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火を見るよりも明らか
しおりを挟む「先輩、どうして俺じゃだめなんですか?」
問い詰める瞳の送る熱い視線がずっと俺から離れない。
「そんなの決まってるだろ。俺が嫌だからだ」
俺が、というところを強く主張した。彼がどう思っているのかは知らないが、俺は彼とどうこうするような関係にはなりたくない。
ただの友達でいいじゃないか。
どうして、こんなにもやけになって俺に食って掛かるのかわからない。
「好き」と言われて、「はい、そうですか」という俺をどうして受け入れてもらえないのか。
彼に好意を抱いてはいるが、だからと言って、手を繋いでキスをするような関係にまでなってしまったら、どうなる?
今はこんなにも必死に俺に付きまとっているお前が、あっさりお前の腕に俺が転がり込んできたとして、すぐに飽きたら、どうする?
「ねえ、先輩、いい加減素直になってくださいよ」
「ばか、俺はいつも素直な男だ」
「そう、なのかも、しれないですけど」
「なら、お前も俺の言うこと、素直に聞けって」
「それは無理です」
「は?」
「だって、先輩が、妙に俺のこと、意識していること、俺知っていますから」
「は?」
「火を見るよりも明らかですよ。先輩のお口は冷たいこと言っちゃってるけど、俺のこと、こっそり見てるときの熱視線は、そういう意味じゃないんでしょ?」
な、なにを言っていやがるんだ。
こいつは。
それってまるで、俺が自分のことを好きだと言っているようなものじゃないか。
「恥ずかしいやつめ!」
そう吐き捨ててやったら、こいつは笑った。
「先輩の前じゃそうなります」
……こいつめ。
(了)
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(『ride』は2021年3月28日に追加します)


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