140字BL缶詰

阿沙🌷

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2019

12月⑥雑踏の中で/夢想/駆け落ち

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雑踏の中で 2019.12.16
雑踏に飲み込まれ、
混みの渦の中見慣れた背中を探す。
こんな目に合うなら
外出しなければ良かった。
そんなふうに思う弱々しい自分が情けない。
誰かにぶつかった。
慌てて離れようとするが
その人は抱きしめるように僕を離さない。
「やっと見つけた!」
彼だった。
毎回、その体温に救われる。

夢想 2019.12.17
どこか遠いところに行きたい。
僕のことを知っている人は
誰もいなくて
僕が知っている人も
誰もいない。
そんな場所。
彼の姿もそこにない。
そのうちに僕は
ゆっくり彼を忘れていく。
馬鹿だな。
そんな夢想している自分に
失笑してしまう。
どれだけ想っても報われなくても、
もうどうしょうもないのに。

駆け落ち 2019.12.18
過ぎゆく電車を見送った。
遠のく風は彼のマフラーの端を揺らす。
手袋を無くした指先で
握る彼の手の体温は
ゆっくりと空気と同化していく。
「次、乗ろっか」
頷いた彼の瞳に力が入った。
静寂を切り裂くガタンゴトン。
スピードを落として
ホームに乗り込んできた列車の体内に
僕たちは飲み込まれていった。
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