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・地下室調教編(Day7~)
三日目 1-4
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「悪いが」
青年は、こたえた。
「申し訳ないが、あんたが知っている以上のことを、俺は知らない、と思う」
「えっ!? 藤滝の私室へ入ったって話だったが」
「私室――たしかに、あの部屋は藤滝がメインに使っている場所だな」
「ああ、そこに潜入したって……」
「入ったすぐに、ひとがきたから、隠れるのに必死だった。なにか書類でもあればと思って侵入してみたのだが――」
「そうか……」
「ただ、考えたことがある」
「ん? なんだい」
「あの男のことだ。もしかしたら、大切なものは、もっと別の場所に隠していると――いう気がするんだ」
「なるほど。確かにね」
「滝田さん、この館を脱走するのに、一番の手だと使用人のあんたから見てどう考える」
「わはは。直球できたね。――解体することさ」
「解体?」
「館自体を、終わりにする。……っていうか、そのために俺はこうして動いているんだけど」
「……ここを、終わりに……」
「芹那には会った?」
「ああ、はい。連れて来られる時期が同じだったから」
「そっか。……」
「一緒に帰れるといいですね」
「それはきみもね」
滝田は苦笑した。
「で、協力の話がある」
「……なにをすればいいんですか? そもそも、こちらはまだ、完全にあなたのことを信じることはできない」
「そりゃそうだよね、こんな場所に閉じ込められていたら、人間不信にもなうるさ」
「……」
「で、実は、きみ、藤滝にとってはかなりの『イレギュラー』な存在だってこと、知ってる?」
「は?」
「今までの『できそこない』に対する藤滝の反応ときみの反応は雲泥の差だ。だから、使用人たちの間できみを不安視するやつらもいる。そのくらい、藤滝はきみを気に入っている」
「気に入っている人間をこんな目にあわす人間がいるとでも?」
「ああ、いや、そうだな……なにかきみに、藤滝美苑が執心しているとでも、いえる……かな」
「……そんなことは」
「とにかく、アレをおとしてほしい。あの血の通わない化け物でも、一度虜にしてしまえば、きみに何かを洩らすかもしれない。それにきみが彼についてくれるようになれば、彼の行動も、わかってくる」
「……と、言っても」
自分はあの男に執着されているような思いはまったくないのだと、青年は告げた。むしろ、いまは、早くここから逃げ出したい。
彼にかけてもらったブランケットの中で、体力がどんどん戻ってくる。いまだったら、逃げられる。使用人の服を着て、全力で走れば逃げられるはずだ。
「それはない」
滝田は断言した。
「ここが、どこにあるかわかるか?」
「え?」
「実は俺もわからない。使用人として連れて来られるときにも、目隠しをされて、迂回するようなルートでここにつれてこられている。外部の音が聞こえない。それに、庭がどこまでも続ている。まるで、森のようだ。おそらくどこかの山か何かに、ひっそりと立てた会員制の――そういうところがこの館だ」
「山か……」
「運悪くそうなんでもしたら、そこで命が尽きる。食料も助けが来ることもあてにできはしないからな」
「そうか」
愕然と突きつけられたものがあった。青年はただ屋敷の敷地を出さえすればなんとかなるとでも思っていた。
「だが、屋敷に来ている客はどうだ? 彼らの車が通るための道があるはずだ」
「道には門番が立っている。きっとふもとのほうにもそれは配置していあるはずだ。部外者が入ってこないためにね」
「そうか……」
これで、囲まれた。
青年は、こたえた。
「申し訳ないが、あんたが知っている以上のことを、俺は知らない、と思う」
「えっ!? 藤滝の私室へ入ったって話だったが」
「私室――たしかに、あの部屋は藤滝がメインに使っている場所だな」
「ああ、そこに潜入したって……」
「入ったすぐに、ひとがきたから、隠れるのに必死だった。なにか書類でもあればと思って侵入してみたのだが――」
「そうか……」
「ただ、考えたことがある」
「ん? なんだい」
「あの男のことだ。もしかしたら、大切なものは、もっと別の場所に隠していると――いう気がするんだ」
「なるほど。確かにね」
「滝田さん、この館を脱走するのに、一番の手だと使用人のあんたから見てどう考える」
「わはは。直球できたね。――解体することさ」
「解体?」
「館自体を、終わりにする。……っていうか、そのために俺はこうして動いているんだけど」
「……ここを、終わりに……」
「芹那には会った?」
「ああ、はい。連れて来られる時期が同じだったから」
「そっか。……」
「一緒に帰れるといいですね」
「それはきみもね」
滝田は苦笑した。
「で、協力の話がある」
「……なにをすればいいんですか? そもそも、こちらはまだ、完全にあなたのことを信じることはできない」
「そりゃそうだよね、こんな場所に閉じ込められていたら、人間不信にもなうるさ」
「……」
「で、実は、きみ、藤滝にとってはかなりの『イレギュラー』な存在だってこと、知ってる?」
「は?」
「今までの『できそこない』に対する藤滝の反応ときみの反応は雲泥の差だ。だから、使用人たちの間できみを不安視するやつらもいる。そのくらい、藤滝はきみを気に入っている」
「気に入っている人間をこんな目にあわす人間がいるとでも?」
「ああ、いや、そうだな……なにかきみに、藤滝美苑が執心しているとでも、いえる……かな」
「……そんなことは」
「とにかく、アレをおとしてほしい。あの血の通わない化け物でも、一度虜にしてしまえば、きみに何かを洩らすかもしれない。それにきみが彼についてくれるようになれば、彼の行動も、わかってくる」
「……と、言っても」
自分はあの男に執着されているような思いはまったくないのだと、青年は告げた。むしろ、いまは、早くここから逃げ出したい。
彼にかけてもらったブランケットの中で、体力がどんどん戻ってくる。いまだったら、逃げられる。使用人の服を着て、全力で走れば逃げられるはずだ。
「それはない」
滝田は断言した。
「ここが、どこにあるかわかるか?」
「え?」
「実は俺もわからない。使用人として連れて来られるときにも、目隠しをされて、迂回するようなルートでここにつれてこられている。外部の音が聞こえない。それに、庭がどこまでも続ている。まるで、森のようだ。おそらくどこかの山か何かに、ひっそりと立てた会員制の――そういうところがこの館だ」
「山か……」
「運悪くそうなんでもしたら、そこで命が尽きる。食料も助けが来ることもあてにできはしないからな」
「そうか」
愕然と突きつけられたものがあった。青年はただ屋敷の敷地を出さえすればなんとかなるとでも思っていた。
「だが、屋敷に来ている客はどうだ? 彼らの車が通るための道があるはずだ」
「道には門番が立っている。きっとふもとのほうにもそれは配置していあるはずだ。部外者が入ってこないためにね」
「そうか……」
これで、囲まれた。
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