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夢の中
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男は夢を見ていた。
いつだったか、大熊なんて呼ばれてた大男がまだ盗賊団にいた頃。
ゼフィアがそいつに話していたのを聞いたことがある。
ずっと昔、大恋愛の末に駆け落ちをしたのだと。
貧しくとも幸せな日々だったと。
けれど愛した女性は、ある日あいつの下で肉塊へと姿を変えていたらしい。
あいつの暴力は、気持ちが昂るほどに酷くなる。
それも無理のない話だと俺は寝たふりをしたまま聞いていた。
人より肌の色が濃い俺達の一族は、生まれつき体が強靭にできていた。
骨も太く折れにくかったし、多少の傷ならすぐ治る。
そんなところが、あいつには都合が良かったんだろう。
国が焼け着の身着のまま逃げ出した俺は、あの頃まだほんのガキで、一人で生きる術を持たなかった。
あいつはそれを余るほどに持っていたが、その分、心が酷く欠けていた。
愛してると囁かれながら、肉を裂かれる。
口元で笑うあの男の、縋り付くような眼差しが嫌だった。
だから、最中は顔を見ないようにしていた。
時々あいつの乱暴で意識を飛ばしてしまうことがあった。
目を覚ませばいつも、あいつが泣きそうな顔で俺を見ていた。
あの時だってそうだ。
盗賊の里が魔物に襲われた日……。
腕を千切られ頭を打って血まみれだった俺を、騎士達の合間を縫って助けたのはあいつだった。
失血が酷く、俺は何日も眠っていたらしい。
目覚めた俺が最初に見たのは、やはり、あいつの泣き顔だった。
どれだけ俺の側に張り付いていたのか。
頰が痩け、目が窪む程に。
良かった良かったと大喜びした癖に、あいつはその夜も動けない俺を殴りつけた。
俺がいつか死んでしまうのではないかと不安で仕方ないくせに、あいつは俺を傷付けることをやめられない。
…………本当に、どうしようもない男だった……。
泣き疲れて眠ったカースをベッドに残し、リンデルは分厚いカーテンの端を持ち上げると窓の外をうかがった。
外の雪はおさまりつつある。
まだ真夜中ではあったが、カースは眠っているし、これ以上いても同じ事なら少しでも早く帰ってやる方が、あの心配性の従者も安心して眠れるだろう。
そう判断して、リンデルは宿へ戻る事にする。
カーテンを戻すと、知らずため息が漏れた。
他の男を想って泣くカースを慰めることで、リンデルの心は擦り減っていた。
正直、これ以上ここにいたら、カースに酷い事を言ってしまうかも知れない。
内心そんな焦りもあった。
男を起こさぬよう、そっと扉を開ける。
が、木製の扉はギギィと派手に軋んだ音を立てた。
「……ゼフィア?」
背にかけられた小さな声に、リンデルは動きを止めた。
それは、掠れた声だった。
泣いたせいか、寝起きだからかも知れない。
けれどそれは、リンデルが未だかつて聞いたこともない、とても甘い、甘えた声だった。
開けた扉を速やかに閉じると、リンデルはベッドに蹲るカースにのしかかる。
ベッドが軋むと、背を丸めたままこちらを見ない男の、うっすら開いた瞳に恐怖と期待が滲んだ。
こんな……。こんな、カースの表情は見たことがなかった。
まだ半分ほどは夢の中なのか、泣き過ぎて腫れた瞼をとろりと瞬かせているが、それでも、今から行われる行為を、彼は拒否する気がない。
嫌だ嫌だと言っていたのは、口だけだったのだろうか。
それとも、嫌だったのは傷付けられる事だけで、ゼフィアに犯されること自体は、嫌ではなかったと……。
リンデルの心の奥が、ぐらぐらと熱く暗く沸き立ってゆく。
それに応えるように、体中に熱が広がる。
それでも、頭の片隅だけは酷く冷えていた。
黙ったまま、男の服をもう一度剥ぐ。
カースは一向にこちらを見ようとしない。
ただ、息を潜めて、与えられるはずの暴力への恐怖と、快楽への期待に震えている。
その姿に、青年の中に渦巻いた熱が、欲へと変わってゆくのを感じる。
青年が、背を向けている男の後孔へ指を這わせると、腰が僅かに浮いた。
指先で撫でれば、そこは既に、ふっくらと期待に膨らんでいた。
そんな……。
そんなはずでは…………なかった。
こんな事実は、……知りたくなかった。
……なのに……。
自ら、暴いてしまった……。
こんなに……。
こんなに、ゼフィアが好きだったなら、悲しくないわけがないじゃないか……。
青年は、信じたくない思いを抱えたまま、ゆるりとそこへ侵入した。
男が一瞬びくりと肩を震わせる。
リンデルは目を伏せると、その肩に口付けを落とした。
ゆるゆると中を解しながら一本、また一本と指を増やす。
声は上げずとも、カースの息が色付いてゆくのを感じる。
いつもカースがそうしてくれたように、優しく内側を撫でるように擦っていると、男が不安げにこちらを見た。
ああ、きっと、彼の知るゼフィアはこんな風に優しく彼を触ったことが無かったのだろう。
その不安そうな、気遣う視線だけで、リンデルはそう理解した。
「リ……っ。リン、デル……っ!?」
視界に金色の青年を収めたカースの顔が、見る間に青ざめる。
「お前っ……ど……っ」
次の瞬間、自身がどうなっているのかを知る。
「……っ何、してるんだ……」
男の驚愕が軽蔑へと変わる。
信じていた者に裏切られたような、そんな悲しみと憎しみの篭った視線をまっすぐ受け止めて、リンデルは口角だけを上げて答える。
「……何だと、思う?」
どこか自嘲を含んだ言葉とともに、青年は背を丸めた男に覆い被さる。
ぎしりとベッドが軋んで、カースの内側がきゅっと締まる。
そこでやっと、青年はこの音にカースが反応していた事に気付いた。
音だけで感じてしまうほどに、ここで、彼は繰り返しあの男に抱かれていた……。
青年は、目の前にあった男の耳をかじる。
「……っ!」
びくりと肩を揺らした男の中を、リンデルはかき混ぜる。
「や、め……っ!」
耳たぶへ優しく歯を立てながら、男の耳の中へと舌を差し込む。
水音を立てながら奥まで蹂躙し、首筋へと舌を這わせる頃には、男の頬はすっかり朱に染まっていた。
「カース、ここ、触って欲しかったんだね?」
「違っ……っっぅ……っ」
真っ赤になって、こんなに感じているのに、じわりと涙を浮かべ否定する男の悔しそうな顔が、たまらなく愛しくて。
でも、それをいつも見ていたのは俺じゃなくて……。
思わず、青年の指先に力が入る。
ぐりっと奥を突かれて、カースが短く鳴いた。
その声があまりに甘くて、リンデルはごくりと喉を鳴らす。
「こんな……可愛い声を、ゼフィアにいつも聞かせてたの?」
耳元で囁かれて、男がびくりと体を揺らす。
「ぁ……違……っ、ん……っ」
リンデルは、いつもカースがしてくれるようにカースの感じるところを探る。
手前を丹念に押してゆくと、ふっくらと膨らんだそれが、男が一際跳ねる部分が見つかる。
「ぅあっ!」
そこを指先で押さえつつ、全体を揺らす。
必死で声を殺そうとする男から、息と共に滲み出る嬌声に、青年は夢中になった。
「くぅ……ぅ、んっぅぅぅんんっっ!!!」
背を丸めて必死に堪える男が、息を詰め、ビクビクと激しく痙攣する。
ぎゅうっと千切れそうなほどに指を締め上げられて、青年は男が達したことを知った。
「カース……指だけで、イっちゃったの?」
「……っ」
男はこちらを見ようとしない。
「……本当は、ゼフィアにされて、嬉しかったんでしょ?」
嫉妬が、もうリンデルには抑えられなかった。
まだ時折痙攣しつつも、きゅうきゅうと締め付けてくる男の中を、また青年がかき混ぜる。
「や……っ、リンデル、や、め……っっ」
男が悔しさと恥ずかしさから唇を強く噛む。
唇が裂けて血の味が口の中に広がる。
これは、あの男が与える味だった。
どくんと男の体が脈打ち、燃えるような熱を感じる。
「っあ、あああっ」
「カース、気持ちいいんだね……」
「あっ、リン、デル……っ、や、ぁ……っっ」
男にとって守るべき存在だったはずの青年に責められ、さらには感じていると指摘され、男は恥辱に塗れたまま喘ぐ他なかった。
動く方の手は体の下に敷かれている。体で押し返そうにも、鍛え上げられたリンデルの体は重く、ビクともしない。
その間も、青年の長い指は男の中を蹂躙し続ける。
「ぅ……、くっ……、んっ、んんんんっ」
「嫌じゃ無いよね? カースの中、こんなにどろどろだもの」
リンデルが、ずるりと抜き取った指を男に見せる。
「……っ、やめ、ろ……」
男は、肩で息を継ぎながらも、顔を顰めて視線を逸らした。
あの男は気分屋で、前戯もなければ指を濡らすこともなく突っ込んでくることも多かった。
体液をなるべくたくさん分泌することは、自身を守るために自分の体が覚えた事だ。
「………………俺が、嫌なの?」
ぽつりと零された青年の言葉が、あまりに弱々しくて、男はハッと青年を見上げる。
その頬には涙が一筋伝っていた。
「ゼフィアはいいのに、俺はダメ……?」
言葉とともに、涙がもう一雫溢れる。
「そうじゃ、なくて……」
男は上がった息の合間から、何とか答える。
「俺は……俺はいつだって、カースだけなのに……。
カースは、俺だけじゃ、足りないの……?」
ぼろぼろと涙をこぼしながら、青年が訴える。
「そんな事……」
男は、言葉を返しきれない。
「俺が……あんま、り……会えない、から……?」
ゆらり、と青年が立ち上がる。
涙を拭くこともなく、ベッド脇の机へ手を伸ばす。
青年が手に取ろうとしているものが刃物だということに気付いて、男は青年の腕を引き、ぐいと青年をベッドに引き戻した。
「リンデル、お前……」
男の低い、唸るような声。
「馬鹿なことを考えるな」
ギッと睨みつけられて、どんな戦場でも怯まないはずの青年が怯んだ。
大方、怪我でもしようとしたのだろう。
負傷でこの村に留まるか、ともすれば、負傷引退か……。
どのみち、そんなことになった日には、あの従者に俺が殺されるに決まってる。
「っ、ぅ、カースの、ばか……っっ」
青年は泣きながら男の胸に縋り付く。
男は大きくため息を吐きながら、その背を撫でた。
「悪かった……。俺が、悪かったよ」
胸元で、ふるふると青年が首を振る。
男は、この明るく無邪気な青年を、そこまで追い詰めてしまった自身を責める。
こんなに、リンデルはいつだって俺だけを求めてくれるのに。
俺はその想いに応え切れていない……。
男が深い後悔に沈む。
俺を慰めて、こいつだって辛かったはずだ。
こいつの優しさに、俺ばかりがいつも甘えて、何ひとつ返せないままで……。
男は、小さく肩を震わせている青年の髪に口付けると、せめてもの誠意を伝える。
「リンデル……、俺は、お前に何がしてやれる……?」
問われて、ゆっくり青年が顔を上げる。
「カース……」
まだ涙の残った金色の瞳が、じっと男を見つめている。
「……なんだ?」
少し落ち着いてくれたらしいことにホッとしながら、男は精一杯優しく微笑む。
「……じゃあ、俺、カースに入れてもいい?」
「!?」
男の笑顔が引き攣る。
「だって、カースあんなに気持ち良さそうなのに……。
ゼフィアばっかりずるいよ。
俺だって、カースをとろとろにしたい!!」
「!?!?」
「…………だめ?」
潤んだままの瞳で上目遣いに見上げられ、カースがたじろぐ。
まさか。
まさか本当に、こいつは俺に、入れたかった、のか……?
さっきまで弄られていた男の下腹部に、じわりと熱が広がる。
「……っ。ダメじゃ、ない……」
男は顔を赤く染め、そう答えるだけで精一杯だった。
いつだったか、大熊なんて呼ばれてた大男がまだ盗賊団にいた頃。
ゼフィアがそいつに話していたのを聞いたことがある。
ずっと昔、大恋愛の末に駆け落ちをしたのだと。
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けれど愛した女性は、ある日あいつの下で肉塊へと姿を変えていたらしい。
あいつの暴力は、気持ちが昂るほどに酷くなる。
それも無理のない話だと俺は寝たふりをしたまま聞いていた。
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骨も太く折れにくかったし、多少の傷ならすぐ治る。
そんなところが、あいつには都合が良かったんだろう。
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あいつはそれを余るほどに持っていたが、その分、心が酷く欠けていた。
愛してると囁かれながら、肉を裂かれる。
口元で笑うあの男の、縋り付くような眼差しが嫌だった。
だから、最中は顔を見ないようにしていた。
時々あいつの乱暴で意識を飛ばしてしまうことがあった。
目を覚ませばいつも、あいつが泣きそうな顔で俺を見ていた。
あの時だってそうだ。
盗賊の里が魔物に襲われた日……。
腕を千切られ頭を打って血まみれだった俺を、騎士達の合間を縫って助けたのはあいつだった。
失血が酷く、俺は何日も眠っていたらしい。
目覚めた俺が最初に見たのは、やはり、あいつの泣き顔だった。
どれだけ俺の側に張り付いていたのか。
頰が痩け、目が窪む程に。
良かった良かったと大喜びした癖に、あいつはその夜も動けない俺を殴りつけた。
俺がいつか死んでしまうのではないかと不安で仕方ないくせに、あいつは俺を傷付けることをやめられない。
…………本当に、どうしようもない男だった……。
泣き疲れて眠ったカースをベッドに残し、リンデルは分厚いカーテンの端を持ち上げると窓の外をうかがった。
外の雪はおさまりつつある。
まだ真夜中ではあったが、カースは眠っているし、これ以上いても同じ事なら少しでも早く帰ってやる方が、あの心配性の従者も安心して眠れるだろう。
そう判断して、リンデルは宿へ戻る事にする。
カーテンを戻すと、知らずため息が漏れた。
他の男を想って泣くカースを慰めることで、リンデルの心は擦り減っていた。
正直、これ以上ここにいたら、カースに酷い事を言ってしまうかも知れない。
内心そんな焦りもあった。
男を起こさぬよう、そっと扉を開ける。
が、木製の扉はギギィと派手に軋んだ音を立てた。
「……ゼフィア?」
背にかけられた小さな声に、リンデルは動きを止めた。
それは、掠れた声だった。
泣いたせいか、寝起きだからかも知れない。
けれどそれは、リンデルが未だかつて聞いたこともない、とても甘い、甘えた声だった。
開けた扉を速やかに閉じると、リンデルはベッドに蹲るカースにのしかかる。
ベッドが軋むと、背を丸めたままこちらを見ない男の、うっすら開いた瞳に恐怖と期待が滲んだ。
こんな……。こんな、カースの表情は見たことがなかった。
まだ半分ほどは夢の中なのか、泣き過ぎて腫れた瞼をとろりと瞬かせているが、それでも、今から行われる行為を、彼は拒否する気がない。
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それとも、嫌だったのは傷付けられる事だけで、ゼフィアに犯されること自体は、嫌ではなかったと……。
リンデルの心の奥が、ぐらぐらと熱く暗く沸き立ってゆく。
それに応えるように、体中に熱が広がる。
それでも、頭の片隅だけは酷く冷えていた。
黙ったまま、男の服をもう一度剥ぐ。
カースは一向にこちらを見ようとしない。
ただ、息を潜めて、与えられるはずの暴力への恐怖と、快楽への期待に震えている。
その姿に、青年の中に渦巻いた熱が、欲へと変わってゆくのを感じる。
青年が、背を向けている男の後孔へ指を這わせると、腰が僅かに浮いた。
指先で撫でれば、そこは既に、ふっくらと期待に膨らんでいた。
そんな……。
そんなはずでは…………なかった。
こんな事実は、……知りたくなかった。
……なのに……。
自ら、暴いてしまった……。
こんなに……。
こんなに、ゼフィアが好きだったなら、悲しくないわけがないじゃないか……。
青年は、信じたくない思いを抱えたまま、ゆるりとそこへ侵入した。
男が一瞬びくりと肩を震わせる。
リンデルは目を伏せると、その肩に口付けを落とした。
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いつもカースがそうしてくれたように、優しく内側を撫でるように擦っていると、男が不安げにこちらを見た。
ああ、きっと、彼の知るゼフィアはこんな風に優しく彼を触ったことが無かったのだろう。
その不安そうな、気遣う視線だけで、リンデルはそう理解した。
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そこでやっと、青年はこの音にカースが反応していた事に気付いた。
音だけで感じてしまうほどに、ここで、彼は繰り返しあの男に抱かれていた……。
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「……っ!」
びくりと肩を揺らした男の中を、リンデルはかき混ぜる。
「や、め……っ!」
耳たぶへ優しく歯を立てながら、男の耳の中へと舌を差し込む。
水音を立てながら奥まで蹂躙し、首筋へと舌を這わせる頃には、男の頬はすっかり朱に染まっていた。
「カース、ここ、触って欲しかったんだね?」
「違っ……っっぅ……っ」
真っ赤になって、こんなに感じているのに、じわりと涙を浮かべ否定する男の悔しそうな顔が、たまらなく愛しくて。
でも、それをいつも見ていたのは俺じゃなくて……。
思わず、青年の指先に力が入る。
ぐりっと奥を突かれて、カースが短く鳴いた。
その声があまりに甘くて、リンデルはごくりと喉を鳴らす。
「こんな……可愛い声を、ゼフィアにいつも聞かせてたの?」
耳元で囁かれて、男がびくりと体を揺らす。
「ぁ……違……っ、ん……っ」
リンデルは、いつもカースがしてくれるようにカースの感じるところを探る。
手前を丹念に押してゆくと、ふっくらと膨らんだそれが、男が一際跳ねる部分が見つかる。
「ぅあっ!」
そこを指先で押さえつつ、全体を揺らす。
必死で声を殺そうとする男から、息と共に滲み出る嬌声に、青年は夢中になった。
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男はこちらを見ようとしない。
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嫉妬が、もうリンデルには抑えられなかった。
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「や……っ、リンデル、や、め……っっ」
男が悔しさと恥ずかしさから唇を強く噛む。
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これは、あの男が与える味だった。
どくんと男の体が脈打ち、燃えるような熱を感じる。
「っあ、あああっ」
「カース、気持ちいいんだね……」
「あっ、リン、デル……っ、や、ぁ……っっ」
男にとって守るべき存在だったはずの青年に責められ、さらには感じていると指摘され、男は恥辱に塗れたまま喘ぐ他なかった。
動く方の手は体の下に敷かれている。体で押し返そうにも、鍛え上げられたリンデルの体は重く、ビクともしない。
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「嫌じゃ無いよね? カースの中、こんなにどろどろだもの」
リンデルが、ずるりと抜き取った指を男に見せる。
「……っ、やめ、ろ……」
男は、肩で息を継ぎながらも、顔を顰めて視線を逸らした。
あの男は気分屋で、前戯もなければ指を濡らすこともなく突っ込んでくることも多かった。
体液をなるべくたくさん分泌することは、自身を守るために自分の体が覚えた事だ。
「………………俺が、嫌なの?」
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その頬には涙が一筋伝っていた。
「ゼフィアはいいのに、俺はダメ……?」
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ゆらり、と青年が立ち上がる。
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大方、怪我でもしようとしたのだろう。
負傷でこの村に留まるか、ともすれば、負傷引退か……。
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「っ、ぅ、カースの、ばか……っっ」
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「悪かった……。俺が、悪かったよ」
胸元で、ふるふると青年が首を振る。
男は、この明るく無邪気な青年を、そこまで追い詰めてしまった自身を責める。
こんなに、リンデルはいつだって俺だけを求めてくれるのに。
俺はその想いに応え切れていない……。
男が深い後悔に沈む。
俺を慰めて、こいつだって辛かったはずだ。
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男は、小さく肩を震わせている青年の髪に口付けると、せめてもの誠意を伝える。
「リンデル……、俺は、お前に何がしてやれる……?」
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「……なんだ?」
少し落ち着いてくれたらしいことにホッとしながら、男は精一杯優しく微笑む。
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「!?」
男の笑顔が引き攣る。
「だって、カースあんなに気持ち良さそうなのに……。
ゼフィアばっかりずるいよ。
俺だって、カースをとろとろにしたい!!」
「!?!?」
「…………だめ?」
潤んだままの瞳で上目遣いに見上げられ、カースがたじろぐ。
まさか。
まさか本当に、こいつは俺に、入れたかった、のか……?
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