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あの後、ふたりで熟睡して気が付いたら夕方の六時だった。飯でも食っていくかという話になったが、そもそもそうじをさぼって物の散乱する門倉家でまともな料理など出来ない。寝起きの門倉がコンビニまで駆けて行って、なるべく添加物の入ってなさそうな弁当を松宮の分に買って帰ってきた。
家のレンジで温めている間、起きた松宮が門倉のサイズのTシャツ一枚で部屋中をうろうろするので、気が気ではない門倉だったが、松宮は散乱している物を分別してくれていたのだと知って素直に礼を言った。松宮がふっと自然に笑ったので、門倉はつい視線を逸らしてしまう。
「コンビニで温めてこなかったんですね」
加熱終了を伝えるレンジの音が鳴り響く。門倉がテーブルに温めた弁当を並べると松宮がちょこんと席に着いた。
「まあな」
松宮が家にいるので、早く帰ってきたかったなどとは決して言わないのが門倉である。松宮も深くは聞かない。
「門倉さん、自分が思っているより乱暴なひとじゃないっすよ」
口に咥えた割り箸をぱちんとふたつに割った松宮がそう言った。門倉は割った箸でそのまま食べ始めたが、松宮は二本の木の先をこすり合わせて、繊維を落としてから弁当に箸先を落とした。
「なんの話だ」
「いろいろな話」
「いろいろって……」
「いろいろはいろいろです」
「ああ、はいはい、いろいろはいろいろでいろいろだもんな」
ふふっと顔を見合わせて互いに笑った。だが、門倉は、はっと我に返ると頬を赤く染めて視線を逸らす。その様子に松宮はそっと瞼を伏せて息を吐いた。
「門倉さん、エロい」
「ばっ! お前、今、食事中!」
「いいじゃないですか。エロいもんはエロい」
「エロエロ言うな、黙って食え、エロガキ」
「ガキじゃないです。年上ですぅ」
そうだった。門倉は松宮の年齢を思い出して固まった。どうもこの松宮侑汰という男。心配でならない。突然突発的な行動や謎の言動を繰り返すところに、年齢相応さが感じられない。つい、彼を年下のように扱ってしまう門倉は悶絶した。
「まあ、若く見られるのはしょっちゅうなのでいいっすよ。威厳とかないんでしょうね、俺」
「いや、そんなことは」
「可愛い?」
「ああ」
ついうっかりそう答えてしまった後で門倉は慌てて訂正に入る。
「うわ、違う、ほら、威厳がなくて可愛い系みたいなアレだ」
「えへへ、門倉さん、俺って愛いねぇ」
「違うって、アレだって」
「アレってアレですか」
「わ、バカ、下品なジェスチャーするなよ!」
「アレがアレでアレしちゃうんですねぇ」
「わー、ばか、くそ」
「うるさいですよ、お上品に食べましょうね」
「お前が言うな!」
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