初夢はサンタクロース

阿沙🌷

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❀明日へ

32.

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「メリークリスマス! アンド! ハッピーニューイヤー!!」
 ぱっと、薄暗い夜明け前の世界に、明るい色彩が飛び込んできた。赤、白。もじゃもじゃ。
「へ?」
 千尋は思わず絶句する。
 彼の目の前にいたのは、まっしろい大きな袋を背負った赤い服のおじいさん。それも、口元には綿あめのようなもふもふした口ひげをたたえている。
「メリークリスマス! アンド! ハッピーニューイヤー!」
 彼は、また同じ文句をくりかえした。
「いや、それはさっき言われたのでわかっています。あけましておめでとう……その、新崎くん……」
 千尋がおずおずと彼の名前を呼ぶと、目の前のサンタクロースは、苦笑いした。
「あれ? ばれてしまいましたか?」
「ばれるっていうか、声でもう、既にばっちり」
「あはは、すみません。おはようございます、不審者の新崎迅人です」
「ええ、まあ、不審者でしょうね。季節外れのサンタクロースだなんて」
「それはあなたにいわれたくないですよぉ、千尋さん」
 いや、その前に、なぜ、ここに新崎がいるのだ? 彼は数時間前に大阪にいたはずだ。それが何故?
 ああ、これが初夢か。いったい、どんな夢なんだ。正月にサンタが現れるだなんて。
「千尋さん、俺、お願いがあってきました」
「なんですか、もう、夢なら夢なんですから、なんでも言ってください。文句でも、憎まれ口でも」
「……はい、言います」
 ほら、夢だ。
 現実の新崎は、自分にむかって一度も、文句を言ったことがない。本当は不満に思っているくせに、全部飲み込んで、千尋さんの隣に堂々といられる男になります病を発症させて、ひたすら仕事にまい進していく。ただそれだけ。
 さあ、言いたければ言えばいい。どんなことでも、聞いてやる。
 千尋はなかなか言い出さないサンタクロースを睨みつけた。どうせ、夢だ。なんだってかまわない。
「えっと俺、千尋さんにまずいいたいことがありまして……」
「だから、それはなんですか。なんでも聞きますっていってますよね? 遠慮はいりませんからね?」
 サンタクロースが、突然、がばっと頭をさげた。
「俺のアパートの鍵です! 受け取ってください!」
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