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✿04:男の味なんて知りたくなかった
****23.犯人(3)
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心臓が早鐘を打つ。どっと汗が吹き出してきた。指先が震える。喉が渇く。
おそるおそる――だなんて、いうわけじゃない。身体が動かなくなって、そのまま立ち尽くす。
(ばれた――)
一瞬で、最悪の事態の想定が脳裏に浮かんだ。
しまった。
それに気が付いて、癒月は、さっと身をひるがえすように、背後をみた。
(まずい――!!)
敵は一体だけではなかった。
ずんぐりとした図体のでかいその生物が、眼光をきらめかせて、こちらを見ていた。
どうする?
このまま逃げるか――。
にしても、前後をこいつらにはさまれている。どのくらい素早く動けるかによる。にしても――。
「何をしている、人間」
そう、言葉が通じる。行動に出るより――。
「それは、こちらの台詞ってもんだ」
癒月は害意がないことを証明するために、両手を軽く上にあげた。前方の化け者と後方の化け物。両者に注意を保ったままというのは、少しつらい。
「なぜ、こんな場所にいる? ここは人間の暮らす街だ。そう簡単に魔物が出入りできるとは思えない」
「――よくしゃべるな」
(ん?)
「俺らを見て、よくそこまで話せるな」
「おいおい、なんだよ。話しかけてきたのは、そっちじゃないのか」
「そりゃそうなんだが――」
「それより、答えは? 何故、お前たちみたいなものがここにいるんだ」
「それは、もうすぐ、ここが灰になるからだ」
「――は?」
「いままで受けてきた屈辱――お前たちが俺たちにしたことを、覚えていないのか?」
(な……どういう意味だ?)
癒月はじっと彼らを見た。
彼らに表だった変化は見られない。ただ淡々と、癒月との距離を詰めてくる。
(どうする? やつらの目的が知れねえ……)
さっと、周囲を確認する。
逃亡の経路を頭のなかに描く。やるなら、一瞬が勝負だ。
癒月が距離を測ろうとした時だった。
おそるおそる――だなんて、いうわけじゃない。身体が動かなくなって、そのまま立ち尽くす。
(ばれた――)
一瞬で、最悪の事態の想定が脳裏に浮かんだ。
しまった。
それに気が付いて、癒月は、さっと身をひるがえすように、背後をみた。
(まずい――!!)
敵は一体だけではなかった。
ずんぐりとした図体のでかいその生物が、眼光をきらめかせて、こちらを見ていた。
どうする?
このまま逃げるか――。
にしても、前後をこいつらにはさまれている。どのくらい素早く動けるかによる。にしても――。
「何をしている、人間」
そう、言葉が通じる。行動に出るより――。
「それは、こちらの台詞ってもんだ」
癒月は害意がないことを証明するために、両手を軽く上にあげた。前方の化け者と後方の化け物。両者に注意を保ったままというのは、少しつらい。
「なぜ、こんな場所にいる? ここは人間の暮らす街だ。そう簡単に魔物が出入りできるとは思えない」
「――よくしゃべるな」
(ん?)
「俺らを見て、よくそこまで話せるな」
「おいおい、なんだよ。話しかけてきたのは、そっちじゃないのか」
「そりゃそうなんだが――」
「それより、答えは? 何故、お前たちみたいなものがここにいるんだ」
「それは、もうすぐ、ここが灰になるからだ」
「――は?」
「いままで受けてきた屈辱――お前たちが俺たちにしたことを、覚えていないのか?」
(な……どういう意味だ?)
癒月はじっと彼らを見た。
彼らに表だった変化は見られない。ただ淡々と、癒月との距離を詰めてくる。
(どうする? やつらの目的が知れねえ……)
さっと、周囲を確認する。
逃亡の経路を頭のなかに描く。やるなら、一瞬が勝負だ。
癒月が距離を測ろうとした時だった。
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