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✿04:男の味なんて知りたくなかった

****13.襲撃の後(1)

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「一体、誰がこんなことを……」

 凄惨な現場に、ことばを失って立ち尽くす人々の群れがあった。

「カンジさん!」

 癒月は、彼の姿をその中に見つけてかけよる。彼は魂を抜き取られたかのように、茫然と立ち尽くしていた。

「何があったんですか?」

 走りよってきた、癒月に気が付いても、まだ、頭がショックで現実に追いついていないらしい。カンジは歯切れが悪かった。

「わからない。朝になって見て見ればこうなっていたらしい」
「一体、何が……」

 言いかけて、癒月は口をつぐんだ。
 一晩で、こんなふうに破壊行動をとったとなれば、そうとうの強者、もしくは集団での犯罪となろう。

「すみません。関係者は、順番に事情聴取を受けてもらいます」

 次第に、現場があわただしくなってきた。

「ごめん、ユージィンちゃん。また、今度ね」

 カンジのさみしげな背中が情報提供の列へと並ぶ。

「大変なことになったな」

 グレイが神妙な顔つきで、癒月に話しかけた。
 癒月は、現場にある痕跡を見つけていた。

「グレイさん。これは、もう、入り込んでいると思っていたほうがいいかもしれないです」
「へ?」
「ちょっと、こっちに来てもらえますか?」

 癒月は、グレイの手をとった。
 グレイがびくりと肩を震わせたことにも、気が付かずに、そのまま痕跡の残るあたりへと彼を引っ張っていった。

「これは……!」

 癒月の差した指のさきに、明らかに人間ではないものの足跡がのこされていた。

「おそらく、薔薇垣の破壊者と同じ足跡だとおもいます」

 グレイは絶句して、口元を手で押さえていた。

「これは推測ですが、……ああ、いや、一応、侵入者としますが、その侵入者は、聖女の薔薇セント・ローズを破壊して街中に侵入。その後、この酒蔵を襲撃。そして、現在も……」

 その続きは、グレイが口にした。

「この街に潜伏している、と?」
「はい」

 癒月はうなづいた。

「……ありえない話ではない。だが一体……。いや、それより先にやるべきことがあるな」
「街じゅうに情報を公開しますか」
「それは早すぎる。街じゅうがパニックになるだろう。対処できない」
「……」

 こういうとき、うづく血がある。
 勇者として、パーティのみなとともに戦ってきた、過去に流れていた血。それが再び、沸騰し癒月の中を熱くかけめぐっていた。

 しかし。

 彼のとりえだったスキルを奪われ、愛剣モント・トレーネを奪われて、いまの彼は裸同然の状態だ。
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