40 / 716
2021
空瓶
しおりを挟むショッピングモールで一日過ごし、すっかり日が落ちた中を俺たちは繁華街から離れる方向に歩いていた。
何を隠そう、これからホテルで一泊するためだ。しかもラブが付く方の。
「七海?」
「………は、はい……」
「大丈夫か?」
「………は、はい……」
俺が何処を目指しているのかは少しでも地理に精通していればわかる。
賑やかな中心街からは離れた裏通りのような場所。近づくにつれて七海の落ち着きが無くなって行くのがわかった。
そういう俺もホテルに行くのは久しぶりなのでワクワクしている。
特に毎回受け付けをする度に驚愕した目で見られるのが俺のお気に入り。
こういう系統のホテルはこの世界だと、男性が少ないことで発生したユリカップルによって使われることが多い。もちろん男性が使っても問題は無い。
周りがユリな分、俺にとっては楽園のような場所とも言えるかもしれない。
「行くよ?」
「……はい!」
七海に一声かけてからホテルの入り口にある扉を押して中に入る。
内装はピンク色の壁にピンク色の明かりを使っており、とにかくそういう店にありがちなピンク一色だった。
「すみません、いいですか?」
「はい……はい?!え、?!………ご、ごほん。失礼しました。こちらのプランから希望するものを選択してください。」
「ありがとうございます」
被害者累計百人近くが存在する中、この受付嬢も言い反応をしてくれた。
チラチラと俺と七海に視線を送るのは果たして。嫉妬なのか、羨望なのか、それとも正義感なのか。
「宿泊でお願いします。部屋はノーマルの洋室で」
「?!……承りました。開始まで時間がありますが、いかがしますか」
「うーん、直ぐに部屋に入りたいので休憩でお願いします」
「わ、わかりました……お会計は〇〇〇〇◯円になります」
俺は財布を取り出し料金を支払う。俺は七海と違って給料をもらっているので俺の驕りだ。
「せ、先生……すみません後で払います」
「驕りだから気にするな」
「……で、でもっ」
「とりあえず部屋に行こうか」
「……わかりました」
受付嬢から部屋番号が書かれたキーを受け取ると、俺と七海はエレベーターを使って部屋に向かった。床にはこれまたピンク色の絨毯が敷き詰められているため、足音が響くこともなく、結構当たりのホテルだと思った。
部屋に入ると、ベッドにソファーにテレビがあり、そして暗めのライトによってぼんやりした空間が広がっていた。
「……凄いです……」
七海は始めて来たようで当たりを見渡して感動していた。
「そうだな……七海」
「っ……はい……!!」
ここはもう周囲の目を一切気にする必要の無い密室。
俺は横にいる七海を抱きしめると、お互いの唇を交える。
しばらくしてから、俺たちはベットへと向かった。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説




ヤバい薬、飲んじゃいました。
はちのす
BL
変な薬を飲んだら、皆が俺に惚れてしまった?!迫る無数の手を回避しながら元に戻るまで奮闘する話********イケメン(複数)×平凡※性描写は予告なく入ります。
作者の頭がおかしい短編です。IQを2にしてお読み下さい。
※色々すっ飛ばしてイチャイチャさせたかったが為の産物です。
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる