140字BL缶詰

阿沙🌷

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2019

8月①肩もみ/麦茶/蚊にさされ/ひっくり返る/嘔吐/別れの朝

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ひっくり返る 2019.08.06(火) 
「うわっ死ぬぅっ!」
道端にうつ伏せの蝉は懸命に羽ばたき、
起き上がろうとしている。
それを発見した彼は飛び上がり
俺の腕に抱きついてきた。
虫が怖くて死にそうな彼、
縮まる距離に死にそうな俺。
高鳴る心臓は熱い血液を送る。
苦しむ蝉は這い上がるように
起き上がると羽を震わせ空へ消えた。

嘔吐 2019.08.05(月) 
君の背中を追い越したくて
頬張った給食を嘔吐した。
元食糧たちは床に叩きつけられ、異臭を放つ。
「うげぇ」と嫌悪を顕にして遠巻きに人並み。
それを抜けてすぐに助けに来てくれるのが
いつも君なのだ。
「大丈夫? 保健室行こうぜ」
肩を優しく叩かれる度に思う。
この背中には追いつけない。 

別れの朝 2019.08.04(日) 
別れたいという彼からのメールを
昨夜受信していたのだが、
それに気がついたのは午前五時。
早起きは三文の得というが
自分はなんだか虚しい。
風を感じたくて窓を開けると
蝉の声がなだれ込んでくる。
「蝉ってなんで鳴くのかな」
確か求愛の為だとかなんとか。
小さな親近感と涙。


肩もみ 2019.08.03(土) 
「痛い!」
握力が強い。
それは大いに結構。
だが肩揉みには手加減が必要だ。
「まじすか」
「マジだよ」
急に弱くなった手つきはなんだか頼りない。
「やっぱやめてくれ」
そう言いかけたが、
遠くで風が鈴を鳴らした。
凛として夏に響く。
苛立ちを萎めて、
まあこんな日もいいだろうと僕は肩預けた。

麦茶 2019.08.02(金) 
こぼした麦茶が彼のわき腹をなでていく。
彼の服は水を吸い濃く色付いて肌色を透かす。
相手は憧れの先輩だ。
それなのに……。
失態に一時停止してしまい慌てた。
何とか挽回しなければ。
必死に謝って水気を拭く。
だが彼を見て息を飲んだ。
「相変わらずドジだな」と
彼は笑みをこぼしていたのだ。

蚊に刺され 2019.08.01(木) 
「お前の首筋、エロくなっているぜ」と、
からかい調子の友人が言った。
確かめてみると虫刺されだろう。
赤く盛り上がっている。
「全然かゆくなかった」と言えば
「鈍感だな」と返された。
とりあえず薬だけは塗っておこう。
夏を感じる僕の血は、
彼女が生む子供への供物になったのだろうか。 
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