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・屋敷編

Wed-05

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 青年に向かって朋華ともかは微笑んだ。その所作ひとつで、心臓を掴まれるかのような衝撃が、青年の身体に走った。
「大丈夫?」
 低く、だが柔らかい声を、じんわりと、青年の皮膚の細胞が吸収していく。否、彼の声が青年のなかへと入ってこようとしているのだ。
「もしかして、緊張している?」
 はっと我に返って、青年は顔をあげた。
 すぐに目の前に、あの美術品のような男がいた。いつの間にか距離を詰められていて、座る膝に男の手がそえられていた。華奢で、すらりと伸びた白い指の先に、ほのかに薔薇色の爪先が甘く香る。
「い、いや……」
 さきほどから、なぜか少し、蒸し暑く感じる。動悸が激しく鳴る。
 膝頭に伸ばされた手が、ゆっくりと、太ももへと動き出す。思わず小さく息を吐いてしまう青年は、なんだが妙な居心地のよさを感じた。
 うっとりと、彼の手遊を味わってしまったが、自身の変化に気が付いて、青年は慌てて、彼の肩を手で押しのけた。
「だ、だめだ……」
 くすり、と耳元で笑う花のささやきが聞こえた。
「どうして?」
「い、いや……」
 もう、そこは兆してしまい、大きく布地を膨らませていた。このまま、彼に流されてしまっては、怒張の緊張がほどけてきえてしまうのも、時間の問題だ。
「大丈夫」
 尚、頭の芯をぐずぐずに溶かしてしまいそうな朋華の声がする。かぐわしい声といったらいいのだろうか。こちらの理性を朝日に消える雪のように、じわじわと失わせる。
「いい子、大丈夫だよ」
 再び朋華が手を伸ばして来た。 
 なのに、嫌悪感がない。どころか、それが甘美なものに、想えて、青年は胸をゆらした。
 そっと肩をなでられる。ぞくぞくと背筋に甘いものが走った。
 朋華の手のひらが青年の首筋をなぞり、そのまま彼の頬を撫でた。野のすみれのような瞳に見つめられているのか、青年は小さく声を立てて、果てた。
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