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14話 旅初日、初昼食
しおりを挟むセラを救護することとなった昨日の事があるため、各現場を避けるように北の方向へと歩を進めることに決めた。
三者三様ではあるが、誰にとっても良い場所ではないのだから近づく必要もない。
やはり大きな森林なのであろう、少々歩いたからと言って風景に変化など現れず、時折エリィが何かを摘み取るのに立ち止まるくらいだ。
お昼になったところで、目についた大きな木の根元に3者は座り込んで昼食を摂ることに決める。
爪ウサギの肉をエリィが収納から取り出し、器用にその辺で拾った枝を串代わりにして火で炙る。肉塊のままだと中まで火が通るのに時間がかかるので、ちゃんとナイフで薄めに切ってある。
その間にアレクとセラで周辺の警戒を終えてから、結界石をエリィに出してもらって設置した。
塩も何も調味料の類を持ち合わせていない(小屋にその辺は残っていなかった)ので味もへったくれもないものではあったが、腹は満たされたので文句はない。
セラだけは炙っただけでも満足そうなのが複雑な心境ではあるが。
「小屋にいる間に調味料魔法で出しとくんだったわ」
「浄化石も設置しとくか? まぁ設置してから魔素がある程度満ちるまでたぶん数か月以上かかるけど、それでもええ?」
「………そのうち人里へ出たときにどうにかしましょ」
魔獣肉から補充される魔力で出来ることと言えば、少しの水や火を出したり浄化したり等、体内魔力でどうにかなる魔法の威力や射程なんかを少々上げる程度。
小屋でやっていたような食事を出したりなどは消費魔力が多めで、今の魔力事情では難しいのだから仕方ない。
「「「………」」」
昼食を終え、少しだけ食後休憩を取った後は黙々と歩き続ける。
エリィとセラは続く沈黙が苦にならないようだが、アレクには耐えられなかったようだ。
「なんで二人ともそないに黙ってられるんや!?」
歩みを止めないまま唐突に響く声に、エリィとセラが不可解だと言いたげに首を傾げる。
「そう言われても、話すネタなんてないし、体力無駄に使いたくないし? 木の根もはってて歩きづらいから更によ」
「提供するに相応しい話題がわからぬ、すまない」
至極当たり前な返事にアレクがうぐ…と言葉を詰まらせる。
「第一もうこの辺りは私来た事ない場所だし、探索スキル発動させて警戒しつつの移動なんだから無駄口叩いてる暇ないわよ」
「エリィはやっぱり冷たいなぁ」
「本気で失礼ね、薄情なのは認めるけど」
やっぱり認めるんやんか~~~と、アレクが半泣きで抗議しているのを後目にエリィが立ち止まって左側に顔を向ける。
角は崩れてひび割れ風化はしているが、綺麗に切り出された痕跡のある四角柱の石材のようなものが散在しているのに気が付いた。
一辺が30cmほどの石柱で、どれもエリィの腰辺りまでの高さしかない。傾いたり倒れたりしてはいるが、よくよく見れば等間隔に並んでいるようにも見える。
「ここって何か人工物があった?」
エリィに問われてアレクがエリィと同じ方向へ顔を向ける。セラはというと石柱からエリィ達に目線を戻したところだ。
「あ~、なんやったっけかな、最近は知らへんけど、随分以前には国があったんやなかったかな」
「へぇ、さしずめ兵どもが夢の後ってか」
「せや、たしかイルシュリクとかって名前やった気がする!」
「気がするって、まぁいいけどさ」
「このまま北上したらどこに行くの?」
「僕はずっとエリィ探しにあっち側いってたから、最近の事はよう知らんけど、前の情報でよかったらあるで。ディファルト帝国っちゅう国があったはずや」
「なるほど、で、その帝国とやらが行先?」
エリィから視線を外し、深く木々に遮られている北方向を遠く見つめる。その表情はどこか冷たく険しくて、エリィとセラは同時に小さく息をのんだ。
「いや…今は行かへんで」
「そ、そう」
咄嗟に返事はしたものの、言いようのない冷えた空気に言葉が続かない。
自分以外の様子にハッと気づいたアレクが、えへっと相好を崩す。
「えっと、な…もうかなり離れたし、そろそろ遺跡…ダンジョン? どっちかっていうたらやっぱ遺跡やろか? まぁどっちでもええわ そっちに進路変更するで! まぁ到着するんは早うて明日やろけどな!」
そろそろ夕刻なのだろう、薄暗くなってきた。
日が落ち切る前に適当なキャンプ地を探して初野宿と洒落こむとしよう。
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