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・地下室調教編(Day7~)

二日目 4-3

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「……ん……」
 青年はほおずりしていた男の前から、そっと距離を取った。藤滝の薄ら笑いは感じていたが、それ以上に己の身体に灯ってしまったものから逃れたいという気持ちが上回っていた。
「こら」
 藤滝の手が伸びて来た。やけにその手が優しく、頭をなでる。
「勝手に触っていいとでも思っているのか、駄犬」
 言い方は冷たいが、手の扱い方が、やけに、優しい。それで、ことりと、勘違いしそうになる。否、それをムチのほかに使う彼のアメであると、青年はわかっていたのだが――。
「……く、……」
 微かに唇が震えだす。
 こんなことを、言いたいわけではない。
 けれど、こうとでも言わなければ彼からの許しは与えられるはずもないことを、この屋敷に来てから、青年は思い知らされている。
「ください……」
「なにをだ?」
 意地わるく、なかなか許しを与えない藤滝に、青年はじれったくなって、泣きなくなる。
「そ、それ……」
「それでは判らない」
「……っ!」
 ことばにして、口にすれば、自分が何を望み、何を欲しているのか、それを明らかにされてしまう。それは、自分自身でもあいまいにしておきたいことがらであったとしても。
 だから、盛られたことを、内心、口実にして、青年は繰り返した。
 これは、薬のせいだ。
 これは、薬のせいだ。
 これは、薬のせいだから――と。
「前のを……」
「前? 誰のだ?」
 藤滝の声に、肩を落とす。この男はとことんまで、青年を屈服させなくては、気が済まないらしい。
 こうして時間が流れていくだけ、青年の手からこぼれおちていくものがある。むしろ、ただ黙っているだけなら、藤滝のほうに利があるといえる。
 ここは、ここだ。
 ならば、はやく片付けてしまったほうがいいに決まっている。
 青年のぼやけた頭が悦を求めて、甘い言い訳ばかりを模索しはじめる。
「ください……」
 だから、唇を開いた。
「ご、……主人さま、の……を……」
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