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ボスは女の子みたいです

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「さてと…森に戻ってきたわけだけど…アリス。フォレストキングの位置は分かる?」

『ちょっと待ってくださいね…さっきの気配を見つけて…いました!あっちです!』

アリスがそう言うと森の奥の方へ矢印が現れた。

つまりはこれを辿っていけばフォレストキングのいるところへたどり着けるということだろう。

『ギルマスさんたちと合流しなくていいんですか?』

「うーん。ギルマスは先に行けって言ってたしなぁ…」

それはつまり出来れば体力を削っておいて欲しいという意味も込められているのだろう。

それにフォレストキングがフルの体力だったら確実にギルマスたちは負ける。

「アリス。アイテムボックスからヴァルレイピアを出してくれ。」

『分かりました。』

僕はアリスに出してもらったヴァルレイピアを握りしめる。

「アリス。フォレストキングをここに誘き出したい。出来る?」

『もちろんです。』

アリスがそう言うとどこからか不思議な音が鳴り始めた。

次第にその音に導かれて魔物が集まってくる。

どうやらこの音には魔物を引き寄せる力があるらしい。

「肝心のフォレストキングはどこに…?」

ゴブリンやスライム、コボルトなんかはいるがどれもキングという感じではない。

消去法で行くと残っているのは黄緑色の髪をしていて目が赤い小さな女の子のみだが…。

流石に女の子がキングっていうのはおかしいか。

それならフォレストプリンセスとかクイーンとかそんな感じになるだろうし。

「アリス。この中にフォレストキングはいないみたいなんだが…」

『…いえ。間違いなくあの子です。最初に感じた波長と一致しています。』

「あの子って…嘘だろ?」

アリスの矢印が指し示す先には先ほどの小さな女の子がいた。

「君が…フォレストキングなの?」

僕がそう訊ねると女の子はこくりと頷いた。

《証拠を見せる。》

そんな声と共に少女の姿は大きな鳥の魔物へと変わった。

僕の何倍もの大きさはある。

「これが…フォレストキング…」

『ご主人!とんでもない圧です…。』

「わかってる。僕は君に用があってきたんだ。」

《私に用?》

「うん。一応君を倒しに来たんだけど」

《私を倒しに?》

「そう。ギルドからの緊急依頼でね。」

《残念ながら私は倒せない》

「どうして?」

《あなたじゃ力が足りない。自分で言うのもなんだけど私は強い。》

「そんなのやってみないと分からないだろ?」

そういって僕はヴァルレイピアを構える。

《…なら試すといい。私にどこまで通用するのか。》

そういってフォレストキングは大きく翼をはためかせて竜巻を起こす。

『マスター!強力な攻撃が来ます!』

「分かってる…!」

分かってはいるのだが相手の攻撃が早くて避けきれない。

ヴァルレイピアで相殺するのが精一杯だ。

避ける隙がない。

《さっきのを防ぐなんて中々。並みの人間だったら切り刻まれてた。》

「どうも」

《でもまだまだこれから…!》

「なんとか反撃の機会があればいいんだけど…」

フォレストキングには隙という隙は全くもって見つからない。

「アリス。フォレストキングの弱点を探れる?」

『ダメです!レベル差がありすぎて鑑定も弱点を調べることも出来ません!』

「まじか…」

《私の前で突っ立ってるなんて随分余裕ある。》

「余裕はないんだよね…。」

《じゃあこれはどう?》

そういってフォレストキングは竜巻を発生させる。

「くっ…!」

なんとか僕は後ろに下がって避けるものの体のあちこちに切り傷が出来る。

完全には避けきれなかったらしい。

『回復スキルを使いますか?』

「そうだね…。一応掛けとこうか…」

『了解しました。』

アリスに回復魔法を掛けてもらってなんとか体勢を立て直す。

「…僕はまだ戦える!」

僕が真っすぐフォレストキングの目を見つめるとしばらく黙っていたが

フォレストキングは口を開いた。

《…私の負けでいい。》

そういってフォレストキングは大きな鳥の姿から女の子の姿へと戻る。

よく分からないけど僕の勝ち…ということになるらしい。

《私と対峙した冒険者はいままですぐに死ぬか逃げ出すかの二択だった。でもあなたは違った。それに強い人は好き。》

「そっか。じゃあありがたくこの栄誉は受け取ることにするよ。」

《そうするといい、あと私もあなたについてく。》

「…はい?」

《あなたを気に入ったから私も付いていく。》

「…森はどうするの?」

《大丈夫。フォレストキングの称号を適当に強そうなのに渡すから》

そういってフォレストキングは適当な魔物に声を掛ける。

『な、なんでしょうか…フォレストキング様…』

《あなたにフォレストキングの称号を与えます。》

『…え?』

《つべこべ言わず受け取りなさい。》

『ちょっ!』

女の子は相手の魔物の意見を聞かずにフォレストキングの称号を押し付けた。

《これで私は普通の女の子。あなたがフォレストキング。そしてあなたは倒されたことにすれば完璧。》

『なにも完璧じゃないんですけど…』

《口答えはなしの方向で。》

「…ほんとにいいの?」

《いい。きっとあの子なら私よりうまく森を治められる。》

「そっか。ならいいんだけど。」

《私のことはレラって呼んで欲しい。》

「僕はサチ。よろしく。レラ。」

《よろしく。》

そんな話をしているとギルマスがたくさんの冒険者を連れて到着した。

「サチ!フォレストキングはどこだ!」

「倒したよ。」

僕はレラを隠してからギルマスに対応する。

わざわざ隠す必要もないけどまぁ念のためってやつだ。

「なんだと!?それは凄いな。みんな撤収だ!」

そういってギルマスたちは帰っていった。

何しに来たってれべるなんだけど…それは黙っておこう。

「さて…僕たちも帰ろうか。」

『帰りましょう』

《分かった。》

そういって僕らも町へと帰るのだった。
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