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✿でこぴん
4.
しおりを挟む翌日。
撮影の前に迎えにきたマネージャーの表情から何か深刻なことが起こったと察知して、新崎は身構えた。
「新崎くん、ちょっといい?」
「はい、伊東さん」
「実はね……新田まりなとランチしている写真がネットで出回っているんです」
「あ……!」
それは昨日のことだ。あの日、午前の撮影の後、マネージャーにひとことだけ告げて、彼女と外出していた。マネージャーだって新崎ひとりにとりかかれるほど大きな事務所でもないし、その日は、別のタレントのつきそいの予定が入っていて午後からは新崎と別行動だった。
「軽率でしたね」
マネージャーのことばがずしんと重くのしかかる。
「新崎さんは、アイドル的な魅力だってあるんですよ。演技を見て支持してくれいるかたも大勢いるかと思いますが……」
「わかっています」
自分が演技だけ、技術だけで、選ばれたわけではないことを知っている。顔だ。この顔だって俳優新崎迅人の武器のひとつとして売りになるものだった。
「ファンのかたからみたら……と思うと。申し訳ありません」
「わたしに謝ってもどうにもなりません。まだ燃え広がっているわけではないので、そう硬くならないで。一応、伝えなくてはならないことなので、伝えました」
「はい」
「ちゃんと受け止めて。それから、落ち込まないで。あなたがやるべきことは、『役者』ですから」
「はい……!」
「本日も撮影があります」
「はい! よろしくお願いします」
今はやれることしかできない。できることをやるまでだった。
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