上 下
169 / 285
・地下室調教編(Day7~)

三日目 1-5

しおりを挟む
「だから、俺として、お願いだ」
 ばっと、滝田が、青年の目の前にひれ伏した。
「頼む。協力して欲しい。きみが逃げるというのなら、それをとめることはできないが、頼む! まだここにとどまって、俺のちからになってくれないか」
「や、やめてくれ……」
 必死に額に地面をこすりつけはじめる滝田に、青年は慌ててそれを制止させようとした。
「俺も、わかった。まだ、この屋敷の周辺のことに全然、気が付いていなかった。だから、ただ単身で逃げ出しても、どうにもならないかもしれないってこと……だから……」
「協力してくれるのか!?」
「う、だから、まだ信用が……、でも、ギブアンドテイクだ。あの部屋が監視されていると、教えてくれたから」
「ああ、ありがとう」
 滝田が、全力で、青年の手をとった。
「よしてくれ。そんなにおおげさな。……ところで、やけに静かじゃないか」
「へ?」
「あの部屋、みられているから、俺が姿を消したというのが館側もわかっているはずだ。それなのに、やけに静かだ」
「ああ。それなら……」
 にやりと笑って滝田が言った。
「いま、仕掛けが作用しているところだ」





 地下室からつづく廊下でふたりの使用人が話し合っていた。
「くそ、どうする!? ご主人さまに、なんと報告したらいい!?」
「ばか、言うなよ。言ったら、俺たちの一巻のおわりだ」
「だが、一体なぜ……薬をつかっていたと、聞いていたのに」
「ああ、あんなにも元気だとは、思っていなかった……」
 廊下はいくつもの地上への入口に通じている。そのうち、倉庫への扉をつかってやつは逃げた。
 それがあのおかたにバレたら、どんな目にあうだろうか……。
 さいわい、監視下に置かれているはずの地下室の異変にまだ館は気が付かないでいる。
 ふと、足音がした。
 彼らは息をのんだ。
「よお」
 彼は片手をあげて、こちらへと歩んできた。
「な……っ!!」
 使用人たちはくちを開けた。
 取り逃がしたとばかり思い込んでいた、青年が姿を表したからだ。階段をおりてふたたび、地下の世界へとおりてきた、青年に、彼らは何度もまばたきをした。信じられないとさえ思った。
「どうしたんだよ」
 青年は、笑いを噛み殺しながら言った。なるべく平然を装って。
「どうせ、あいつもそろそろ来るんだろ? 早く戻ってあいつの世話・・でもしてやらねえとな」
 ぽかんとしている使用人を一瞥したあと、青年は自ら部屋へと戻っていく。

 さあ、来い、藤滝美苑。
 勝負はここからだ。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

双葉病院小児病棟

moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。 病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。 この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。 すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。 メンタル面のケアも大事になってくる。 当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。 親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。 【集中して治療をして早く治す】 それがこの病院のモットーです。 ※この物語はフィクションです。 実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

捜査員達は木馬の上で過敏な反応を見せる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...