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しおりを挟む松宮の発言に門倉の脳内はショート寸前にまで追い詰められた。現状把握が出来ない。目の前の状態が理解できない。さっきまで普通に――いや、松宮の下ネタ発言と戦いながら食事をしていただけなのに。
「おい、松宮?」
「門倉さん、俺、どうしよ」
松宮の震える声。門倉に緊張が走る。
「どうした。体調がよくないのか」
昨日、無体を強いたのは自分だという自覚が門倉にはある。
松宮に誘われても抱くつもりなど毛頭なかったはずが、トイレの扉の傍で自慰にふけっていたという事実が頭を混乱させ――いや、そんなものは言い訳だ。松宮の体を嬲り、あの細い体を足で踏みつけ、震える体に無茶な要求をしたのは紛れもなく自分である。いや、だが一回出したあとは少し冷静だったかもしれない。
けれど、快楽に滲んだ瞳でこちらを見つめられて、暴走した。松宮の体力も考えずに。圧倒的に自分が悪い。
それに彼は床や足裏を舐めている。不衛生だ。何故自分は止めなかったのだろう。妙なウイルスや病原体に感染させてしまったのかもしれにない。それとも腹を壊したか? 内側に放った自身のそれは松宮がアウトしてから風呂場で流しだしたが、うまく掻きだせていなかったかもしれない。なんにしろ、松宮の体調不良の圧倒的原因は自分自身だ。門倉は泣きそうになった。
「すまん、俺、本当にこういうやつで。責任取るから。病院、行くか。立てるか」
松宮の背中をさすりながら、門倉はそっと彼に聞いた。だが、松宮は唇の端を緩く持ち上げた。
「責任取るって言いましたよね」
「ああ、こんな目に合わせてしまったのは俺のせいだ」
「ふふ、そうですね。責任とってほしい」
「松宮?」
門倉は松宮の様子に気が付いた。何かがおかしい。
「あの、それじゃあ、今度、トイレ行くとき、俺の中に入れてください」
「は」
「あ、いや、あの、さっきいろいろと話していて、俺、門倉さんが用足しているってだけで気持ちいいんですよね」
「お、お前」
「だからその、門倉さんにつっこまれた後、ザーメンだけじゃなくて、アレを注がれたらどうなっちゃうかなって想像してたら、もう、それだけで」
門倉は松宮の下半身のそれに気が付いた。
「うわ、まさか、お前、うっ、嘘だろ」
「ごめんなさい、汚しちゃった。えへっ」
「うわ、信じられねぇ、うわぁ」
「でも、足りないので、ここで抜いていい?」
松宮がねだるように門倉に腕を伸ばしてきた。たまらず門倉はそれを振り払う。
「あほかーッ! もういい加減にしてくれェェェエエエ!!」
――楽しい番外編 トイレの音にご用心 (了)
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