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従者サイドのお話
それぞれの春祭り(7/7)
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ヴィルは、全く理解ができないと言う顔で、白いふさふさのたてがみごと首を傾げて尋ねた。
「……どうしてクレアはその位置なんだ?」
翌朝、アリィ達の前に現れた二人の従者は、何故かアリィの後ろへ二人とも控えていた。
「え? そうですねぇ。離れ難くて。とでも申しましょうか」
クレアがにっこりと笑って答える。
ノクスは隣で盛大に頭を抱えていた。
「……よく分からんが、分かった。二人一緒に居たいのなら、二人は俺達の間に控えてくれないか」
ヴィルが、俺だけ従者がいないように見えては敵わんとばかりに折衷案を出す。
「ではお言葉に甘えて、そうさせていただきますね」
とクレアは長い尾を楽しそうに揺らして移動する。
その後ろをノクスが渋々といった顔でついてゆく。
アリィは、ノクスがそんな顔を素直に見せることにも驚いたが、移動後に、クレアに向けてほんの少し柔らかい顔を見せたことにもまた驚いた。
元から、何だか仲が良さそうだなと思ってはいたが、今の二人の空気は、まるで……恋人同士のようだった。
アリィは、やれやれと肩を竦めたヴィルにそっと耳打ちする。
「ねぇ、あの二人って……」
「ああ、みたいだな」
「そっか……「「よかった」な」
二人の言葉が重なって、アリィとヴィルは見つめ合い、微笑み合った。
二人にとって、辛い時期をずっと支えてくれた二人が幸せになってくれるのは、本当に嬉しいことだった。
……ただ、若干……その相手というのが、予想外ではあったが。
今日は、三日間続いた春祭りの最終日だ。
祭りの最後には、ダンスパーティーもある。
アリィ達はそこで民達への結婚披露も兼ねて一曲踊ることになっていた。
アリィ達の私室ではこの調子の従者達も、一歩部屋を出れば、いつもの従者の顔に戻った。
アリィも国を背負う女王の顔となり、ヴィルもその夫として相応しい白獅子へと変わる。
今日もまた、二人が民の前で無防備となる瞬間が幾度もあるはずだった。
が、二人は……、いや、四人は、この四人ならきっと大丈夫だと自然に思えた。
テラスへ近付くにつれ、二人を待つ民衆のざわめきが届く。
アリィの手はヴィルの腕に重ねられている。
彼の温かな体温が、ふかふかの毛と服を通しても、じわりと伝わってくる。
それを認識するだけで、アリィは何も怖く無いような気持ちになった。
「行こうか」
と優しく声をかけられて見上げれば、白い瞳に、私の薄桃色が映っている。
「はい」
と答えると、自然に笑みが漏れた。
期待に弾む民達の元へ。
アリィは耳をピンと立てると、軽やかな足取りで歩き出した。
「……どうしてクレアはその位置なんだ?」
翌朝、アリィ達の前に現れた二人の従者は、何故かアリィの後ろへ二人とも控えていた。
「え? そうですねぇ。離れ難くて。とでも申しましょうか」
クレアがにっこりと笑って答える。
ノクスは隣で盛大に頭を抱えていた。
「……よく分からんが、分かった。二人一緒に居たいのなら、二人は俺達の間に控えてくれないか」
ヴィルが、俺だけ従者がいないように見えては敵わんとばかりに折衷案を出す。
「ではお言葉に甘えて、そうさせていただきますね」
とクレアは長い尾を楽しそうに揺らして移動する。
その後ろをノクスが渋々といった顔でついてゆく。
アリィは、ノクスがそんな顔を素直に見せることにも驚いたが、移動後に、クレアに向けてほんの少し柔らかい顔を見せたことにもまた驚いた。
元から、何だか仲が良さそうだなと思ってはいたが、今の二人の空気は、まるで……恋人同士のようだった。
アリィは、やれやれと肩を竦めたヴィルにそっと耳打ちする。
「ねぇ、あの二人って……」
「ああ、みたいだな」
「そっか……「「よかった」な」
二人の言葉が重なって、アリィとヴィルは見つめ合い、微笑み合った。
二人にとって、辛い時期をずっと支えてくれた二人が幸せになってくれるのは、本当に嬉しいことだった。
……ただ、若干……その相手というのが、予想外ではあったが。
今日は、三日間続いた春祭りの最終日だ。
祭りの最後には、ダンスパーティーもある。
アリィ達はそこで民達への結婚披露も兼ねて一曲踊ることになっていた。
アリィ達の私室ではこの調子の従者達も、一歩部屋を出れば、いつもの従者の顔に戻った。
アリィも国を背負う女王の顔となり、ヴィルもその夫として相応しい白獅子へと変わる。
今日もまた、二人が民の前で無防備となる瞬間が幾度もあるはずだった。
が、二人は……、いや、四人は、この四人ならきっと大丈夫だと自然に思えた。
テラスへ近付くにつれ、二人を待つ民衆のざわめきが届く。
アリィの手はヴィルの腕に重ねられている。
彼の温かな体温が、ふかふかの毛と服を通しても、じわりと伝わってくる。
それを認識するだけで、アリィは何も怖く無いような気持ちになった。
「行こうか」
と優しく声をかけられて見上げれば、白い瞳に、私の薄桃色が映っている。
「はい」
と答えると、自然に笑みが漏れた。
期待に弾む民達の元へ。
アリィは耳をピンと立てると、軽やかな足取りで歩き出した。
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