夏の熱さをおそれているか

阿沙🌷

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✿初稿

19.

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「書く話は出来ているんですか?」
「いんやぁ? ないわー」
「ほら、できないですよ、もうそんなやつ帰して俺たちも帰りましょう、千尋さん!」
「やんだぁ、震え上がっちゃってぇ」
「こいつと夜一緒にいると、ずっと鳥肌たってたまんないですよ」
「わあお、作家にたいして、こいつ呼ばわりとか、超うけるー」
「うけてないで、あなたが花荻になにかしでかしたんでしょう」
「ちーちゃん、どっちの味方なのさあ!」
 どっちの味方って?
「まあ、いいや、千尋、お前、いますぐ、筆をとれ」
 松宮の声音が変わった。低く、よくとおる声だった。
「いますぐにだ。あと二時間与える。やれ」
「ちょ、ちょっと、先生!?」
「お前なら、ネタがなくても書けるだろう。やれ」
「ま、まさか、ぼくに、プロットを書けと?」
「そうだよ、誰がいるんだよ。やれ。いっとくけど、ふつーにダサいやつ、書くなよ。お前が書かなくちゃいけない状態、このいま置かれている状態がわかるよな? だまってんなよ。もう五分すぎたぞ」
 秒針の音が聞こえる。違う。これは心臓の音だ。
「な、何いってるんですか! 俺たちは編集者で、プロットなんて!」
 助け船をだそうとしてくれたのかもしれない。そんな花荻に松宮は一喝した。
「部外者は黙ってろ!」
 そして千尋も一喝した。
「彼は部外者じゃない!」
 千尋が大きな声をだしたのに、花荻はぎょっとした。
「彼はメンバーだ。一緒に雑誌を作っている。部外者なんかじゃない」
 むしろ悪いことをしているのは自分のほうだ。いつも、気にかけてくれて、声をかけてくれるのに。あたえられたことばに、まるでマニュアル通りにしか答えられない。気持ちをのせてかえすことができない、自分が、いる。
 空耳が聞こえた。
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