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・屋敷編

Wed-06

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 吐き出した水っぽい粘液の水分を吸って布地が湿り、そこだけ色が濃くなった。朋華に抱かれたまま、呼吸を整えて、青年は彼を見上げた。
「なんなんだよ、これ……」
 いまだに、肉体が甘い愉悦にひたっている。
 陰部に触れたわけでもない。敏感な箇所をいじられたわけでもない。
 それでも、男を絶頂に導いた。
 どころではない。
 この屋敷にきてから、一番、気持が良かった。
 まるで手品のような時間だった。
「このまま、『行為』を続行してもいいんですが、とりあえず、ネタだけでもばらしておきましょう」
 まだ恍惚としている青年に、朋華は微笑んだ。
「下辺の花と上級の花の何が違うと思いますか?」
 返すことばの前に、少し時間が必要だった。ゆっくりと抜けていった愉悦のあと、青年が顔をあげた。
「ただたんに、『経験』とか『性技』とか、そういうものではありません」
 彼はにっこりと、だが淡々と続ける。
「自分もなんとお伝えしたらいいのか、わからないのですが。――相手を『とらえる』ことができたら、こちらへとあがってこれるものです」
 ――とらえる?
 青年は頭のなかで彼のことばを反芻した。
「本当に、どういったらいいのでしょうねえ。ただ、お客さまが、もっとお金を出しても、もっと自分と寝たいと思わせたら、勝ちなのです」
「……身も蓋もない」
 笑おうとしたが、青年の表情はひきつった。
「私が営業すれば、あなただって、足を開きたくなる。もしくはこの朋華を抱きたくなる。そういうふうに、することだってできます」
 挑発的に彼が微笑んだ。青年の額に汗がにじむ。
「……しませんよ?」
 ふふっと、可憐に朋華が笑って、青年から距離をとった。
「ええと、ですが、こういうふうに、相手を自分の手のひらの上で転がせるようになると、屋敷ここではだいぶ有利です」
「それはそうだろうが」
「コツはですね。……間合いですかねえ」
「間合い?」
「ええ。ただこれも言葉で説明するのが、難しいことなので、どうか、さきほどのことを、思い出していただければ」
 さきほどの、と言われて、青年は頬を赤く染めた。
「それから、『白』になること、です」
 彼の反応を楽し気に見つめながら朋華が続ける。
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