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・屋敷編

Tue-03

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 いったい何が目的なんだ――?
 不安と疑問の渦のなかにいる、青年をひとりおいていくかのように、主人の命令どおりに車が発進した。
「……どこに連れていく気だ?」
 革張りの座席に沈んだ青年が問う。高級車であることは間違いない。この席は座りやすく、心地がいい。けれど、隣にいる男のせいで、気分は最悪だった。
「さあな」
 男は、窓の外を眺めながら答えた。
「それよりも、おい、俺をこんな状態にして、ここに置いておいていいのかよ?」
 青年は、そんな男の態度にいらつきながら、徴発するように言った。
「お前さんお得意の拘束はどうした? 手足も縛らずに、こんなふうに自由にほおっぽおて、俺がお前を襲わないとでも思ったか?」
 尚も、窓から視線を逸らさない藤滝に、青年は、むかつく。
「おい、聞いてんのかよ! それにな、目隠しなしで、こんないかにも、脱走してくださいとばかりに、車走らせていいのか? 俺は、逃げるぜ?」
「……好きにしろ」
 食いついた、と思った。だが、その返答に、青年が目を丸くした瞬間、藤滝がふりかえった。
「だが、本当に、お前にできるのか?」
 その余裕じみた笑みが、非常に腹立たしい。そのまま、一発その顔面にお見舞いしてやろうと、発した拳を、男は軽々とうけとめた。
「あいかわらず、暴力的だな」
「お前にいわれたくない! 離せ!」
 男は、にやりと、唇の端をゆがませると、そのまま、青年の手のひらに、指先に舌を這わせた。
「っ!」
 指先がひろう男の熱い舌の感触に、青年は身を縮こませようとした。彼をふりはらおうとしたが、彼はがっしりと青年をとらえて離さなかった。
「昨夜は――」
 男が話しはじめた。
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