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✿03:淫紋の次は淫呪かよ、知りたくなんかない!!
***19.魔物の通り道(1)
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✿
「確か、こっちだったよな?」
先に飛び出していってしまったグレイの姿はどこにもない。癒月はひとり、悲鳴が上がった方向へと足を進めていた。
「あっ!!」
そのとき、目の前から、ものすごい勢いでこちらへと走ってくる異形の者を見た。
「あっ、しまった!!」
いつもの癖で懐の愛剣を握ったつもりだったのだが、そこには何もない。
愛剣モントトレーネは王宮で手にしたのが最後、その後は行方しれずだ。
明らかに走ってくるのは人間じゃない。人型をしているが、その皮膚は分厚く気味の悪い青緑色をしている。
「下級が!!」
などと思いつつも、スキルを失って――いや、いやらしいスキル以外のスキルを持っていない癒月にどうすることもできない。
(ちくしょー! 俺は勇者だったってのに!)
今は無能だ。
その異形は、癒月にすら目もくれずに、癒月を通り過ぎるとそのまま走り去ってしまう。
「ユージィン!!」
異形が走ってきた方向から、グレイがこちらへ走ってきた。
「大丈夫かい!? ユージィン!? 怪我は?」
「ないですよ」
(というか、オーバーすぎやしないか、この男!!)
グレイは、癒月を見つけ次第、近づき、その肩をぎゅっと掴んで、癒月をじっと見つめてくる。
情熱的な視線に、癒月のほうが居ずらい。そっと、癒月はグレイから視線を逸らせた。
「グレイさん! 俺ら、あいつを追いかけます!!」 グレイの後ろから走ってきた男たちが、異形の追跡を開始した。
「ああ、頼んだ!! だが、くれぐれも注意してくれ!!」
「はいっ!!」
そんなやりとりを聞いて、スキル「追跡」を使えば一発なのになあ、などと思ってしまう癒月であったが、そのスキルはいま癒月の手元から離れている。
「本当に、怪我はないんだね」
「……はい」
だが。
(それが、すごく、くやしいし、はがゆいし……)
「ユージィン?」
グレイがうつむいてしまった癒月をじっと見つめる。癒月は慌てて明るい声をだした。
「あ、それより、グレイさん!」
「ん?」
「さっきのアレはなんなんですか?」
「あれは……」
そのとき、会話にグレイの仲間らしき男が割り込んできた。
「グレイさん! 見つけました!」
息を切らしてやってきた彼にグレイの顔色が変わる。
「そうか! よくやった!」
「すぐ案内します。こっちです!」
「ごめんね、ユージィンちゃん、ちょっと俺、これから用事があるから」
「待って! 俺も連れて行ってください」
「え?」
「アレと関係があるんでしょう?」
(……この街中にあんなモンスターが出入りできるとは思えない。きっと何かあるはずだ)
「でも、危険だ」
「平気です」
危険なら、何度も味わってきたから。
「確か、こっちだったよな?」
先に飛び出していってしまったグレイの姿はどこにもない。癒月はひとり、悲鳴が上がった方向へと足を進めていた。
「あっ!!」
そのとき、目の前から、ものすごい勢いでこちらへと走ってくる異形の者を見た。
「あっ、しまった!!」
いつもの癖で懐の愛剣を握ったつもりだったのだが、そこには何もない。
愛剣モントトレーネは王宮で手にしたのが最後、その後は行方しれずだ。
明らかに走ってくるのは人間じゃない。人型をしているが、その皮膚は分厚く気味の悪い青緑色をしている。
「下級が!!」
などと思いつつも、スキルを失って――いや、いやらしいスキル以外のスキルを持っていない癒月にどうすることもできない。
(ちくしょー! 俺は勇者だったってのに!)
今は無能だ。
その異形は、癒月にすら目もくれずに、癒月を通り過ぎるとそのまま走り去ってしまう。
「ユージィン!!」
異形が走ってきた方向から、グレイがこちらへ走ってきた。
「大丈夫かい!? ユージィン!? 怪我は?」
「ないですよ」
(というか、オーバーすぎやしないか、この男!!)
グレイは、癒月を見つけ次第、近づき、その肩をぎゅっと掴んで、癒月をじっと見つめてくる。
情熱的な視線に、癒月のほうが居ずらい。そっと、癒月はグレイから視線を逸らせた。
「グレイさん! 俺ら、あいつを追いかけます!!」 グレイの後ろから走ってきた男たちが、異形の追跡を開始した。
「ああ、頼んだ!! だが、くれぐれも注意してくれ!!」
「はいっ!!」
そんなやりとりを聞いて、スキル「追跡」を使えば一発なのになあ、などと思ってしまう癒月であったが、そのスキルはいま癒月の手元から離れている。
「本当に、怪我はないんだね」
「……はい」
だが。
(それが、すごく、くやしいし、はがゆいし……)
「ユージィン?」
グレイがうつむいてしまった癒月をじっと見つめる。癒月は慌てて明るい声をだした。
「あ、それより、グレイさん!」
「ん?」
「さっきのアレはなんなんですか?」
「あれは……」
そのとき、会話にグレイの仲間らしき男が割り込んできた。
「グレイさん! 見つけました!」
息を切らしてやってきた彼にグレイの顔色が変わる。
「そうか! よくやった!」
「すぐ案内します。こっちです!」
「ごめんね、ユージィンちゃん、ちょっと俺、これから用事があるから」
「待って! 俺も連れて行ってください」
「え?」
「アレと関係があるんでしょう?」
(……この街中にあんなモンスターが出入りできるとは思えない。きっと何かあるはずだ)
「でも、危険だ」
「平気です」
危険なら、何度も味わってきたから。
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