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「ア、んんっ」
後ろからやけに鼻を抜けた高い男の声が聞こえてきた。
シートベルトの内側でぶるりと身体を震わせて、耐えるようにうつむく松宮。
「へ、え、ちょ、ちょっと何?」
動揺する門倉は、何があったのかまったくわけがわからない。
「んあ、や、だめ。トントンやぁ……っ」
「はぁ!?」
「ナカ、気持ちよくなっちゃう、からぁ、ア、ア、あぁ」
「……は、いや、俺何もしてねぇし」
まさか、こいつ、トントンという音に反応しているのか。さきほど気分を紛らわすために鳴らした音を思い出した。あわてて、指の動きを止める。
「んぅ、なんで、もっと俺の奥。トントンしてぇ」
急に消えた音をすがるように松宮が催促する。それにしても、なぜこんなに陥落が早い。いつもなら、シたい気になっても、門倉を誘惑するだけの余裕はあるはずだ。
門倉は、彼の仕事仲間から聞いた話を思い出した。
――「机とか床でもなんでもいいので、こういうリズムでトントンと叩く音をやつに聞かせる。いい、音と音の間隔はこのくらい、トントン、ね、簡単でしょう?」
「へ。いやあの、これ、なんですか?」
「松宮侑汰撃退法」
こ、これのことか!?
しかし、一体なぜ彼はこんなに感じているのだ。
「なぁ、なんでこれ、そんなにいいんだよ」
松宮の情けない痴態にあきれながらも門倉は、再びあのリズムを再開させて、松宮に問う。
「うぅ、ア、ア、いいです」
「だから、なんで?」
「ナカ、ピストンされるの、思い出しちゃって、ア、無理ぃ、そういうふうになってんのぉ」
ガクガクと座席を揺らす松宮に門倉は、率直な感想を述べた。
「変態だな」
その声を聞いたとたん、ひときわ激しく松宮の身体が跳ね上がる。
「ひぃっ」
と、小さく鳴く松宮の声に門倉は、ぽかんと口を開けた。
「え、イったの」
ここ、車内だぞ。
「おい、汚ねぇな。物が散乱している俺の家より汚ねぇからな。というかレベルが違う。ほら、ティッシュ」
門倉が前の席から手を伸ばして後ろの松宮に車内に置いておいた箱ティッシュを手渡す。
「門倉さん……」
「ほらいいから、さっさと始末しろ」
門倉はバックミラー越しに後ろの松宮をみた。真っ赤に顔を染めながらティッシュを受け取ると、ゆっくりとズボンのファスナーを下ろす。社会の窓から見えた松宮のパンツは確かに濡れているようだったが、このとき門倉は違和感に気が付いた。
射精をするとき、ペニスが立つはずだ。しかし、それなら狭い下着やズボンの中では勃起したそれがきつくて痛いはず。なのに松宮は痛みを訴えたり、ズボンを緩めたりはしなかった。
「……お前、射精してないだろ」
門倉が声を潜めて彼に聞く。背中越しの質問に松宮は、熱い吐息混じりに答えた。
「でてない……先走りだけ、です」
「でもイってたよな」
「うん……」
門倉は、自身の股間に熱が集中していくのを感じた。背筋がビリビリする。
「松宮、なにが先走りなんだ? お前の場合、メスだろ。カウパーなんて出さないだろ」
こいつ。ナカでいきやがった。ドライだ。
それも、直接刺激を受けたわけではない。トントンという、指の音を聞いて行為を想像して、勝手にメスイキした。脳で達したのだ。
その事実の衝撃が門倉の冷ややかだった脳細胞に火を付ける。だがそれ以上に火種だったのは松宮だ。後ろを振り返えれない彼が見ているミラーに向けて、シートベルトでうまく動けないながらも、腰を小さく振りながら、こう言い放った。
「門倉さん、俺のパンツ、愛液で濡らしちゃった……」
見てとでもいうかのように。
後ろからやけに鼻を抜けた高い男の声が聞こえてきた。
シートベルトの内側でぶるりと身体を震わせて、耐えるようにうつむく松宮。
「へ、え、ちょ、ちょっと何?」
動揺する門倉は、何があったのかまったくわけがわからない。
「んあ、や、だめ。トントンやぁ……っ」
「はぁ!?」
「ナカ、気持ちよくなっちゃう、からぁ、ア、ア、あぁ」
「……は、いや、俺何もしてねぇし」
まさか、こいつ、トントンという音に反応しているのか。さきほど気分を紛らわすために鳴らした音を思い出した。あわてて、指の動きを止める。
「んぅ、なんで、もっと俺の奥。トントンしてぇ」
急に消えた音をすがるように松宮が催促する。それにしても、なぜこんなに陥落が早い。いつもなら、シたい気になっても、門倉を誘惑するだけの余裕はあるはずだ。
門倉は、彼の仕事仲間から聞いた話を思い出した。
――「机とか床でもなんでもいいので、こういうリズムでトントンと叩く音をやつに聞かせる。いい、音と音の間隔はこのくらい、トントン、ね、簡単でしょう?」
「へ。いやあの、これ、なんですか?」
「松宮侑汰撃退法」
こ、これのことか!?
しかし、一体なぜ彼はこんなに感じているのだ。
「なぁ、なんでこれ、そんなにいいんだよ」
松宮の情けない痴態にあきれながらも門倉は、再びあのリズムを再開させて、松宮に問う。
「うぅ、ア、ア、いいです」
「だから、なんで?」
「ナカ、ピストンされるの、思い出しちゃって、ア、無理ぃ、そういうふうになってんのぉ」
ガクガクと座席を揺らす松宮に門倉は、率直な感想を述べた。
「変態だな」
その声を聞いたとたん、ひときわ激しく松宮の身体が跳ね上がる。
「ひぃっ」
と、小さく鳴く松宮の声に門倉は、ぽかんと口を開けた。
「え、イったの」
ここ、車内だぞ。
「おい、汚ねぇな。物が散乱している俺の家より汚ねぇからな。というかレベルが違う。ほら、ティッシュ」
門倉が前の席から手を伸ばして後ろの松宮に車内に置いておいた箱ティッシュを手渡す。
「門倉さん……」
「ほらいいから、さっさと始末しろ」
門倉はバックミラー越しに後ろの松宮をみた。真っ赤に顔を染めながらティッシュを受け取ると、ゆっくりとズボンのファスナーを下ろす。社会の窓から見えた松宮のパンツは確かに濡れているようだったが、このとき門倉は違和感に気が付いた。
射精をするとき、ペニスが立つはずだ。しかし、それなら狭い下着やズボンの中では勃起したそれがきつくて痛いはず。なのに松宮は痛みを訴えたり、ズボンを緩めたりはしなかった。
「……お前、射精してないだろ」
門倉が声を潜めて彼に聞く。背中越しの質問に松宮は、熱い吐息混じりに答えた。
「でてない……先走りだけ、です」
「でもイってたよな」
「うん……」
門倉は、自身の股間に熱が集中していくのを感じた。背筋がビリビリする。
「松宮、なにが先走りなんだ? お前の場合、メスだろ。カウパーなんて出さないだろ」
こいつ。ナカでいきやがった。ドライだ。
それも、直接刺激を受けたわけではない。トントンという、指の音を聞いて行為を想像して、勝手にメスイキした。脳で達したのだ。
その事実の衝撃が門倉の冷ややかだった脳細胞に火を付ける。だがそれ以上に火種だったのは松宮だ。後ろを振り返えれない彼が見ているミラーに向けて、シートベルトでうまく動けないながらも、腰を小さく振りながら、こう言い放った。
「門倉さん、俺のパンツ、愛液で濡らしちゃった……」
見てとでもいうかのように。
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