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番外編
拉致監禁される中隊長達のお話(2/14)『監禁』(前半イムノス視点 後半ルストック視点)
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「ぅ……」
小さな呻きとともに、隊長は目を覚ました。
起き上がろうとしてか、ガチャガチャと鎖の音を立てて。自分の置かれている状況に気付いたのか、その顔色を青く染めた。
「な、ん……、だよ、これ……」
掠れるような声。
信じられないと、むしろ信じたくないというような響きのその言葉が、私の心に小さく火を付ける。
隊長は今、私の用意した広いベッドの上で、両手足の自由を奪われ、目隠しをされていた。
同じ部屋には、もう一人男が拘束されている。
けれど、そちらは現在私に声を奪われていて、一声も漏らすことができなくなっていた。
声を出せない男が、私を止めようともがく。
音のない悲痛な叫びを聞きながら、私はゆっくりと隊長に近付いた。
「レイ、目が覚めたか?」
と、男から奪った声で、男の話し方を真似て声をかければ、隊長はそれだけでホッと全身の力を緩めた。
「……ルス? 俺、何でこんな事んなってんだか……」
不安の色濃い、縋るような声。
この方の、こんな声は、今まで聞いたことがなかった。
六年もの間、ずっと隣で、最前線で、共に死線を潜り抜けてきたつもりだった。
隊の中で、彼が誰より信頼しているのは私のはずだった。
分からない事や、判断に迷うとき、彼は真っ先に私に声をかける。
けれど、それは隊長としての信頼で、時に声に不安を滲ませる事はあれど、それ以上を私に見せることは決してなかった。
腹の奥で何かが煮え滾る。
それが嫉妬だという事は痛いくらい分かっていたが、私はそれに気付かないフリをして、彼の囚われているベッドへ膝をかける。
彼よりも頭一つほど背の高い私がベッドに上がれば、頑丈で大きなベッドがギシリと小さく音を立てる。
「……ルス……?」
不安そうな声を漏らすその淡い色をした唇を、今すぐ塞いでしまいたい。
けれど、今はまだダメだ。
まずは、この奪った声で、彼が愛する人の声で、彼の想いに亀裂を入れなくては。
彼の愛する人が、見ている前で。
「レイ……」
愛を込めて囁けば、先ほどまで青ざめていた彼の頬にふんわりと赤みが差す。
ああ、なんて素直で、健気で、無防備なのか。
この声を発しているのが、ルストック隊長だと信じて、疑いもしていない。
彼は、真実を知った時、一体どんな顔をするのだろうか。
目隠しをされたままの彼の前で、私は、欲望のままに口元を緩めた。
***
――迂闊だった。
激しい後悔に、力を込め過ぎた視界がじわりと赤く染まる。
俺は、目の前の光景に……それを避けられなかった自身に、歯噛みしていた。
レインズの隊で長く副隊長をしている男、イムノスは、腰ほどまである紺色の長く真っ直ぐな髪を後ろで一つに括った、プライドの高い神経質そうな男だった。
レインズよりも少し背の高い俺よりも、さらに背が高い。
そんな長身を窮屈そうに折り曲げて、イムノスは俺に、珍しい異国のお茶とやらを差し出してきた。
これまで、俺が記憶を失う前までは、俺はむしろイムノスには避けられている様に感じていた。
だから、怪我からひと月ほど過ぎた辺りから、イムノスが時々お茶を差し入れてくれる事が、意外ではあったが、嬉しかった。
それをレインズに話せば、レイは「あいつあんま愛想ねーけど、いい奴なんだよ。そろそろうちの隊を出て、中隊長になってほしいとこだけどな」と笑っていた。
俺は、レイのその言葉の、後半にこそ注目するべきだったのだ。
前半の部分と、添えられたレイの美しい笑顔に、俺はすっかり彼への警戒心を失っていたようだ。
中隊長になれるだけの力があるのに、いつまでもレイの隊を出ない彼を、もっと……、もっと、不審に思うべきだったのに。
嗅いだ事のない臭いをさせたお茶を口に含んだ、その後のことは記憶が曖昧で、気が付いた時にはこの部屋で体の自由を奪われていた。
俺の両腕両足は、部屋に固定された大きな椅子に腰掛けた姿勢で拘束され、身動きも物音も立てられぬ様にされていた。
視界だけは自由にされていたが、それが何のためだったのかは、レイが運び込まれたことによって分かった。
イムノスは俺の声を奪い、俺の声で目隠しされたままのレイに声をかけた。
俺が来てくれたのだと思い、ホッと表情を緩ませるレイ。
そんなレイの足首を拘束していた革ベルトの先、ベッドの端にかけられていた鎖をイムノスは解く。
足首に巻かれたベルトそのものではなく、そこを解いたということは、まだ彼にレイを自由にする気はないようだ。
けれど、レイはほんの少しの自由を得たことに安堵を滲ませる。
「あ……、ありがとな……」
律儀に礼を言うレイ。
お前ももう少し不審に思え。
普通、助けに来たなら、まず目隠しを解くだろう?
イムノスの指が、レイの服のボタンを開いてゆく。
「え、ちょ、ルス……?」
「お前を繋いだのは、俺だ」
「………………え……?」
イムノスから告げられた俺の声に、レイは言葉を失った。
俺の声で、勝手な事を言ってくれるもんだな。
はらわたが煮え繰り返るとは正にこの事だ。
「な……、なんで……、こんなこと……」
レイの声が小さく震えている。
「お前は俺だけのものだ。もう永遠に、逃がさない」
イムノスの言葉に、レイは戸惑うような、それでいて何処か嬉しそうな声を漏らした。
「…………ルス……」
イムノスの指がレイの下衣にかかる。
レイは躊躇いつつも、抵抗する事はなかった。
ギリ、と俺は奥歯を噛み締める。
レイは俺に、こんな風にされても、抵抗しないつもりなのか。
目隠しを取れとは、言わない、のか……。
イムノスは、いつもの冷静沈着な眼差しにじわりと欲を浮かべて、レインズの足を大きく開かせると、その後ろへと指を這わせる。
俺は、レイの俺への献身に胸を抉られながら、ベッドの上の二人を見ていることしかできない自身を呪う。
手首の骨を自分で折れば腕は自由になるだろうが、片足も動かない俺が、その状態で、五体満足の副隊長格……いや、実力なら自分と同じ中隊長格であろうこの男の虚を付けるかと言えば、その可能性は低い。
「……っ、ぁ……っ」
イムノス自身と同じように、長くすらりとしたイムノスの指が、躊躇う事なくレインズの中へと入り込む。
「ちょっ、ま……っ、俺、何も準備して、な……っあっ、ぁあぁぁっ!!」
濡らされることもなく、慣らされる事もなく、それでも、レイは俺を拒もうとしないらしい。
痛みに背を丸めようとするレイの身体。
しかし、両腕に巻き付いた鎖がそれを許さない。
「ま、って、く……、っぁあっ!」
イムノスはそんなレイに慈悲を見せる様子もなく、二本、三本とまだ痛みに震えるそこへと指を増やしてゆく。
「っぅ、ぁ、ぁあっっ、ぅ、く……っ」
苦痛に喘ぐレイの姿に、イムノスが醜く口端を持ち上げる。
まずいな。
レイを辱めることだけが目的なら、助けを待つこともできたが、レイを傷付けようとする様では、そうのんびりもしていられない。
なあ、レイ、思い出してくれ。俺は、もう二度とお前を乱暴に抱かないと誓っただろう?
こんな事を、俺がすると思うのか……?
苦い思いに唇を噛み締めれば、馴染んだ血の味が広がった。
小さな呻きとともに、隊長は目を覚ました。
起き上がろうとしてか、ガチャガチャと鎖の音を立てて。自分の置かれている状況に気付いたのか、その顔色を青く染めた。
「な、ん……、だよ、これ……」
掠れるような声。
信じられないと、むしろ信じたくないというような響きのその言葉が、私の心に小さく火を付ける。
隊長は今、私の用意した広いベッドの上で、両手足の自由を奪われ、目隠しをされていた。
同じ部屋には、もう一人男が拘束されている。
けれど、そちらは現在私に声を奪われていて、一声も漏らすことができなくなっていた。
声を出せない男が、私を止めようともがく。
音のない悲痛な叫びを聞きながら、私はゆっくりと隊長に近付いた。
「レイ、目が覚めたか?」
と、男から奪った声で、男の話し方を真似て声をかければ、隊長はそれだけでホッと全身の力を緩めた。
「……ルス? 俺、何でこんな事んなってんだか……」
不安の色濃い、縋るような声。
この方の、こんな声は、今まで聞いたことがなかった。
六年もの間、ずっと隣で、最前線で、共に死線を潜り抜けてきたつもりだった。
隊の中で、彼が誰より信頼しているのは私のはずだった。
分からない事や、判断に迷うとき、彼は真っ先に私に声をかける。
けれど、それは隊長としての信頼で、時に声に不安を滲ませる事はあれど、それ以上を私に見せることは決してなかった。
腹の奥で何かが煮え滾る。
それが嫉妬だという事は痛いくらい分かっていたが、私はそれに気付かないフリをして、彼の囚われているベッドへ膝をかける。
彼よりも頭一つほど背の高い私がベッドに上がれば、頑丈で大きなベッドがギシリと小さく音を立てる。
「……ルス……?」
不安そうな声を漏らすその淡い色をした唇を、今すぐ塞いでしまいたい。
けれど、今はまだダメだ。
まずは、この奪った声で、彼が愛する人の声で、彼の想いに亀裂を入れなくては。
彼の愛する人が、見ている前で。
「レイ……」
愛を込めて囁けば、先ほどまで青ざめていた彼の頬にふんわりと赤みが差す。
ああ、なんて素直で、健気で、無防備なのか。
この声を発しているのが、ルストック隊長だと信じて、疑いもしていない。
彼は、真実を知った時、一体どんな顔をするのだろうか。
目隠しをされたままの彼の前で、私は、欲望のままに口元を緩めた。
***
――迂闊だった。
激しい後悔に、力を込め過ぎた視界がじわりと赤く染まる。
俺は、目の前の光景に……それを避けられなかった自身に、歯噛みしていた。
レインズの隊で長く副隊長をしている男、イムノスは、腰ほどまである紺色の長く真っ直ぐな髪を後ろで一つに括った、プライドの高い神経質そうな男だった。
レインズよりも少し背の高い俺よりも、さらに背が高い。
そんな長身を窮屈そうに折り曲げて、イムノスは俺に、珍しい異国のお茶とやらを差し出してきた。
これまで、俺が記憶を失う前までは、俺はむしろイムノスには避けられている様に感じていた。
だから、怪我からひと月ほど過ぎた辺りから、イムノスが時々お茶を差し入れてくれる事が、意外ではあったが、嬉しかった。
それをレインズに話せば、レイは「あいつあんま愛想ねーけど、いい奴なんだよ。そろそろうちの隊を出て、中隊長になってほしいとこだけどな」と笑っていた。
俺は、レイのその言葉の、後半にこそ注目するべきだったのだ。
前半の部分と、添えられたレイの美しい笑顔に、俺はすっかり彼への警戒心を失っていたようだ。
中隊長になれるだけの力があるのに、いつまでもレイの隊を出ない彼を、もっと……、もっと、不審に思うべきだったのに。
嗅いだ事のない臭いをさせたお茶を口に含んだ、その後のことは記憶が曖昧で、気が付いた時にはこの部屋で体の自由を奪われていた。
俺の両腕両足は、部屋に固定された大きな椅子に腰掛けた姿勢で拘束され、身動きも物音も立てられぬ様にされていた。
視界だけは自由にされていたが、それが何のためだったのかは、レイが運び込まれたことによって分かった。
イムノスは俺の声を奪い、俺の声で目隠しされたままのレイに声をかけた。
俺が来てくれたのだと思い、ホッと表情を緩ませるレイ。
そんなレイの足首を拘束していた革ベルトの先、ベッドの端にかけられていた鎖をイムノスは解く。
足首に巻かれたベルトそのものではなく、そこを解いたということは、まだ彼にレイを自由にする気はないようだ。
けれど、レイはほんの少しの自由を得たことに安堵を滲ませる。
「あ……、ありがとな……」
律儀に礼を言うレイ。
お前ももう少し不審に思え。
普通、助けに来たなら、まず目隠しを解くだろう?
イムノスの指が、レイの服のボタンを開いてゆく。
「え、ちょ、ルス……?」
「お前を繋いだのは、俺だ」
「………………え……?」
イムノスから告げられた俺の声に、レイは言葉を失った。
俺の声で、勝手な事を言ってくれるもんだな。
はらわたが煮え繰り返るとは正にこの事だ。
「な……、なんで……、こんなこと……」
レイの声が小さく震えている。
「お前は俺だけのものだ。もう永遠に、逃がさない」
イムノスの言葉に、レイは戸惑うような、それでいて何処か嬉しそうな声を漏らした。
「…………ルス……」
イムノスの指がレイの下衣にかかる。
レイは躊躇いつつも、抵抗する事はなかった。
ギリ、と俺は奥歯を噛み締める。
レイは俺に、こんな風にされても、抵抗しないつもりなのか。
目隠しを取れとは、言わない、のか……。
イムノスは、いつもの冷静沈着な眼差しにじわりと欲を浮かべて、レインズの足を大きく開かせると、その後ろへと指を這わせる。
俺は、レイの俺への献身に胸を抉られながら、ベッドの上の二人を見ていることしかできない自身を呪う。
手首の骨を自分で折れば腕は自由になるだろうが、片足も動かない俺が、その状態で、五体満足の副隊長格……いや、実力なら自分と同じ中隊長格であろうこの男の虚を付けるかと言えば、その可能性は低い。
「……っ、ぁ……っ」
イムノス自身と同じように、長くすらりとしたイムノスの指が、躊躇う事なくレインズの中へと入り込む。
「ちょっ、ま……っ、俺、何も準備して、な……っあっ、ぁあぁぁっ!!」
濡らされることもなく、慣らされる事もなく、それでも、レイは俺を拒もうとしないらしい。
痛みに背を丸めようとするレイの身体。
しかし、両腕に巻き付いた鎖がそれを許さない。
「ま、って、く……、っぁあっ!」
イムノスはそんなレイに慈悲を見せる様子もなく、二本、三本とまだ痛みに震えるそこへと指を増やしてゆく。
「っぅ、ぁ、ぁあっっ、ぅ、く……っ」
苦痛に喘ぐレイの姿に、イムノスが醜く口端を持ち上げる。
まずいな。
レイを辱めることだけが目的なら、助けを待つこともできたが、レイを傷付けようとする様では、そうのんびりもしていられない。
なあ、レイ、思い出してくれ。俺は、もう二度とお前を乱暴に抱かないと誓っただろう?
こんな事を、俺がすると思うのか……?
苦い思いに唇を噛み締めれば、馴染んだ血の味が広がった。
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