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・地下室調教編(Day7~)
三日目 3-1
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ーー時、再び、もとに戻る。
「な、なぜ……」
逃げたとばかり思っていた存在が、ふたたび戻って来た。それも、自分の足で――。
驚いて、彼ら使用人たちは、互いの顔を見合わせた。
「おいおい、なに、してんのさ」
青年が、そんなふたりをふりかえって、にやりと笑った。
「どうせ、お前たちも上から命令されて動いているんだろ?」
彼は、ふたたび歩き出しながら、続けた。
「お互いに、大変だよな」
そのひとことに、使用人が、反論しようとしたが、そのまえに、青年がことばを続けた。
「『イエス』と答えていれば『安全』かもしれない。だけど、そう答えるたびに、確実に自分のなかの何かがすり減っていくんだぜ……」
部屋の前にまで戻って来た。青年は、自らその入り口をくぐった。
「さ、戻って来たな」
青年は余裕のある表情で静かに、笑みをうかべた。どこかで、彼ら使用人を挑発しようとしているかのようで――同時に、それは、彼の宣戦布告であった。
「何故――」
使用人のひとりが、ぽつりとつぶやいた。いままであれだけの反抗を繰り広げていたはずの存在が、何故、自ら――? そう問いたいのだろう。
青年は、答えた。
「俺はやるべきことを、やってやる」
彼は、後ろ手にナイフを握ったまま、そこに立っていた。
逃げ路は、ない。
まずは、ここがどこかさぐらなければ、無事に逃げ切ることができるかさえ怪しい。
ならば、探るまでだ。
青年は、ひそかに決意した。
協力。
――というまでには、少し弱いかもしれない。
青年はまだ滝田を疑っている。完全に信用しきることはできない。だが。
あたえられたものは、存分につかっていかなければ、ならない。
すべては、自分が自分でいるために。
屋敷にいる間、何度も、戦う意思を持ち直してきた。
だから、改めて、また、戦うことを誓う――。
「な、なぜ……」
逃げたとばかり思っていた存在が、ふたたび戻って来た。それも、自分の足で――。
驚いて、彼ら使用人たちは、互いの顔を見合わせた。
「おいおい、なに、してんのさ」
青年が、そんなふたりをふりかえって、にやりと笑った。
「どうせ、お前たちも上から命令されて動いているんだろ?」
彼は、ふたたび歩き出しながら、続けた。
「お互いに、大変だよな」
そのひとことに、使用人が、反論しようとしたが、そのまえに、青年がことばを続けた。
「『イエス』と答えていれば『安全』かもしれない。だけど、そう答えるたびに、確実に自分のなかの何かがすり減っていくんだぜ……」
部屋の前にまで戻って来た。青年は、自らその入り口をくぐった。
「さ、戻って来たな」
青年は余裕のある表情で静かに、笑みをうかべた。どこかで、彼ら使用人を挑発しようとしているかのようで――同時に、それは、彼の宣戦布告であった。
「何故――」
使用人のひとりが、ぽつりとつぶやいた。いままであれだけの反抗を繰り広げていたはずの存在が、何故、自ら――? そう問いたいのだろう。
青年は、答えた。
「俺はやるべきことを、やってやる」
彼は、後ろ手にナイフを握ったまま、そこに立っていた。
逃げ路は、ない。
まずは、ここがどこかさぐらなければ、無事に逃げ切ることができるかさえ怪しい。
ならば、探るまでだ。
青年は、ひそかに決意した。
協力。
――というまでには、少し弱いかもしれない。
青年はまだ滝田を疑っている。完全に信用しきることはできない。だが。
あたえられたものは、存分につかっていかなければ、ならない。
すべては、自分が自分でいるために。
屋敷にいる間、何度も、戦う意思を持ち直してきた。
だから、改めて、また、戦うことを誓う――。
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