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・地下室調教編(Day7~)

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 おかしい。
 あきらに、最近のご主人さまは、おかしい。
 廊下を歩きながら、使用人は考え込んでいた。
 ご主人さまに命じられたことは、絶対だ。だから、こうして、雑用であっても、日々懸命に働いている。
 そして、使用人としての自分のすべてはご主人さまに握られており、自分のすべてが彼のものだった。
 そして、ご主人さまに「特別・・」というものは、皆無ない
 どんなものであっても、どんな者であっても、屋敷にきたからには、全員が、彼に絶対服従。それがルールだったはずだ。
 それに、彼自身、すべてがみんな彼の手に入るのだ。全部、等しく、ものはものだ。
 だから、ただ一人だけに対して、特別な措置を取られたり、特別に眼をかけたりなど、一切このひとはしてこなかった。だから、安心して彼のものでいられたし、彼のコマであったはずだ。
 それなのに――。
 脱走ばかりしていると噂のひとりの青年に手を焼いておられるとは聞いていた。だが実際にあの光景を目の前にして、その手を焼いておられるということが、別の意味を含んでいるかのように思えてならない。
「おい、どうした? 落としたぞ」
 手にしていたはずの資料を廊下に落としてきていたらしい。
 後ろから、同じく使用人の滝田が現れて、持っていたはずの紙の束をこちらに渡してきた。
「ああ、すまない。少し考えごとをしていて」
「何かあったのか」
「いや、たいしたことじゃない。……ああ、そういえば、お前も、二日目に、アレ・・に会ったんだったな」
「アレ?」
 滝田はわからないというふうに小首をかしげた。
「アレだよ。地下室にいま入れている」
「ああ、あいつか。どうした? 咬まれたか?」
 滝田が下半身のそれを意味するジェスチャーをした。口に入れている間に、歯を立てられたのか、と言いたいらしい。
「ばかな。そんなわけじゃない。ただ……ご主人さまの様子が」
「ああ、なるほど。お前以外の使用人連中も、そんなこと、いってたな。ばかだな。あるわけないだろ」
「だが……」
「だって、相手はただの犬だ。それも、大股開かされてやらされる犬だぞ」
「だが、やっぱりおかしいんだ。いつものご主人さまじゃない……」
「そううろたえるな。ご主人さまだって、右も左もそういう男ばかりだから、たまには毛色の違った犬をかわいがりたいときだってあるだろうに。な?」
「だが……」
「おっと、悪いな。俺はこれから、給油室だ。じゃな」
 滝田は忙しそうにぱたぱたと走って行った。
 彼はああいっているが、使用人は気分が重かった。というのも、あのときの一部始終をすべて見ているからだ。
 まさかと思った。
 まさか、主人から、ただのに、口付けることなど――。
 
 
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