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千尋の仕事はその読者の視点と、それを出版する側の視点。どうすれば、この作品がもっと読者に受け入れられるか、どうすれば、もっとこの作品が広く受け入れられるか、どうすれば数字がとれるか、どうすれば、みんなに、もっと大勢のひとに、このまんがで喜んでもらえるか、それを考えることにある。
だから、ただ面白いだけでは不十分なのだ。
売り出しかた、発表のされかたに最適なカタチであるかどうか。発表される時期、状態も考慮するし、それを売り込む世間やターゲット層の状態なども、あたまのなかにいれておかなくてはならない。
その視点が、この作家には欠け過ぎている。いや、欠けていていいのだ。売れるかどうかを気にしすぎてつぶれる作家よりこういう一点突破の才能を持った才能のほうが、ありがたい。
確かに彼は天才だ。おもしろすぎる、いい作品を生み出すことができる。
だけど、それだけで、食っていけるかどうかといえば、それは、微妙だ。
その点をカバーするのが、自分の仕事だ、と千尋は考えている。だから、口をすっぱくして、彼に要求をつきつけるのだ。その要求を乗り越えようと直していく間に、彼の作品はより強烈に光を放ち始める。彼のもつ一点突破のエネルギーが、千尋の指摘により鮮明に読者の心に響くかたちにブラッシュアップされていく。
ひとりじゃないと書けない作家ではない。誰かの指摘も受け入れて自分のなかで消化できる。だから、彼は大作家なのだ。
だからこそ担当できてぎりぎり良かったとも思えるのだが、問題は彼を担当できる作家が、自分以外にいないということだ。ある程度、力を持った作家は新米の編集者が担当することになっているのだが、この松葉を担当した新米は疲弊して仕事どころじゃなくなる。その圧倒的パワーと自己中心的な性格に振り回されてしまうらしい。ということで、結果として、何度も松葉の担当をして、担当を新米に譲り、そしてまた松葉の担当へ戻り、ということを千尋は繰り返している。
正直、誰か別の者が担当になっても大丈夫なように、この男を教育しなおしたい気分だ。
「で、どこなわけ? ちーちゃんが、ケチつけたい部分は?」
「ここだ」
千尋は、山場の前のシーンを指さして言った。
だから、ただ面白いだけでは不十分なのだ。
売り出しかた、発表のされかたに最適なカタチであるかどうか。発表される時期、状態も考慮するし、それを売り込む世間やターゲット層の状態なども、あたまのなかにいれておかなくてはならない。
その視点が、この作家には欠け過ぎている。いや、欠けていていいのだ。売れるかどうかを気にしすぎてつぶれる作家よりこういう一点突破の才能を持った才能のほうが、ありがたい。
確かに彼は天才だ。おもしろすぎる、いい作品を生み出すことができる。
だけど、それだけで、食っていけるかどうかといえば、それは、微妙だ。
その点をカバーするのが、自分の仕事だ、と千尋は考えている。だから、口をすっぱくして、彼に要求をつきつけるのだ。その要求を乗り越えようと直していく間に、彼の作品はより強烈に光を放ち始める。彼のもつ一点突破のエネルギーが、千尋の指摘により鮮明に読者の心に響くかたちにブラッシュアップされていく。
ひとりじゃないと書けない作家ではない。誰かの指摘も受け入れて自分のなかで消化できる。だから、彼は大作家なのだ。
だからこそ担当できてぎりぎり良かったとも思えるのだが、問題は彼を担当できる作家が、自分以外にいないということだ。ある程度、力を持った作家は新米の編集者が担当することになっているのだが、この松葉を担当した新米は疲弊して仕事どころじゃなくなる。その圧倒的パワーと自己中心的な性格に振り回されてしまうらしい。ということで、結果として、何度も松葉の担当をして、担当を新米に譲り、そしてまた松葉の担当へ戻り、ということを千尋は繰り返している。
正直、誰か別の者が担当になっても大丈夫なように、この男を教育しなおしたい気分だ。
「で、どこなわけ? ちーちゃんが、ケチつけたい部分は?」
「ここだ」
千尋は、山場の前のシーンを指さして言った。
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