250 / 285
・屋敷編
Wed-02
しおりを挟む
✿
青空が目に沁みた。
はたはたと風を受けて、白い布面がはためている。誰もいない洗濯場から見る青空と真っ白い雲は、別世界のように美しかった。だが、それが美しければ美しいほど、自分はどこかの影に隠れてしまいたい気持だ。すぐに立ち去ろうとした青年は声をかけられて振り返った。
「よう」
洗濯場に顔を出したのは、あの男だった。
「……滝田」
彼は挨拶に片手をあげて、青年に近づいてきた。屋敷の転覆すなわち藤滝美苑の失脚を狙うこの男は、使用人服を身に着け、どこにでもいるただの使用人のふりをしているが、青年を見る眼光は一種異様な光を帯びている。
「共闘」と彼は言った。
同じ、屋敷に反感を持つものとして、協力しあおうと。
そうはいっても、この滝田という男のことを青年は、いまだに何もしらないのだった。
「今日もさぼりか?」
滝田の発言に青年は眉を寄せた。
「なわけあるか」
「はは、そんな顔するなよ。美人が台無しだぜ」
誰が美人だ。
「協力するって言っただろ? 今日はそれで来たんだ」
滝田は口元を緩ませた。
確かに、売り上げを上げなくてはあの豚箱行きと言われた青年に、この男は協力すると言っていた。今、屋敷から青年が消えたら、ただでさえ近寄りずらい藤滝の近くに寄れるカードを失うことになる。
「で? いくら俺に払ってくれるんだ?」
青年はため息まじりに言った。どのくらい必要なのか、この男は本当にわかっているのだろうか?
「おっと、俺は金は支払えない」
「え? 使用人だろ? 一応は雇われてるんじゃないか?」
「年季があければ、支払ってもらえるだろうよ。ま、使用人なんてもんはなあ……。それより、これだ」
「は?」
「アポイントメントが取れた。といっても日中しか時間は取れない」
「え、何の話だ?」
「まあ、こっちに来い。来ればわかる」
ぐいっと滝田が手を伸ばして来た。それを振り払う。
アポイントメントーーということは、どうやらこの男は青年を誰かに会わせたいらしい。
「いい加減、信用しろよ」
苦笑いを浮かべた滝田に、青年はため息をついた。このままでは確かに自分はあの豚箱行きだろう。自分で歩ける、と言って、青年は滝田の後についていった。
青空が目に沁みた。
はたはたと風を受けて、白い布面がはためている。誰もいない洗濯場から見る青空と真っ白い雲は、別世界のように美しかった。だが、それが美しければ美しいほど、自分はどこかの影に隠れてしまいたい気持だ。すぐに立ち去ろうとした青年は声をかけられて振り返った。
「よう」
洗濯場に顔を出したのは、あの男だった。
「……滝田」
彼は挨拶に片手をあげて、青年に近づいてきた。屋敷の転覆すなわち藤滝美苑の失脚を狙うこの男は、使用人服を身に着け、どこにでもいるただの使用人のふりをしているが、青年を見る眼光は一種異様な光を帯びている。
「共闘」と彼は言った。
同じ、屋敷に反感を持つものとして、協力しあおうと。
そうはいっても、この滝田という男のことを青年は、いまだに何もしらないのだった。
「今日もさぼりか?」
滝田の発言に青年は眉を寄せた。
「なわけあるか」
「はは、そんな顔するなよ。美人が台無しだぜ」
誰が美人だ。
「協力するって言っただろ? 今日はそれで来たんだ」
滝田は口元を緩ませた。
確かに、売り上げを上げなくてはあの豚箱行きと言われた青年に、この男は協力すると言っていた。今、屋敷から青年が消えたら、ただでさえ近寄りずらい藤滝の近くに寄れるカードを失うことになる。
「で? いくら俺に払ってくれるんだ?」
青年はため息まじりに言った。どのくらい必要なのか、この男は本当にわかっているのだろうか?
「おっと、俺は金は支払えない」
「え? 使用人だろ? 一応は雇われてるんじゃないか?」
「年季があければ、支払ってもらえるだろうよ。ま、使用人なんてもんはなあ……。それより、これだ」
「は?」
「アポイントメントが取れた。といっても日中しか時間は取れない」
「え、何の話だ?」
「まあ、こっちに来い。来ればわかる」
ぐいっと滝田が手を伸ばして来た。それを振り払う。
アポイントメントーーということは、どうやらこの男は青年を誰かに会わせたいらしい。
「いい加減、信用しろよ」
苦笑いを浮かべた滝田に、青年はため息をついた。このままでは確かに自分はあの豚箱行きだろう。自分で歩ける、と言って、青年は滝田の後についていった。
20
お気に入りに追加
679
あなたにおすすめの小説




【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる