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✿01:あっこれって追放ですね知っています

*07.崩壊(2)

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「ミルフェ殿」
「あ、リュセさんっ!!」
「お加減はいかがですか?」

 すらりとした長身の美男子がミルフェの前に現れる。

「はい……」

 そう答えたミルフェの前に膝をつくとリュセはふふっと優雅な微笑を浮かべた。

「嘘をついてはなりませんよ」
「えっ」
「このリュセにはお見通しです」
「え……でも」
「なくなったはずの足が痛む、なんておかしい。そう思ってずっとご自分を抑え込んでおられるでしょう」
「そ、そんな……」
「いつも自分が幼くふるまっているからみんなあなたを未熟に思っているに違いない。だから必死に痛いのも苦しい姿も見せないように背伸びをしてきた。ミルフェさまは周囲には守られている人間と思われているかもしれないけれど、俺はあなたが実は周囲を守ってきた人間だと知っています。俺の前だけでは無理に力を入れていないでください」
「……リュセさん……」
「リュセでいいですよ」
「そんな、リュセさまっ」
「ふふっ。どんどん形容が上になっていますが」
「じゃ、と、友だちみたいに、リュセって呼んでみても、いいですか?」
「もちろんです。嬉しい。ああ、それから、これとこれを」
「え?」
「友だちからの些細な贈り物です。おそらくミルフェ殿の病は脳の病。それを根本的に直すのはまだ我々の技術ではできないでしょう。けれど、少しでも苦しみを和らげられるよう俺がお薬を調合してまいりました」
「わ、この小瓶きれい」
「そっちですか」
「え、あ、ご、ごめんなさいですぅ!! あの、お薬、ありがとうございます」
「いいんですよ。むしろ、あなたの感性に感服いたします」
「そ、そんな……。それは?」
「この包みですか……。じゃん!」
「わ! もしかして足!!」
「そうです。職人に作らせました。これがミルフェ殿の足となって、再びあなたさまが歩ける日が来るように、と」
「リュセっ!! ミルもミルフェでいいから!!」
「それではミルフェ。早く良くなって、元気な姿を見せてくださいね。でも、無理はしないように」
「はいっ!」




 映像はそこで切れた。

「こ、こんな幸せそうに笑うミルの姿、初めて見た……」

 牢のなかで癒月はぼんやりと口を開けてしまう。
 次の映像が始まった。

「タグ……だ」

 廊下を小走りに進む元盗賊の姿があった。彼は目的の部屋の前で立ち止まるとノックをする。

「どうぞ」

 部屋の中から声。タグはためらいなくドアを開けた。

「あんたに話がある」
「なんでしょう」

 部屋の主は書物を机の上に広げていたが、来客へと向き直り、一礼した。

「リュセ、といったな。お前、何を企んでいる」
「え? 企む?」
「しらばっくれるな。仲間を――アンナやミルを篭絡しているのは知っている」
「篭絡だなんて、そんな」
「俺はこの通り、毒にやられて今までのように暴れることはできない。だからといって、お前風情を相手にすることなんて造作もないんだぞ」
「そんな、俺をいきなり悪者扱いですか。そんなにも彼を失ったことが悔しいのですね」
「違う! ユーザは無実だ!!」

 タグが大声を上げた。
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