けられ、身動きの取れないルストック隊長の姿に、私の下で隊長が引き攣るように息を呑むのが良く分かった。
「ずっと……そこに……?」
隊長が、今にも消え入りそうな、か細い声で尋ねた。
不安の溢れるそんな声もたまらない。
一方で、私から声を戻された癖に、あの男はまだ一言も発さずにいる。
かける言葉がなかったのか、それとも、声だけで本物と偽物の区別もつかなかった恋人に呆れているのか。
しかし、あの黒髪の不細工な男は、開口一番謝罪した。
「レイ、すまない……。お前に辛い思いをさせてしまった」
「っ、ルスは悪くねーよっ! 俺が……っ」
弾かれるように応えようとする隊長の唇を、今度こそ私の唇で塞ぐ。
瞬間、ガリ。と齧り付かれて、私は痛みに顔を顰める。
「……まあ、貴方がそう簡単に手に入るとは思っていませんが……」
「そう思うならさっさと離れろ!!」
怒鳴られて、背が熱く震える。
「これでも、そんな態度でいられるでしょうか?」
告げて、巨大な魔力回路の組まれた椅子へと魔力を傾ける。
途端、背後であの男が呻いた。
「ぐぁっ、ぅぐ、ぅ……っっ、ぅ」
蛙でも踏み潰したような、汚い悲鳴だ。
せめてもう少し憐れに泣き叫べば、場も盛り上がるというのに。
「ルスっ!!」
けれどそれを追う隊長の悲痛な声は、実に悲しげで切なげで美しい。
「お前っ、ルスに何をした!!」
おや、隊長はあの椅子をご存知でないらしい。
「あれは昔使われていた拷問用の道具ですよ。魔力を注げば、その間着席者に苦痛を与えます」
端的に答えれば、隊長は美しい青い瞳を眇めて私を睨んだ。
「……何が望みだ」
ギリ、と小さく聞こえた歯軋りの音が、私の背をぞくりと震わせる。
あのいつも飄々として、やる気のなさそうなこの方が、私に次々と向ける激しい感情。
それは、私の中に耐え難い熱を生む。
私の熱を、隊長も感じてくれたのだろうか。
隊長のナカでずくりと一層熱を持ったそれに、隊長は小さく息を詰めた。
「貴方の全て……。心も、身体も、私の物に。それが私の望みです」
私の言葉に、隊長は愕然と目を見開く。
「まずは、隊長の身体で、私を慰めていただけますか?」
ズ……と腰を引く、隊長が逃げ出そうとしないことを確認して、私はもう一度ゆっくりとその内へと侵入する。
「……っ」
先ほどまで、首を絞められながらもあんなに屹立していた隊長のそれは、今、力なくうなだれていた。
これを、今度は、私と分かった上で立ち上がらせてやろう。
そして、隊長が私の手で乱れる様を、あの男に嫌というほど見せつけてやる……。
私の内で熱は暗く燃え上がった。
目の前の事実を受け止めきれずに、必死で首を振る隊長の腕を、私は逃さないようにもう一度ベッドへと繋いだ。
鎖がジャラジャラと音を立てて、隊長の瞳に僅かに光が戻る。ささやかに残った判断能力を振り絞る様に身体を捻って私から逃れようとする隊長。
その細く引き締まった腰を両手で掴んで引き寄せれば、美しい白い喉から悲しみに貫かれる声が漏れた。
「ぁああぁっ!」
仕方がない、予定よりも早くバレてしまったが、この声は返す事にしよう。
この声では話し辛くて仕方がないから。
「隊長……」
私の本来の声で声をかければ、目隠しの隙間から、青い瞳がまだどこか信じられないような表情でこちらを見上げる。
「イム、ノス……。なん……で……」
掠れた声が酷く美しくて、私は微笑む。
「隊長のナカは、温かくて、柔らかくて、とても良いですね」
「……っっ!!」
私の言葉に次々と顔色を変える隊長の表情がもっと見たい。
ああ。私の後ろの『彼』の事も、紹介しなくてはね。
私は、隊長の細い身体を自身の身体で押し潰すようにしながら、片目だけがチラリと覗いた目隠しを解いた。
自由にされた青い瞳が、怯えるような眼差しで、私と繋がるそこを確認する。
間違いなく私と繋がっている所が、隊長によく見えるように私は身体を軽く起こした。
一瞬目を逸らしかけた隊長の、普段見たことのない弱さに胸が高鳴る。
そんなに信じたくないことだったのか。
「……もしかして、隊長は他の人としたことがありませんでしたか?」
私の言葉に、金色の髪がかかった肩がびくりと揺れる。
そんなに素直に反応されてしまうと、もっとその心を揺らしたくなってしまう。
「私を、どなたかと間違われていたのですか?」
ハッとした表情で私を見上げる瞳には、怒りが滲んでいる。
こんな顔も、初めてだ。
この方は魔物に対して怒りが無く、また人に対しても怒る様なことがない。
そんな方から初めて向けられた、憎しみすら混ざる厳しい感情に、どくりと心臓が跳ねた。
「ルストックから声を奪ったのか。……あいつはどうした」
低く唸るように問われて、私は優雅に微笑むと後ろを指し示す。
このベッドを除いた周囲は薄暗く、急に目隠しを外された目では、すぐには見えないだろう。
重く大きな椅子に縛り付けられ、身動きの取れないルストック隊長の姿に、私の下で隊長が引き攣るように息を呑むのが良く分かった。
「ずっと……そこに……?」
隊長が、今にも消え入りそうな、か細い声で尋ねた。
不安の溢れるそんな声もたまらない。
一方で、私から声を戻された癖に、あの男はまだ一言も発さずにいる。
かける言葉がなかったのか、それとも、声だけで本物と偽物の区別もつかなかった恋人に呆れているのか。
しかし、あの黒髪の不細工な男は、開口一番謝罪した。
「レイ、すまない……。お前に辛い思いをさせてしまった」
「っ、ルスは悪くねーよっ! 俺が……っ」
弾かれるように応えようとする隊長の唇を、今度こそ私の唇で塞ぐ。
瞬間、ガリ。と齧り付かれて、私は痛みに顔を顰める。
「……まあ、貴方がそう簡単に手に入るとは思っていませんが……」
「そう思うならさっさと離れろ!!」
怒鳴られて、背が熱く震える。
「これでも、そんな態度でいられるでしょうか?」
告げて、巨大な魔力回路の組まれた椅子へと魔力を傾ける。
途端、背後であの男が呻いた。
「ぐぁっ、ぅぐ、ぅ……っっ、ぅ」
蛙でも踏み潰したような、汚い悲鳴だ。
せめてもう少し憐れに泣き叫べば、場も盛り上がるというのに。
「ルスっ!!」
けれどそれを追う隊長の悲痛な声は、実に悲しげで切なげで美しい。
「お前っ、ルスに何をした!!」
おや、隊長はあの椅子をご存知でないらしい。
「あれは昔使われていた拷問用の道具ですよ。魔力を注げば、その間着席者に苦痛を与えます」
端的に答えれば、隊長は美しい青い瞳を眇めて私を睨んだ。
「……何が望みだ」
ギリ、と小さく聞こえた歯軋りの音が、私の背をぞくりと震わせる。
あのいつも飄々として、やる気のなさそうなこの方が、私に次々と向ける激しい感情。
それは、私の中に耐え難い熱を生む。
私の熱を、隊長も感じてくれたのだろうか。
隊長のナカでずくりと一層熱を持ったそれに、隊長は小さく息を詰めた。
「貴方の全て……。心も、身体も、私の物に。それが私の望みです」
私の言葉に、隊長は愕然と目を見開く。
「まずは、隊長の身体で、私を慰めていただけますか?」
ズ……と腰を引く、隊長が逃げ出そうとしないことを確認して、私はもう一度ゆっくりとその内へと侵入する。
「……っ」
先ほどまで、首を絞められながらもあんなに屹立していた隊長のそれは、今、力なくうなだれていた。
これを、今度は、私と分かった上で立ち上がらせてやろう。
そして、隊長が私の手で乱れる様を、あの男に嫌というほど見せつけてやる……。
私の内で熱は暗く燃え上がった。
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