1 / 1
若返りの秘密
しおりを挟む
「なあ、最近、お前ってなんか……そう、時が戻ったって感じがするんだけどなぁ」
「へ?」
昼休みの喧騒の中、大学の学食でから揚げ定食をほおばっていた俺に対して学友がそんなことを言い出した。
「なんか、若返っていない? いままで、目の死んだ老人みたいな感じだったのに」
「なんだよ、それ」
わけのわからないことを言い出す彼に苦笑する。
「だってさぁ、初めて会った時もなんか、今にも枯れますって感じで、全然若者って感じがしなかったじゃないか」
「若者だよ。まだ二十代だしね」
「年齢じゃなくて雰囲気。それが最近、一気にキラキラ感を増してきて、いまや若者の中の若者じゃんか、お前。何かあったのかよ」
「何かって……」
最近あったことといえば、あれだ。だけれど、さすがにひとにはいえない。だから少し言いよどむ。
「なあ、いいアンチエイジングの方法があるのなら言えって」
「え~?」
「何がそこまでお前を変えたのか、しりたいじゃんか!」
「それは……」
口が裂けても言えない。
「あ、わかった」
「へ?」
「最近、学部で一番モテてるあの御曹司と仲いいじゃん」
「へ、へぇ!?」
やば、思わず声が裏返ってしまった。
御曹司というのは、あの大企業Fグループ会長の一人息子のこと。そんな彼は俺と同じ大学、しかも同じ学部に通学してきている。
接点なんて特にないくらい暮らしている世界が違う存在。けれど、ひょんな事件から俺は確かに彼との距離を、それこそ急速に縮めていた。
まあ、事件っていうか、廊下で彼とすれ違ったとき、彼が落としてしまったハンカチを俺が拾って、そこからいろいろと関係が――って、そんな場合ではなかった。
「もしかして?」
「い、いやいや、そんなことはまだないし」
「へぇ? まだ何も言ってないけど」
「え、あ……」
「てことは、やっぱり御曹司くん関連かな?」
「いや、違うし!」
「じゃあ、なんだよ!」
逃すものかとばかりに問い詰めてくる学友。逃げるのはしんどそうだ。
「恋! してるみたいなんだって!」
そう叫んでしまって、はっと我に返る。
しまった。
つい、問い詰められてそう答えてしまった。
「はぁん……なるほど」
「違うからね!?」
「あのモテ男に女子、紹介してもらったってことか」
「はぁ!?」
ま、まさかそっちにくるとは。
「で、誰? 俺の知ってるひと?」
知ってはいると思うけど。
誰って、その……御曹司くんなんだけどなぁ。
(了)
「へ?」
昼休みの喧騒の中、大学の学食でから揚げ定食をほおばっていた俺に対して学友がそんなことを言い出した。
「なんか、若返っていない? いままで、目の死んだ老人みたいな感じだったのに」
「なんだよ、それ」
わけのわからないことを言い出す彼に苦笑する。
「だってさぁ、初めて会った時もなんか、今にも枯れますって感じで、全然若者って感じがしなかったじゃないか」
「若者だよ。まだ二十代だしね」
「年齢じゃなくて雰囲気。それが最近、一気にキラキラ感を増してきて、いまや若者の中の若者じゃんか、お前。何かあったのかよ」
「何かって……」
最近あったことといえば、あれだ。だけれど、さすがにひとにはいえない。だから少し言いよどむ。
「なあ、いいアンチエイジングの方法があるのなら言えって」
「え~?」
「何がそこまでお前を変えたのか、しりたいじゃんか!」
「それは……」
口が裂けても言えない。
「あ、わかった」
「へ?」
「最近、学部で一番モテてるあの御曹司と仲いいじゃん」
「へ、へぇ!?」
やば、思わず声が裏返ってしまった。
御曹司というのは、あの大企業Fグループ会長の一人息子のこと。そんな彼は俺と同じ大学、しかも同じ学部に通学してきている。
接点なんて特にないくらい暮らしている世界が違う存在。けれど、ひょんな事件から俺は確かに彼との距離を、それこそ急速に縮めていた。
まあ、事件っていうか、廊下で彼とすれ違ったとき、彼が落としてしまったハンカチを俺が拾って、そこからいろいろと関係が――って、そんな場合ではなかった。
「もしかして?」
「い、いやいや、そんなことはまだないし」
「へぇ? まだ何も言ってないけど」
「え、あ……」
「てことは、やっぱり御曹司くん関連かな?」
「いや、違うし!」
「じゃあ、なんだよ!」
逃すものかとばかりに問い詰めてくる学友。逃げるのはしんどそうだ。
「恋! してるみたいなんだって!」
そう叫んでしまって、はっと我に返る。
しまった。
つい、問い詰められてそう答えてしまった。
「はぁん……なるほど」
「違うからね!?」
「あのモテ男に女子、紹介してもらったってことか」
「はぁ!?」
ま、まさかそっちにくるとは。
「で、誰? 俺の知ってるひと?」
知ってはいると思うけど。
誰って、その……御曹司くんなんだけどなぁ。
(了)
0
お気に入りに追加
2
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。
白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。
最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。
(同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!)
(勘違いだよな? そうに決まってる!)
気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる