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好きなんですが
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登校前、鏡に写った自分に向かって高原はつぶやいた。
「大丈夫。やれば案外、なんとかなる」
それは彼の小さな日課で、毎日、勇気を出すためのおまじないだった。
高原の選んだ方法は単純なもので、ただひたすら愛を叫ぶというもの。何事もコミュニケーションから。意思疎通から。好きなひとに思いを伝えるにはどうするべきか。この思いが本物だとどうすれば伝わるのか。
人類には言葉がある。だから、大丈夫だ。
片思い相手は彼はどっぺっているので年上だが同級生で、妙にシャープな印象の少年だった。線が細い。驚くほど白い。不自然なまでの美しさに最初は惹かれた。だが、彼が三か月まえまで入院していたことを知り、日焼けを知らない白い肌の正体を知ったとき、彼を丸焦げに焼いてみたいという気持ちになった。
だが、相手にとってはただの迷惑だ。高原がべたべたとひっつこうと近寄る度に、彼は嫌悪感を表面に出す。それに少し傷ついて次からは適切に距離を取ろうと思うも、彼をみるとどうしても止まらなくなる。
高原もただの馬鹿ではない。
自分が彼を好きになっていくたびに、彼の表情の歪み具合が次第にひどくなっていくのが分かっている。
このまま好感度を下げるわけにはいかない。どうにかして食い止めないといけない。それに、もうそろそろ限界なのだ。好きという感情は溜めておこうと思えば思うほど、放出を願う。堪らなくなって思わず叫んだ一回目の好きが高原のトリガーになった。
普段は嫌悪感マックスに染まるはずの彼の表情が驚きで一瞬固まった。それを高原は見逃さなかった。小さくガッツポーズをとった。だが、驚きから覚めた彼の唇はこう言葉を零した。
「信じられないな」
イエス・ノーの問題ではなかった。
自分の思いを受け止めてもらえない――本当かどうか疑われてしまっている。この状況はかなりまずい。
まじなのだと、本気なのだと、分かってもらうためだ。
高原は信じた、言葉の力を。つまり、毎日、彼に告白することにした。信じてもらうまで。
それから、彼にとって一日一日、全てが一世一代の大勝負の毎日に変ってしまった。
「大丈夫。やれば案外、なんとかなる」
それは彼の小さな日課で、毎日、勇気を出すためのおまじないだった。
高原の選んだ方法は単純なもので、ただひたすら愛を叫ぶというもの。何事もコミュニケーションから。意思疎通から。好きなひとに思いを伝えるにはどうするべきか。この思いが本物だとどうすれば伝わるのか。
人類には言葉がある。だから、大丈夫だ。
片思い相手は彼はどっぺっているので年上だが同級生で、妙にシャープな印象の少年だった。線が細い。驚くほど白い。不自然なまでの美しさに最初は惹かれた。だが、彼が三か月まえまで入院していたことを知り、日焼けを知らない白い肌の正体を知ったとき、彼を丸焦げに焼いてみたいという気持ちになった。
だが、相手にとってはただの迷惑だ。高原がべたべたとひっつこうと近寄る度に、彼は嫌悪感を表面に出す。それに少し傷ついて次からは適切に距離を取ろうと思うも、彼をみるとどうしても止まらなくなる。
高原もただの馬鹿ではない。
自分が彼を好きになっていくたびに、彼の表情の歪み具合が次第にひどくなっていくのが分かっている。
このまま好感度を下げるわけにはいかない。どうにかして食い止めないといけない。それに、もうそろそろ限界なのだ。好きという感情は溜めておこうと思えば思うほど、放出を願う。堪らなくなって思わず叫んだ一回目の好きが高原のトリガーになった。
普段は嫌悪感マックスに染まるはずの彼の表情が驚きで一瞬固まった。それを高原は見逃さなかった。小さくガッツポーズをとった。だが、驚きから覚めた彼の唇はこう言葉を零した。
「信じられないな」
イエス・ノーの問題ではなかった。
自分の思いを受け止めてもらえない――本当かどうか疑われてしまっている。この状況はかなりまずい。
まじなのだと、本気なのだと、分かってもらうためだ。
高原は信じた、言葉の力を。つまり、毎日、彼に告白することにした。信じてもらうまで。
それから、彼にとって一日一日、全てが一世一代の大勝負の毎日に変ってしまった。
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